Sightsong

自縄自縛日記

武満徹の映画音楽集 『夢の引用』

2015-09-13 23:21:30 | ポップス

武満徹が作曲した映画音楽を集めた、『夢の引用/Quotation of Dream - Love and Soul of Toru Takemitsu』(Intoxicate、2006年)という風変りなアルバムがある。

鈴木大介 (g)
Brandon Ross (g, African harp, vo)
Stomu Takeishi (b)

風変り、というのは、モチーフもさることながら、クラシックギターの鈴木大介とジャズギターのブランドン・ロス、ジャズベースのツトム・タケイシというコンビネーションについても言える。これが素晴らしく、また、「○と△の歌」などにおけるロスのヴォーカルもなめらかで良い。

武満徹については、映画音楽以外ろくに聴いていないのではあるが、けだるく、甘酸っぱく、諦めたような感覚の曲が少なくないような気がしている。それを名手3人にこんなふうにしっとりと弾かれると降参である(何に?)。

「狂った果実」といえば、ジョン・ゾーンが太田裕美やクリスチャン・マークレイを起用して取り上げた『Spillane』がどうかしている代物だったが(武満の曲ではない)、ここに収録された演奏も静かに狂っている。

●参照
武満徹『波の盆』
元ちとせ『平和元年』(武満徹と谷川俊太郎の「死んだ男の残したものは」を歌う)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(武満徹の「他人の顔」を演奏)
ワダダ・レオ・スミス『Spiritual Dimensions』(ブランドン・ロス)
ヘンリー・スレッギル(10) メイク・ア・ムーヴ(ブランドン・ロス、ツトム・タケイシ)
ヘンリー・スレッギル(7) ズォイドの新作と、X-75(ツトム・タケイシ)
ヘンリー・スレッギル(5) サーカス音楽の躁と鬱(ブランドン・ロス)
ヘンリー・スレッギル(1)(ブランドン・ロス)
マイラ・メルフォード Snowy Egret @The Stone(ツトム・タケイシ)
マイラ・メルフォード『Snowy Egret』(ツトム・タケイシ)


マーク・トウェイン『バーレスク風自叙伝』、『ジム・スマイリーの飛び蛙』

2015-09-13 22:02:15 | 北米

マーク・トウェインの短編集を2冊読む。『バーレスク風自叙伝』(旺文社文庫、原著1871-1898年)と、『ジム・スマイリーの飛び蛙』(新潮文庫、原著1862-1898年)。どれも法螺話や与太話の類だが、これが矢鱈と愉快で、とても百年以上前に書かれたものとは思えない。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンの語り部のイメージだけでとらえていては、この作家の魅力を十分に味わうことができないのだということが、よくわかった。

前者所収の「西部の無法者 ジャック・スレイド」は、凶悪でありながら人間関係の手管を駆使して権力者となった男を描いている。おとぎ話のようでありながら、突き放して笑い飛ばすユーモアがあって、西部劇はこれでなければなと思った次第。だから、クリント・イーストウッド『許されざる者』は根本的に駄作なのだ。

後者所収の「風邪を治すには」や「経済学」は思わず声を出して笑ってしまうほどの騙りの技。「失敗に終わった行軍の個人史」は、南北戦争においてひたすらにミジメな目にあった若者たちの物語。アメリカではベトナム戦争時にも再度読まれたという。今また、戦争のリアル(システムではなく、精神の)を味わうに最適な短編ではないか。

そして「How to Tell a Story」は、前者では「秘伝 上手な話し方のコツ」と、後者では「物語の語り方」という邦題で翻訳されている。大久保博、柴田元幸ともに名翻訳家ではあるが、個人的には、文章がやわらかい柴田訳。いずれにしても、実際に人前で話すコツは得られないのだが。

●参照
マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』


ヒルマー・イエンソン『MEG NEM SA』、アンドリュー・ディアンジェロ『Skadra Degis』

2015-09-13 07:54:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ディアンジェロが目当ての2枚。

■ ヒルマー・イエンソン『MEG NEM SA』(Skirl Records、2006年)

Hilmar Jensson (g)
Andrew D'Angelo (as, bcl)
Jim Black (ds, electronics)

■ アンドリュー・ディアンジェロ『Skadra Degis』(Skirl Records、2007年)

Andrew D'Angelo (as, bcl)
Trevor Dunn (b)
Jim Black (ds, electronics)

DVDサイズで外側にろくに情報が書かれていない(タイトルもメンバーも)、Skirl Recordsの「売ろうと思ったか極めて疑問」シリーズ。わたしもスマホを片手に中古を入手してから、しばらく放置していた。最近のクリス・スピードの盤などは普通のCDサイズになっているのだが、それにしても何を考えているのだろう。

なんにせよ、アンドリュー・ディアンジェロ。顔を真っ赤にしてキレそうになりながら息を吹き込み、ノリで疾走するアルトか。バスクラはまた違う感覚。聴けば聴くほど脳内に雨が降り、エンドルフィンが分泌される。『Skadra Degis』の最後は、十八番の「Gay Disco」で、皆でへなへなと踊り狂うようでわけがわからなくなる。いや~、どんどん好きになっていく。

ともかくも疾走するといえばジム・ブラックのガジェット的なドラムスもそうか。

●参照
アンドリュー・ディアンジェロ@Downtown Music Gallery(2015年)
アンドリュー・ディアンジェロ『Norman』(2014年)(ブラック参加)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)(ブラック参加)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)(ブラック参加)
Human Feel 『Galore』(2007年)(ディアンジェロ、ブラック参加)
アンドリュー・ディアンジェロ『Morthana with Pride』(2004年)
三田の「みの」、ジム・ブラック(『Habyor』2004年、『Splay』2002年)
エド・シュラー『The Force』(1994年)(ディアンジェロ、ブラック参加)