すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

よし「想像の海へ」行こう

2024年08月04日 | 絵本

 小学校高学年で語った『海は広いね、おじいちゃん』を、やっぱりこども園でもやってみることにした。でも最初からそれでは唐突かなと思い、同じ五味太郎作の『うみのむこうは』を、その前に持ってくる構成を考えた。これは海辺でいろいろ想像するスタンダードなつくりで、今の時期にはふさわしいと思った。

 二つのこども園で語ったが、『海は広~』を小学生用にPPTを作ってあり『うみの~』もPPT化し続けてみた。モニターで行うメリットを考え、海辺の動画映像をちょっとだけ入れた。この流れはいいと思ったが、重くなったのか少し動かない時間があったりで…、残り二つの園はやはりアナログだけでやるかな。

 

 

 夏にふさわしい大型絵本を二つ持ち込んだ。一つは『ありとすいか』。これは大きい版だと実に迫力があって、楽しい一冊だ。すいかを食べる場面もそうだが、ありの巣全体の絵が二場面描かれていて、これがまた実に興味が惹かれる。最後に食べきったすいかを、ウォーターシュート(すべり台)にする発想にも夢がある。

 

 

 もう一つは夏の定番といってもいい『うみきりん』。これは小学校低学年で読んだ時もあり、もう何度か語っている。スケールが大きい話なので、いつも見入ってくれる。大雨の影響で、秋田の海は流木が多いそうだが、子どもたちはこの夏、海へ一回でも行っただろうか。必ずそんなことを訊きながら始めているが…。

 

 子どものうちは、毎年一度は海で「ヤバッチイ」(笑)経験をしてほしいと思っている。しかし家庭環境によってずいぶん違いがあるだろう。絵本爺としては、行けても行けなくても「想像の海」へ聴く子たちを誘わねば…。そのために読みの工夫はもちろんだが、他に何かないか…そうか、今思いついたぞ!!報告はいずれ。


盆地男、「海」を語る

2024年07月13日 | 絵本
 今月の学校読み聞かせは2校で、5年生そして高学年(5,6年)だった。期日も近いので同じラインナップにした。季節に合わせ、来週月曜は「海の日」ということでテーマは「海」。盆地に住んでいるので、「海の近くに住んでみたいなと思っている人はいないかな」と問いかけてみた。そしたら、意外にもほんの一握り。


 「どうして?」と訊くと「津波が怖い」という声が…。気持ちはわかるが、ちょっと複雑だ。軽く受け流し、さっそく一冊目を読む。これは「お誕生月おめでとう」と添えられている絵本シリーズであり、7月は『うみ』(文・中川ひろたか 絵・はたこうしろう)。「おかあさんの おなか」と切り出す詩的な文章である。



 「海」という漢字、フランス語で海と母は同じ言い方をすることなどが記されて、後半は少年が海へ入り、ぷわりと浮かんでお日様に話しかける場面で括る。実に雰囲気のある話だった。これは低学年から中学生まで、その段階に応じた受け止め方をしてくれるのではないかな。このお誕生月シリーズは、いい企画だな。



 二冊目は『海は広いね、おじいちゃん』(五味太郎)。これは絵本ナビで見つけて、思わず中古本を買ってしまった。結局到着が間に合わないと察して、隣市図書館から借りてきたが…。五味らしいユーモアにあふれている。こども園でも読めそうな一冊だが、ちょっとした仕掛けもあり、その点を触れると反応もよかった。




 最後は『海のおっちゃんになったぼく』。これは一昨年に読んだお気に入りの一冊だ。これは一種のファンタジーで、内容からすると、やはり高学年に合っていたようだ。関西弁の語りは自己流だが、これも一つのハードルだろう。「海」であれ「関西弁」であれ、どちらからも遠く離れた盆地男には、良き負荷になる。


梅雨時の絵本読み

2024年07月03日 | 絵本
 2月末に書いてから「絵本」そのものを取り上げたメモはなかった。しかし、読み聞かせはこども園、小学校で5月当初から始めていて、記録を残す余裕がなく新規の取り上げが少なかったことが原因だろう。同じ本を選んでも今の様子を残しておくことは大切なので、随時記しておき見直していく。


