Sightsong

自縄自縛日記

メテ・ラスムセン+ポール・フラハーティ+クリス・コルサーノ『Star-Spangled Voltage』

2017-08-01 23:40:25 | アヴァンギャルド・ジャズ

メテ・ラスムセン+ポール・フラハーティ+クリス・コルサーノ『Star-Spangled Voltage』(Hot Cars Warp Records、2014年)を聴く。先日メテ、クリスのデュオで来日演奏したときに持ってきていたものを買った。アナログ盤のみである。

Mette Rasmussen (as)
Paul Flaherty (as, ss)
Chris Corsano (ds)

最初から最後までフルスロットルの演奏。しかもヴァイナルならではの音である。これは血が沸騰する。

メテさんのアルトは冗談抜きに強烈で、当分の間は忘れられそうにない。特に阿佐ヶ谷天での演奏において板ばねが入ったようにびしびしと瞬発力と強さをもって吹きまくり、身体を上下左右に振らせるばかりか、ついに部屋の端から端までアルトを吹きながらかつかつと往復したときの音。ここにはその音が見事に収められている。わたしが目撃できなかった日だが、メテさんと共演した竹下勇馬さんに訊くと、楽器が身体と一体化しているようだったと言った。

その一方で、スーパーデラックスでの演奏は坂田明さんとの共演であり、活力どうしのためか、メテさんの個性を十分には聴くことができなかったような印象がある。本盤もサックスのポール・フラハーティとの共演ゆえそれを危惧しながら聴いたのだが、個性がまるで異なるためか、同じことは起きていなかった。フラハーティは濁った音でサックスの周囲1メートルにエクトプラズムを作り続け、ふたりの音はまるで干渉しない。そしてメテさんは最後までアウラを発散している。

クリス・コルサーノも関節の可動域が高速回転仕様、しかも力強くてきわきわに削られ尖っていて、この人にしか出せないパルスを放っている。

●メテ・ラスムセン
Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天(2017年)
メテ・ラスムセン@妙善寺(2017年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy、スーパーデラックス(2017年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy(JazzTokyo)(2017年)
ドレ・ホチェヴァー『Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder』(JazzTokyo)(2016年)
シルヴァ+ラスムセン+ソルベルグ『Free Electric Band』(2014年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(JazzTokyo)
(2013年)
『Trio Riot』(2012年)

●クリス・コルサーノ
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy、スーパーデラックス(2017年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy(JazzTokyo)(2017年)
クリス・コルサーノ、石橋英子+ダーリン・グレイ@Lady Jane(2015年)
コルサーノ+クルボアジェ+ウーリー『Salt Talk』(2015年)
アイスピック『Amaranth』(2014年)
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』(2014年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(2013年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)
ネイト・ウーリー+ウーゴ・アントゥネス+ジョルジュ・ケイジョ+マリオ・コスタ+クリス・コルサーノ『Purple Patio』(2012年)
ロドリゴ・アマド『This Is Our Language』(2012年)


ハービー・ハンコックの2014年来日ライヴ

2017-08-01 21:36:41 | アヴァンギャルド・ジャズ

ハービー・ハンコックが2014年9月に来日演奏したときのライヴ音源をふたつ聴いている。

ひとつは2014/9/4、ブルーノート東京での演奏2枚組。2時間のステージである。ブルーノートにしては長いと思うが3万5千円のチャージであり、そのくらいは演ってくれないと元が取れまい。もうひとつは2014/9/7、東京国際フォーラムでの演奏であり、こちらは1枚。東京ジャズのプログラムだからそんなに長く演るわけにはいかない。(調べてみるとさらに前の9/2に大阪でも1公演があった。)

Herbie Hancock (p, key)
Vinnie Colaiuta (ds)
James Genus (b)
Lionel Loueke (g)

いやまあどっちも凄くて、たぶんその場にいたとしたら大きな重力場に吸い込まれて興奮していたであろう。ハービーはキーボードから七色のサウンドを放っており、それはもうカッチョいい。

ヴィニー・カリウタが聴きたくて入手したようなものだが、それは、チック・コリア、ジョン・パティトゥッチ、ヴィニー・カリウタによる1992年のブルーノート東京でのライヴにおいて、カリウタの野性的なドラミングがチックを実に活き活きとさせたからでもあった。ハービーもここではシンプルな小編成、条件は整っている。ジェームス・ジーナス、リオーネル・ルエケもいる。

