神保町試聴室において、照内央晴さんの企画により、現代音楽作曲家・フルート奏者のネッド・マックガウエンさんを迎えたセッション(2017/8/15)。
Ned McGowan (fl, contrabass fl, piccolo fl)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Tomoko Katabami 方波見智子 (marimba, perc)
Nami Tanaka 田中奈美 (dance)
ネッドさんによるフルートのロングトーン、すぐにピアノとマリンバが入ってくる。最初は小さく、やがて音を大きくしていくと、フルートは音を細切れにして発展させてゆく。同音によりリズムを取るネッドさん、対して方波見さんは高音で彩りを加える。ピアノとマリンバに挟まれて、ネッドさんが風にのせて音を運んでくるのだが、やがて独りとなってしまう。方波見さんによる、まるで童歌。対してフルートのタッピング、照内さんは早いパッセージでなにかを構築する。3人のサウンドは強度を増し、ネッドさんはピッコロフルートを吹き始める。慎重に和音を重ねるピアノ。ネッドさんは構造を創り、方波見さんはスティックをマリンバに落とすことによる偶然を創る、この対比の面白さ。ネッドさんがコントラバス・フルートに持ち替えると、音が下からせり上がってきた。照内さんが次の展開に向けてスタンバイしながらも、全員の演奏がひとまず終わる。
次に、田中さんのダンスと照内さんのピアノによる即興。照明を落とした中で、田中さんの踊りはじわじわと変化してゆく。天からなにかをたぐりよせ、円環し、花を大事に扱い、メビウスの環の記号のようにうねり、一転して人間に戻り扉から先を覗く。それは崩れ落ち、生命も失い、朽ちてゆくうちにさまざまなフォルムを見せた。
セカンドセット。ネッドさんはコントラバス・フルートのキーを叩くことによりサウンドを創りはじめ、やがて息を吹き込むことにより、そのサウンドが上下に増幅された。田中さんの草履の擦れる音が、息遣いと交錯する。硬質なピアノ、濃淡あるフルート、遊ぶようなプリペアド・マリンバ。ダンスも含め、しばし自由な四体問題と化した。そして、ネッドさんのピッコロ・フルートと方波見さんのギロによる子供のオルゴールのような響き、その遊びはネッドさんと照内さんの間へとシフトする。背後から介入しようとするマリンバ。跳躍するピアノ。コントラバス・フルート。うなりを生成するような唄。
パフォーマー間のはりつめた関係と遊びとがかわりがわりに去来するセッションだった。
Nikon P7800
●照内央晴
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