京橋のツァイト・フォト・サロンに足を運び、北井一夫さんの写真展『北京―1990年代―』を観る。移転後のツァイトを覗くのははじめてだ。
愛しの北京。土埃やその他いろいろなものが舞っている。光がそれらで乱反射する空気感もとらえた写真群である。おそらくはエルマー50mmF3.5などのレンズが、それをねらいとして使われているのだが、この柔らかさは本当に見事である。冬青社から出された写真集『1990年代北京』も置いてあり、いくつか比較してみると、写真集の印刷のほうがメリハリがある。オリジナルプリントの柔らかさをさらに実感した。
もちろん、レンズの描写だけではない。冬に野積みにされたり窓の外に置かれたりする白菜。たたずむ老人。金魚鉢、鳥籠。リヤカー(「石家荘」と書かれているので北京ではなく河北省石家庄において撮影されたのかと思ったが、写真集で確認すると、北京のムスリムが集まる牛街であった)。また北京を歩きたくなってくる。もう4年半もご無沙汰している。
日本カメラにおいてモノクロプリントの審査をされているからか、すでに展示されたプリントは完売。なお、1枚16万2千円とのことである。『80年代フナバシストーリー』のときは1枚5万円だったと記憶している。買っておけばよかったなあ。
いつも北井さんは土曜日に在廊されている。デジタル移行の話を訊いてみると、やはり本当だった。ソニーのαに古いライカレンズを付けているとのこと。しかもカラー。ファインダーをのぞいたり、液晶を視て撮ったりだというが、なかなかその姿は想像しにくい。まだ、どこかに公表する前の段階だという。どんな作品が生まれてくるのか楽しみだ。
「だってもう50年もやったから。あんたたちはまだフィルムを使わなきゃダメだよ!」
●北井一夫
『COLOR いつか見た風景』
『いつか見た風景』
『道』(2014年)
『Walking with Leica 3』(2012年)
『Walking with Leica 2』(2010年)
『Walking with Leica』(2009年)
『80年代フナバシストーリー』(1989年/2006年)
『フナバシストーリー』(1989年)
『英雄伝説アントニオ猪木』(1982年)
『新世界物語』(1981年)
『ドイツ表現派1920年代の旅』(1979年)
『境川の人々』(1978年)
『西班牙の夜』(1978年)
『ロザムンデ』(1978年)
『遍路宿』(1976年)
『1973 中国』(1973年)
『湯治場』(1970年代)
『村へ』(1970年代)
『過激派』(1965-68年)
『神戸港湾労働者』(1965年)
大津幸四郎・代島治彦『三里塚に生きる』(2014年)(北井一夫出演)