「2014読了」139冊目 ★★★
『マスカレード・ホテル』(東野圭吾 集英社文庫)
上手いです。さすがです。きっと映像化されるでしょうね。『マスカレード・イブ』を読んでからの本編だったので,主人公たちの持つ背景を知っているつもりになっていたが,山岸がホテルマンを目指そうとしたエピソードや,登場人物に絡む新田の高校生時のことなど,本当に入れ込み方が流れるようであり,不自然さがないのは上手としかいいようがない。
「イブ」でも書いたが,ホテルマンと刑事の組み合わせの妙は大きい。最初の二人のぶつかり合いは一種の仕事論でもあった。急ぎの用事のために,チェックインの並ぶ順番を待てない客を「ルールを守れ」と非難する新田に対して,山岸はぴしりと言う。「ルールはお客様が決めるものです」。順番が来るまで待つという意味は,場によって変化する。これは深い。
「2014読了」140冊目 ★★
『悩むが花』(伊集院静 文春文庫)
週刊文春の連載らしい。いわゆる人生相談の体裁をとっているが,相談者が納得?できる回答にはなっていないし,そもそも読者もそれを求めていないだろう。他人からみたらくだらない悩みに対して,著者がどんな声をかけるか,それが興味の中心。そして愛読者たちは著者の答を予想済みだ。この一言に尽きる。「そういう人生の大事なことを人に訊かないの」
大半が,上のような結論だが,いくつか「生きて行く上の肝心」を語っている。言い回しは微妙に違うにしろ要は「人生は悲しい,残酷だ,理不尽だらけだ,けれど我慢して生きていけ」ということ。おまけの形で作家たちの悩み相談もあって,内容は軽いけれど,ちょっと楽しい本だ。それにしても,伊集院が伊坂幸太郎の相談相手?の一人だったとは驚いた。
そして
「2014読了」141冊目 ★★★
『ぼくの好きなコロッケ』(糸井重里 ほぼ日ブックス)
しばらくベッドの横に置かれて開かなかった一冊。大晦日の今日,暗いうちから残りをめくり出してみた。ページの端を折っていた箇所は結構たくさんあるが,たぶん,この文章のところでじっくり思ってしまって,読むのがストップしたのだった。それは「事情を話し合っていたら,問題はただ複雑化するだけだ。」これは自分の日常にはつらい一言でもあった。
読み進めていくと,またこんなことも書いている。「遠慮なく言っちゃえば『正解』探しばかりで人生終わっちゃう」…この二つを折り合わせるとしたら,「基本的に『求めるものは2番目に置け』なんだよ」だろうか。そして,今年の号で一番気に入ったのは,次の言葉。
人の一生は
なにを言ったかでもなく,
なにを思ったかでもなく,
なにをしたのか,
ただそれだけじゃないかなあ。
この一冊が今年の最後だったのは,よかったなあと思う。
とにかく,元日から今日まで中身はともかく完走できた。
拙ブログを訪問してくださる方々に感謝いたします。
よいお年をお迎えください。