Sightsong

自縄自縛日記

渡辺勝+川下直広@なってるハウス

2015-09-19 23:50:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

合羽橋のなってるハウスに行き、渡辺勝と川下直広のデュオを観る(2015/9/19)。

渡辺勝 (vo, p, g)
川下直広 (ts)

渡辺さんを聴くのははじめてだ。「いちども逢わないことだってある/すれ違いすらしないことだってある」と、「君は僕の身体にしみ込みはしなかった」と、また「八月」と、太く朗々とした声で唄うとき、もはや抽象と化したそれらのフラグメンツが聴く者を揺らす。この、ただごとでない強度をもったノスタルジアは何だろう。

そして川下さんのテナーは、塩っ辛い音を絞り出すようなブルース。

Fuji X-E2、Leica Elmarit 90mmF2.8

●参照
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(川下直広)
『RAdIO』(川下直広)


『1975年8月15日 熱狂の日比谷野音』

2015-09-19 10:07:52 | 沖縄

『1975年8月15日 熱狂の日比谷野音』(Columbia)という2枚のディスクが再発されている。1枚目は「戦場の哀れ」、2枚目は「望郷」と題されている。いずれも、タイトル通り、1975年の「琉球フェスティバル」における実況録音であり、蝉の声も会場の熱狂も生々しく収録されている。

それにしても、信じがたいほどのメンバーである。司会が照屋林助。主な出演者は、嘉手苅林昌、知名定繁・知名定男の親子、登川誠仁、饒辺愛子、瀬良垣苗子、里国隆、糸数カメ。このレジェンドたちが入れ替わり立ちかわり、唄や三線や返しで組んでいる。

てるりんの司会は名調子であり、戦争や貧困の辛苦を語る。戦争協力の姿を淡々と唄うものあり、里国隆のように「負けて当たり前」(「黒だんど節」)と叩き付けるものあり、嘉手苅林昌のようにヤマトゥの風俗に染まらぬことを飄々と唄うものあり。

若き日の瀬良垣苗子の声は張りがあって素晴らしいな。知名定男のヴェルヴェット・ヴォイスもまた。

てるりんも興に乗って、「三毛猫」というヒトラーの替え歌を披露してみたりする。「PW節」は「Prisoner of War」(捕虜)の苦しみを唄ったものにも関わらず、明るい。中島貞夫『沖縄やくざ戦争』(1977年)においては千葉真一に唄わせていた(ヒットマンに殺される直前)。もしかすると、中島貞夫もこのときに聴いていたりして。

唄三線とともにある、沖縄の怒りと抵抗の歴史は長い。

●参照
小浜司『島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代』
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』
嘉手苅林昌「屋慶名クワデサー」、屋慶名闘牛場
知名定男芸能生活50周年のコンサート(2007年)
2005年、知名定男
高嶺剛『パラダイスビュー』(1985年)(照屋林助、嘉手苅林昌出演)
知名定男の本土デビュー前のレコード(1975-77年)
灰谷健次郎と浦山桐郎の『太陽の子』(知名定男出演)
里国隆のドキュメンタリー『白い大道』
1985年の里国隆の映像