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読書もまためぐりあい

2024年08月12日 | 読書
 最近の風呂場読書でようやく読みきった文庫本はRe65『短編伝説 めぐりあい』(集英社文庫編集部)。短編小説集は手軽さとともに、アンソロジーであればまさに作家との「めぐりあい」を期待して手にする。この一冊も13人の作品が並んでいるが、馴染みのあるのは4人ほどであとは名前を知っている程度だった。


 短編としているが、掌編と呼んでもいい話も三つほどあった。なかに三島由紀夫、五木寛之という大家の作品が並び、やはり五木がくりだす設定が好きだなと単純に感じたりした。考えると、短ければ短いほど作家の世界観、人間観が如実に表れるのではないか。表現意欲を喚起する事象への眼、そして結末の価値観。



 さて心に残った一つは「二人ぼっち」(森瑤子)。おそらく初めて読む。妙に人間臭さを感じる文体で会話の自然さで読ませていく。題名の「二人ぽっち」という表現はなかなか意味深だ。ここでは母子を指していると思えるが、他の登場人物との関係性も重なる。「ぽっち」は「ぽち」…それだけに抱える重みを感じる。


 「永遠のジャック&ベティ」(清水義範)は、顔を緩ませながら読み続けた。解説には「言わずと知れた名作」とあり、作者独特のパロディ感覚が存分に発揮されている。60歳以上のおそらく多くの者が、中学や高校の英語授業で体験したあの独特の言い回しを思い出すだろう。あの時、僕はジャックでありジョンであり…


 彼女はベティでありメアリーであり…これは「机」であり「ペン」であり…、〇〇の中で最も~~なのは…、~~するやいなや~~、そして~~するところの〇〇は…、と言わなくてもわかることや、ふだん使ってもいない日本語の「学習」をした。その成果はともかく、懐かしい時間に再びめぐり合った気分になった。


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