ザ・トリオ(The Trio)によるアルバム『The Trio』(Dawn、1970年)は傑作で、わたしが持っているものは1994年に英BGOから出た再発盤である。随分気に入って、メンバーのバール・フィリップスにも、1997年と2012年の2回サインをいただいた。
最近相次いで同じ年の録音を入手した。同メンバーだが「ジョン・サーマン・トリオ」名義による『Live in Altena』(JG Records、1970/1/10)(①)、「ザ・トリオ」名義による『Jazzhaus 1970』(JazzTime、1970/1/30)(②)。そして『The Trio』が同年3月(③)。
John Surman (bs, ss, bcl)
Barre Phillips (b)
Stu Martin (ds)
演奏している曲はかなり重なっていて、雰囲気もかなり似ている(当たり前か)。甲乙つけがたいと思いながら聴き比べてもいたのだが、やはり違う。
「Dee Tune」ではサーマンはソプラノを吹く。②ではなめらかで軽く飛ばしすぎる感があるのだが、③では熟れてきている。サーマンはほとんどソプラノでなくバリトンサックスやバスクラを吹くのだが、それがいちいち闊達で素晴らしい。「In Between」は①ではバール・フィリップスのベースが目立ち、②ではうきうき感が出てきて、③ではそれがいい感じに落ち着く。③にはない「Tallness」は、①ではベースがバールさんらしく香り立つが妙に柔らかく、バンド全体として粗削りな感がある。②では間延びしている。①にはない「Joachim」や「Silvercloud」でも、②は間延び間があり、③は完璧とも言える間の取り方を実現している。やはり①にはない「Caractacus」は激しい曲であり、ドラムスとベースが高速で煽るなかでサーマンが暴れてみせるのだが、②ではフリーキーなトーンに逃げていたりもして、やはり③の凄みのほうが上。②にない「Billy the Kid」は、①が粗削り、③では妙なヴォイスやノイズも入れて怪しさを付け加えている。
そんなわけで、1月時点の演奏が成熟して、3月に完成度を高めたように聴こえてならない。それに、③の冒頭曲「Oh, Dear」がカッコよさ抜群で、サーマンの重たく早いバリトンで頭をガツンとやられた人は少なくないに違いない。あらためて『The Trio』を名盤認定。最近リマスター盤が出ていて、また気になってしまった。
ところで、ザ・トリオによる『Configuration』も同年終わりころの演奏なのだが、ゲストが多く、いまひとつ食指が動かずいまだ聴いたことがない。たぶん聴くと放っておいたことを後悔するのだろう。
●ジョン・サーマン
ジョン・サーマン『Flashpoint: NDR Jazz Workshop - April '69』(1969年)
●バール・フィリップス
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)
バール・フィリップスの映像『Live in Vienna』(2006年)
バール・フィリップス+今井和雄『Play'em as They Fall』(1999年)
バール・フィリップス(Barre's Trio)『no pieces』(1992年)