Sightsong

自縄自縛日記

纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン

2017-08-13 23:09:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

久しぶりに新宿ピットイン昼の部、纐纈雅代トリオ(2017/8/13)。

Masayo Koketsu 纐纈雅代 (as)
Nobumasa Tanaka 田中信正 (p)
Ittetsu Takemura 竹村一哲 (ds)

見るからに期待できるメンバーである。しかも開けてびっくり、セロニアス・モンクの曲ばかり。

「Reflections」では、ピアノが何かを探るように音を繰り出してゆき、主旋律に辿りつく過程に、ちょっと驚かされた。やはり田中信正というピアニストは特別である。纐纈さんのアルトには、吹く前に「うぐぐっ」と詰まる表現がある。「Skippy」ではまるで3人のバトルであり、その中でもエッジを効かせたピアノが面白かった。「Off Minor」ではアルトから入り、田中さんのピアノは手でそのあたりを叩きながらモンク的に調子はずれな音を叩きつつも、やがて和音を放つとこちらのツボを直撃する。纐纈さんのアルトは闊達に、濁った音の長い旋律を含め、休まず攻める。「Jackie-ing」は竹村さんの放つ強いリズムではじまり、一風変わったブルースとして、盛り上げてゆく。3人がぴたりとハマるときの快感といったらない。纐纈さんは渾身の力で吹き、竹村さんはストップ&ゴー、遊びもあった。

セカンドセットは「Hackensack」から。アルトは朗々として音切れも明確であり、力が満ちている。「Ask Me Now」は、やはり解体的なフラグメンツから旋律に収束してくるピアノ。纐纈さんのアルトはピアノとのデュオで抑制気味だが、ドラムスが入るとギアを上げてゆく。「Epistrophy」は独特のリズムで先導され、アルトがとにかく音を詰めてゆく。「Ugly Beauty」などを経て、アンコールは「'Round Midnight」。纐纈さんは管全体を共鳴させ、静かさと爆発的なものとを共存させもした。

独特極まりないモンクの曲に対してこの多彩な表現。『纐纈雅代 Plays Monk』にでも結実すれば面白いな。

●纐纈雅代
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年)
纐纈雅代@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫+纐纈雅代+レオナ@Lady Jane(2016年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)

渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『秘宝感』(2010年)
鈴木勲 フィーチャリング 纐纈雅代『Solitude』(2008年)

●田中信正
森山威男3Days@新宿ピットイン(2017年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)

●竹村一哲
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)


クリストフ・イルニガー(ピルグリム)『Big Wheel Live』

2017-08-13 10:42:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリストフ・イルニガー(ピルグリム)『Big Wheel Live』(Intakt、2015年)を聴く。

Christoph Irniger (ts)
Dave Gisler (g)
Stefan Aeby (p)
Raffaele Bossard (b)
Michi Stulz (ds)

クリストフ・イルニガーはスイスのサックス奏者。今回はじめて聴いたのだが、音色がふわりと膨らんでおり、間も活かしていて、ちょっとイングリッド・ラブロックを思わせる。

バンド全体のサウンドもいい意味で隙間が多く、その自由空間のなかで、それぞれのメンバーが柔軟にソロを取る。イルニガー以外に印象的なのはデイヴ・ギスラーのギターであり、濃淡を付けてトルコアイスのように伸びている。


杉本拓+増渕顕史@東北沢OTOOTO

2017-08-13 09:18:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTOに足を運び、杉本拓・増渕顕史デュオ(2017/8/12)。

Taku Sugimoto 杉本拓 (g)
Takashi Masubuchi 増渕顕史 (g)

ファーストセットにおいては、ふたりとも数少ない音を選び爪弾きあう。どちらかといえば増渕さんは煌くように澄んだ高音を、杉本さんは微妙に鼓膜を振動させるような低音を。しかし役割はその限りではなく、ふたりの発する単音も倍音も、ひりひりとした緊張感の中で発せられどこかに消えていった。

セカンドセットでは、杉本さんは弓によって弦を擦った。聴こえるか聴こえないかの領域にある擦音が、ここまで息を呑むほど官能的とは。増渕さんはそれに対し一瞬の光を撒き続けた。

音の連なりによるサウンドよりも、ひとつひとつの音そのものに集中する、その追及という過程の音楽。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4開放

●参照
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)