新宿ピットインにて、U9(高橋悠治+内橋和久)(2017/8/19)。
Yuji Takahashi 高橋悠治 (p)
Kazuhisa Uchihashi 内橋和久 (g, daxophone)
高橋悠治のピアノタッチは驚くほど柔らかいものだった。まるで老練な猫のように無駄のない動きで、ほとんど鍵盤のいちばん奥を弾いている。たまに相方のダクソフォンの盛り上がりに応じて、あるいは挑発するときに、手前の方を強くパーカッシブに使うくらいである。この不思議な存在感に惹かれ、気が付いたら凝視していた。
内橋和久は、ギターという無機物に生命を吹き込むかのようにスピーディーな策動を続け、鳴るようになってくるとあっさりと放棄し、ダクソフォンに移行した。最初は指で大きな音を立ててはじき、次に弓で人間のヴォイスのようなさまざまな音を発した。セカンドセットに入ると、異なるピースによる異なる声、さらにダクソフォンをパーカッションとして叩きもした。そして起承転結のようにギターへと戻り、注入した生命をふたたび奪い取っていった。
セカンドセットの終盤に、ふたりとも軽やかにジャンプするような瞬間があったのだが、その気分がアンコール演奏に持ち込まれたように感じた。それは鳥のつつきあいのような遊びの交感だった。
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ところで、隣に座った男女に見覚えがあった。話してみると、やはり、最近インスタグラムで相互フォローしたカナダ人で、ふたりとも即興演奏家だということだった。ト調を駆使しており、日本の即興演奏家の名前や、Yellow Vision、ヴィオロン、レディジェーン、アポロなどの場所についてもよく知っていた。いやー今日はFtarriに行こうか悩んでこっちに、と、わたしと同じことを考えていて笑ってしまった。縁というものは面白い。
●高橋悠治
エヴァン・パーカー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2016年)
ジョン・ブッチャー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2015年)
姜泰煥・高橋悠治・田中泯(2008年)
姜泰煥・高橋悠治・田中泯(2)(2008年)
『富樫雅彦 スティーヴ・レイシー 高橋悠治』(2000年)
富樫雅彦+三宅榛名+高橋悠治『Live 1989』(1989年)