Sightsong

自縄自縛日記

喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』

2017-08-19 10:15:00 | 中南米

喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(Ottava Records、2016年)を聴く。

Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Nobumasa Tanaka 田中信正 (p)

これはまた想像以上に鮮烈なアルバムだ。曲はすべて中南米のものが集められている。

何しろ喜多さんのヴァイオリンの表現が多彩で魅せられる。ジョビンらの「Olha Maria」における唸り震える音。喜多直毅クアルテットに通じるようなドラマチックな展開と、それに貢献する音を提示する、「Soledad(孤独)」。驚いたことに、エルメート・パスコアルの「Chorinho Pra Ele」では、エルメート曲の浮かれて踊るような雰囲気はそのままに、まるでフランスの夜であるかのように弾いている。

ピアソラの「Chiquilin de Bachin(バチンの少年)」ではヴァイオリンは底流となり、その分、田中信正のやはり抑制して異様な光を放つようなピアノに耳を奪われる。ジャズの文脈で自由にその都度の旋律を編み出す田中さんもいいが、ここでの演奏もいい。なんだかこのふたりは「美しい音」を執念で追及しているのだろうか、それを感じた「Eu te amo」。もうすべて棄て去って夜の世界に入っていきたくなるような演奏である。最後を締めくくる「Contigo en La Distancia(遠く離れていても)」においてその感覚が極大化する。

先日のレコ発ライヴは平日の夜で遠い永福町、断念してしまったが、無理しても行けばよかった。

●喜多直毅
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)

●田中信正
纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン(2017年)
森山威男3Days@新宿ピットイン(2017年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)


鈴木勲ソロ、椎名豊クインテット@すみだトリフォニーホール

2017-08-19 08:30:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

すみだストリートジャズフェスティバルの初日、金曜日の夜(2017/8/18)。ちょうど外出先から直帰のタイミングで間に合った。今回は小ホールのプログラムを観たのだが、大ホールではスガダイローと勝井祐二のデュオをやっており悩んでしまった。

■ 鈴木勲ソロ

Isao Suzuki 鈴木勲 (b)

柄物のワンピース、大きなペンダント、小さく黒いサテンのようなジャケット、片足は黄色・片足は青緑色のタイツ、黒いハイヒール。相変わらずというか、オマさんの凄い衣装に会場が騒然としている。

ソロはオマさんらしいものだった。「All The Things You Are」を思わせる曲を、柔軟に伸び縮みする音色で、ハッタリも交えて20分程も演奏した。

※その後、スガダイローさんのツイートで、「All The Things You Are」から「Alone Toghether」に移行したのだとわかった。

なおこのプログラム(「ジャズくら」)は、ジャズとクラシックとを混ぜる意味があったようだが、それは残念な企画倒れに終わっていた。

■ 椎名豊クインテット

Yutaka Shiina 椎名豊 (p)
Hideo Oyama 大山日出男 (as)
Yuzo Kataoka 片岡雄三 (tb)
Yuhei Honkawa 本川悠平 (b)
Junji Hirose 広瀬潤次 (ds)

誰もが言うように椎名豊のピアノは繊細にしてダイナミックであり、ソロのときもバッキングのときも目が醒めるような音を奏で続けていた。わたしも、氏がライジングサンとして登場してきた90年代にはよく聴いていたのだが、明らかに、音楽はそのころよりも遥かにスケールアップしている。大山日出男のアルトも見事。

●鈴木勲
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2)(2010年)
鈴木勲 フィーチャリング 纐纈雅代『Solitude』(2008年)