ではあるのだが。

心をどこに持っていってもどうしても白けてしまうのだ。「Watermelon Man」だの「Speak Like a Child」だの「Cantaloupe Island」だの「Rock It」だの「Chameleon」だのといった名曲で盛り上げるのは一流なのだが、そしてみんなカッチョいいのだが、もはやカッティング・エッジでも何でもなく懐メロだということが見えるだけである。仕方ありません。

●ハービー・ハンコック
小沼ようすけ+グレゴリー・プリヴァ、挟間美帆 plus 十@Jazz Auditoria(2017年)
ドン・チードル『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス空白の5年間』(2015年)
『A Tribute to Miles Davis』(1992年)
ベルトラン・タヴェルニエ『ラウンド・ミッドナイト』(1986年)
ハービー・ハンコック『VSOP II TOKYO 1983』(1983年)
ジャッキー・マクリーン『The Complete Blue Note 1964-66 Jackie McLean Sessions』(1964-66年)
マイルス・デイヴィスの1964年日本ライヴと魔人(1964年) 

●ヴィニー・カリウタ
チック・コリア、ジョン・パティトゥッチ、ヴィニー・カリウタ(1992年)

●リオ―ネル・ルエケ
『Aziza』
(2015年)
テレンス・ブランチャード『Magnetic』(2013年)
ミシェル・ポルタル『Bailador』(2010年)


川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)

2017-08-01 07:59:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

川島誠『Dialogue』(Homosacer Records、2017年)のレビューを「JazzTokyo」誌に寄稿しました。

Makoto Kawashima 川島誠 (as)

>> #1430 『川島誠 / Dialogue』

●川島誠
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年)


照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)

2017-08-01 07:52:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

「JazzTokyo」誌に、照内央晴・松本ちはやによるデュオ《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(2017/7/21、ティアラこうとう)のレビューを寄稿した。

Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Chihaya Matsumoto 松本ちはや (per, vo)

>> #966 照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final

●参照
チンドン屋@蒲田西口商店街(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)


「JazzTokyo」のNY特集(2017/8/1)

2017-08-01 07:32:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

「JazzTokyo」のNY特集、Jazz Right Now(2017/8/1)。

連載第24回 ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報

シルヴィー・クルボアジェ&メアリー・ハルヴァーソン『Crop Circles』、アリス・コルトレーン『Spirituality Classics 1: The Ecstatic Music of Alice Coltrane Turiyasangitananda』のレビュー(監修:シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley)。翻訳・寄稿しました。

■ 蓮見令麻さんの連載「ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま 第16回 追悼:ジェリ・アレン」

先日亡くなったジェリ・アレンについて。

●Jazz Right Now
「JazzTokyo」のNY特集(2017/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/3/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/2/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/10/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/9/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/8/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/6/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/1/31)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/12/27)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/11/21)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/10/12)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/8/30)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/7/26)

●メアリー・ハルヴァーソン
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
『Illegal Crowns』(2014年)
トマ・フジワラ+ベン・ゴールドバーグ+メアリー・ハルヴァーソン『The Out Louds』(2014年)
メアリー・ハルヴァーソン『Meltframe』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
『Plymouth』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
イングリッド・ラブロック『Zurich Concert』(2011年)
メアリー・ハルヴァーソン『Thumbscrew』(2013年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ステファン・クランプ+メアリー・ハルヴァーソン『Super Eight』(2011年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)

●シルヴィー・クルボアジェ
コルサーノ+クルボアジェ+ウーリー『Salt Talk』(2015年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』
(2013、15年)

●アリス・コルトレーン
アリス・コルトレーン『Translinear Light』(2000、2004年)
アリス・コルトレーン『Turiya Sings』(1981年)
アリス・コルトレーン『Universal Consciousness』、『Lord of Lords』(1971、1972年)
アリス・コルトレーン『Huntington Ashram Monastery』、『World Galaxy』(1969、1972年)

●ジェリ・アレン
デイヴィッド・マレイ+ジェリ・アレン+テリ・リン・キャリントン『Perfection』(-2015年)
ジェリ・アレン、テリ・リン・キャリントン、イングリッド・ジェンセン、カーメン・ランディ@The Stone(2014年)
ジェリ・アレン+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Segments』(1989年)