Sightsong

自縄自縛日記

山谷夏祭り(ジンタらムータ、Swing MASA、中川五郎)

2017-08-06 09:24:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

山谷夏祭り。南千住駅で降りて、居酒屋の大坪屋を横目に見ながら向かう。

界隈は有名な日雇いの街であり、安宿がとても多い。そのために最近では外国からバックパッカーが来て泊まっているようでもあり、玄関に英語で値段を書いている宿もあった。見たところ1泊の相場は2200円。

玉姫公園に着いてみるとすでにかなりの人が集まっている。ここで暮らす人が8割くらいか。炊き出しのご飯が用意され、台の上にずらりと並べられた。麦茶とウーロンハイは大きな容器に入れられ、そこから柄杓ですくう。全員に飲み物がいきわたったところで乾杯があり、音楽がはじまった。

■ ジンタらムータ
大熊ワタル (cl)
こぐれみわぞう (チンドン太鼓, vo)
服部夏樹 (g)

福島浜通りの盆踊りの歌のあとは、沖縄の「ヒヤミカチ節」。美空ひばりが唄った「お祭りマンボ」では、最後が原曲の悲しいものから明るいものに変えられ、こぐれみわぞうが愉しげに唄った。「同志はたおれぬ」~「不屈の民」。チリのアジェンデ政権を支持する労働者の曲であり、確かにいまの曲でもある。大熊ワタルのクラがとてもいい。そして、やはりアジェンデ政権の崩壊とともに殺されたビクトル・ハラの「平和に生きる権利」。

■ Swing MASA
Swing MASA (as, ss, vo)

MASAさんは前日大阪から東京に来て、綾瀬のコンポステラで吹いたばかり。それは「友へ」と名付けられていたのだが、MASAさんに訊いてみると、友とは、今年亡くなった大道寺将司氏のことなのだった。

MASAさんはipadに入れた伴奏とともにサックスを吹いた。1年ぶりに聴くMASAさんの音はやはり素晴らしかった。「Don't Kill」、「Image of You」でアルトを吹き、ソプラノに持ち替えて「明けの星を見上げて」。大道寺将司の獄中書簡集のタイトルであり、氏に捧げられている。この曲のみ、横で大道寺氏の俳句が朗読された。「狼や見果てぬ夢を追ひ続け」と詠まれ、MASAさんのコルトレーンのようなソプラノ、グッときてしまう。「いのちのうた」、「それはスポットライトではない」(!!)ではMASAさんは唄った。そして最後のラップのような叫び。

■ 中川五郎
中川五郎 (vo, g)
服部夏樹 (g)
Swing MASA (as)
大熊ワタル (cl)
こぐれみわぞう (チンドン太鼓)

中川五郎の唄を聴くのははじめてだ。かなり直接的なメッセージソングであり、そのこともあってか、ステージ前でおじさんたちが奇妙な踊りをヒートアップさせていった。腕立て伏せをやったり、シャドーボクシングをやったり。

最初の「一台のリヤカーが立ち向かう」では服部夏樹とのデュオ。2曲目からはSwing MASAと大熊ワタルが入り、東京オリンピックへの反対を皮肉とともに訴える「スポーツ・フォー・トゥモロー」。最後にはこぐれみわぞうも加わり、ボブ・ディランの「風に吹かれて」。

このあと会場では盆踊りがあったのだが、ここで外に出て、近くの居酒屋「丸千葉」でナミキさんといろいろと食べた。あさりのぬた、ハムカツ、焼きそば、アジフライ、どれも旨かった。オオクボキイチ『ストレンジ・ブルー』、山内テツ、織原良次、デイヴィッド・シルヴィアンのデレク・ベイリー参加作、その他もろもろ。

●参照
Swing MASA 爆音JAZZ(JazzTokyo)
(2016年)
10万人沖縄県民大会に呼応する8・5首都圏集会(ジンタらムータ)(2012年)


大城真『Cycles』

2017-08-06 09:04:40 | アート・映画

外神田のGallery Out of Placeに足を運び、大城真『Cycles』。

ギャラリー内の四方の壁には、小さい装置が多数並べて設置されている。その装置は、板の上にコイル、その上に回路の基板が付けられたものであり、装置どうしがコードにより連結されている。

その無数の装置が発する音は、まるで蝉が鳴く林、滝の裏側の洞窟である。座ったり室内で歩いたりしてずっと聴いていると、それは一様でも繰り返しでもないことに気が付く。自然の波のようなものであり、お互いに連携してサウンドの変化をもたらすツクツクボウシのことを思い出したりもする。

解説によれば、「リレーのコイルが電気信号を物理的な運動に変換し、スイッチを動作させ、次のリレーへと電気信号を伝え、周期を連鎖させていくという仕組み」であるという。明らかに人為的なものでありながら、そのあとは自然にまかせるというあり方が面白い。

●大城真
大城真+永井千恵、アルフレート・23・ハルト、二コラ・ハイン+ヨシュア・ヴァイツェル+中村としまる@Ftarri(2017年)