Sightsong

自縄自縛日記

Shield Reflection@Ftarri

2017-08-27 23:50:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarriに足を運び、大上流一・外山明・徳永将豪という驚いてしまうマッチングによる「Shield Reflection」を観る(2017/8/27)。図らずも徳永将豪2デイズとなってしまった。

Riuichi Daijo 大上流一 (g)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)
Masahide Tokunaga 徳永将豪 (as)

この組み合わせは2回目。前回は残念ながら観ることができずどんな雰囲気だったのかわからないのだが、「よそよそしさ」は依然としてあるとみた。

ファーストセットは徳永将豪のソロから始まった。やはりロングトーンを基本にしながらも、意図的な逸脱としか思えない音が発せられる。それはアンブシュアの息漏れであり、管がうまく共鳴しないときの共振であった。しかし、もとより音のコアなどはないと主張するかのようなアルトである。ドラムスがアルトの音圧により一瞬遅れてびりびりと響きはじめたのだが、意図的な共演に違いない。やがて外山さんが座り、その一方的な関係をタッピングするかのように叩きはじめた。最後には、徳永さんが不安定な管の共鳴をみせた。

セカンドセットは大上流一のソロから始まった。金属音のように響くピッキング、その残響の中に、アルトが入念に重ね合わされていく。外山さんが入り、スティックの弾性を利用して、まるで熱い金属板の上で水滴が踊るような音を発した。

サードセット、外山明から。「ジャズの外山明」と(異種格闘技的に)期待してしまう面はどうしてもあるのだが、それに応えるかのような不定形のドラミング。大上さんが加わると、ふたりがシンクロするかのような局面が多々あった。ここで徳永さんのアルトはロングトーンのなかで音圧を高め、まるで、「アート・ブレイキーのナイアガラ瀑布」のようにドラムスを響かせた。共演している相手の楽器を鳴らす越権行為、これは実は挑発ではなかったか。外山さんはそれを断ち切るように叩いた。そして、大上さんはギターを急停止させるプレイにより不定形のドラムスにシンクロさせるように見えた。その一方、ピックをやさしく蛇行させることにより、我関せずとばかりに、哀しみの旋律を奏でた。

さらなる可能性があるトリオ。あと1回の演奏を行う予定だという。

●大上流一
リアル・タイム・オーケストレイション@Ftarri(2016年)

●外山明
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)

●徳永将豪
窓 vol.2@祖師ヶ谷大蔵カフェムリウイ(2017年)
徳永将豪『Bwoouunn: Fleeting Excitement』(2016、17年)
徳永将豪+中村ゆい+浦裕幸@Ftarri
(2017年)


1972年6月のキース・ジャレット・トリオ

2017-08-27 09:26:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

キース・ジャレット+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Hamburg '72』が発掘されたのは2014年のこと。ライヴ映像は観たことがあったし、もちろんこのトリオでの吹き込みは他にもあるから驚きでもないのだが、やはりこの3人の噴出させるエネルギーを浴びることは嬉しいばかりなのだった。

最近聴いている音源は、このECM盤よりも前の演奏である。『Paris 1972』(①)が1972年6月9日。『Hamburg 1972 First Set』(②)が1972年6月14日のファーストセットで、『Hamburg '72』(③)が同日セカンドセット。

既にこのトリオでは演奏しているから初顔合わせのハプニングなどはない。しかしそれにしても鮮烈極まりなく、マンネリに陥った後年の「スタンダーズ」(ゲイリー・ピーコック、ジャック・デジョネット)とは雲泥の差がある。キースはチャールス・ロイドのグループから出て、アメリカン・カルテットも始めており、マイルス・デイヴィスとも共演し、たいへんな音楽的エネルギーに満ち溢れていた時代だったに違いない。サイケデリックと言えるほどに豪華絢爛で、フォーク色もあり、ヘイデン、モチアンも得意技を繰り出しまくっている。

③をあらためて聴いたときには興奮させられたのだが、たった5日前なのに、①の粗削りさはまた別の魅力を放っている。同曲を聴き比べてみてもその印象である。②も良いのだが音質があまり良くない。③は最近レコードでも再発されたようである。

ところで②にはなぜか2枚目として1973年11月3日の「クインテット」の音源が付いているのだが、わたしのプレイヤーでは再生できない。何なんだろう。

Keith Jarrett (p, ss, perc, fl)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds, perc)

●キース・ジャレット
キース・ジャレット『North Sea Standards』(1985年)
キース・ジャレット『Standards Live』(1985年)
ピーター・ブルック『注目すべき人々との出会い』、クリストのドキュ、キース・ジャレットのグルジェフ集 (1980年)
キース・ジャレット『Staircase』、『Concerts』(1976、81年)
キース・ジャレットのインパルス盤(1975-76年)
キース・ジャレット『Arbour Zena』(1975年)
キース・ジャレット『Solo Performance New York '75』(1975年)
キース・ジャレット『The New York Concert』(1975年)
キース・ジャレット『The Bremen Concert』(1975年)
70年代のキース・ジャレットの映像(1972、76年)
キース・ジャレット+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Hamburg '72』(1972年)
キース・ジャレット『Facing You』(1971年)