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参参参(三十一)好きになる生き方

2023年09月14日 | 読書
 集中して時間をとった読書ができなかった。酷暑・残暑のせいにしてしまっても、今年は許されるか。


『いのちとユーモア 鎌田實と11人の対話』(集英社)

 2004,2005年のNHKラジオ公開放送の記録を対話集として再構成した一冊。村上信夫アナウンサーとともに、永六輔、西村由紀江、立松和平、坂田明などの11名のゲストと語っている。それぞれが個性豊かであり、様々な対象と向き合っている方々ゆえに面白い。エピソードも多彩である。書名にある二つのキーワードに添えば、「いかにいのちを愛でるか」、そして「ユーモアこそ生きのびるコツ」が大要と言っていいのではないか。特にユーモアは「ヒューモア・ヒューマニズム」だという永六輔の説、さらにユーモアの語源が「フモール(体液)」というラテン語にあることは通ずる。体液を喜ばせる生き方を自分はしているか。





『つまずきやすい日本語』(飯間浩明  NHK出版)

 再読。2019年に発刊された時に手に取っていた。辞典業界?では超有名人の飯間さんの文章は非常に明晰でわかりやすかった。言葉の使い方はもちろん正誤がはっきりしている事項もあるが、それ以上に変化していく事実が特性であることを再確認した。よく言われる「的を射る」と「的を得る」も設定や状況によってどちらもあり得る。決めつける者がいれば、それは知識の、いや思考の狭さと言っていいのだろう。この「頼りないコミュニケーションの道具」と付き合うためには、好きになる以外手はないだろう。


『雄勝風土記』(文学の村同人  秋田文化出版社)

 ふっと読みたくなって手に取った。裏表紙の見返しに氏名印と、(おそらく)購入月日が書かれてある。「80.9.22」。発行日から10日あまり後だ。採用2年目の自分が何を読もうとしていたのか。序は「地域と民衆の視点から」と題され、郡市文集「かっち道」の巻頭言が引用されていた。当時の興味の一つが「郷土」にあったことは間違いないようだ。四十数年経った今、よく目にしてきた盆踊りや佐藤信淵のことより、やはり「天保けかち物語」「帯屋久太郎」「草相撲の里」など読んではいたのだろうが忘れたことが新鮮だ。それはある意味で、書かれてある歴史を放ってきた自分の歴史とも言えるのか。