 こども園は自分なりのクールを決めていて、今日が最初の終了日。今回四か所で続けたのは、次のラインナップだ。大型絵本の『ドアがあいて…』『にゃーご』、そしてPPT化した本は『こどもかいぎ』『カ、どこいった?』。内容、ジャンルともまちまちで、子によって好みが違う。歓声は『カ、どこ~』が多く、鉄板だ。


 

 幼い子向けのようだが『ドアがあいて…』は良くできている絵本だと思う。舞台が固定されている。病院の待合室に一人ずつ入っていくという、一種の不安を暗い色遣いの場面で表しつつ、「患者」が出てくるときのユーモラスな表現では安堵感を漂わせる。最後にどうなるか、声でじっくり惹きつける技も要求される。


 

 『こどもかいぎ』…最初に「会議って、知ってる」と問いかける。年長だと「話すること」程度は言える子がいる。この会議が「おこられた時はどうするか」という「お題」なのが子どもに寄り添っているし、登場する子どもの反応から親の様子も描かれていて楽しい。こんな形で、ふだんの生活を考えることも大切だ。


 こども園読み聞かせも三年目。今年は図書館事業という形でなく、完全にボランティアだが、コナレテきているかなと感じる。まだ「館長さん」と呼んでくれる子もいて、「いや、私は…」と否定しつつも、何か別の名称(愛称?!)が必要かと思ってはいるが、絵本爺さんではあまりに昭和な気(笑)がして…決めかねる日々。

絵本、ひとまずの振り返り

2024年02月29日 | 絵本
 こども園の読み聞かせは昨日で2月分を無事終了した。まだ様々な感染が出ているなかで、やや心配な面もありつつ実施できている。残すは来月4回、楽しみである。小学校の方は先週で終わったこととなる。この後、春休みがどうなるかわからないので、ひとまず今年度の振り返りをしてみたいとリストを開いた。



 5月から2月までほぼ月2回ペースの訪問である。11月が自己都合と学校側の事情で中止になった。新規に一つ入れてもらったので実施は計16回。取り上げた絵本は29冊であった。訪問校が違っても同学年、近似学年だと同じ本を取り上げることも多い。集団によって違う反応を見せるときもあり、そこも面白い。


 今振り返って印象的な何冊かを挙げてみよう。低学年では『てんてんきょうだい』のアイデアが抜群だった。『ダンデライオン』という古い本も読みがいのある一冊で初夏にちょうどよかった。一度しか機会がなかったが『2ひきのカエル』は洋風落語のようで、勝手にキャラクタータイプと決めている自分にはあった。


 その意味では明らかにナレータータイプが読むにふさわしい『星に伝えて』を読み切ったのは、いい収穫の一つかもしれない。練習の回数も含めて今年度に最も読み応えがあったのはこの一冊か。こども園で扱った同作者の『ふゆのはなさいた』も、読み手として「力」のいる本だった。文章に込もる思いが伝わる。


 もう一冊、印象的なのは『つかまえた』。中学年を中心に三度読んだが、独特の絵に短く端的な言葉が重なって、迫力ある展開が子どもたちの目を惹きつけたことを覚えている。作者の絵本は他にも多いが、集団への読み聞かせとして伝えにくく感じる面もありためらうことが多かった。他にもっとないか探してみたい。

正月の読み聞かせ記

2024年01月30日 | 絵本
 今月の読み聞かせは、こども園4つと小学校が1つ。こども園でのプログラムは「初読み聞かせ記」に載せた。特に『ふゆのはなさいた』が印象深い。8分超の話で年長児以上向けと思ったが、年中児も混じった園でも集中が切れずに見入ってくれた。物語の持つ強さを感じた一冊だ。作者をたどってもう一冊に出逢う。


 『星につたえて』…これはいいと一読して感じた本だ。6年生相手に読む前日に、グループの初読み会でも披露した。聞き手から「自分で読んだ時は魅力的に思えなかったが、今聴いたら…」という嬉しい感想を頂いた。多少の工夫はしたが、この話が好きという感覚がやはり一番大切だ。強調、緩急等ににじみ出る。



 少しだけその魅力を確かめてみる。ちっぽけなクラゲと夜空のほうき星の交わりから始まる物語は、その対比から「悠久の時を超えて通ずる心」をしみじみと語る。伝え継がれた声がクライマックスで明示されるのがなんとも心地よい。私達人間もその長い歴史の一部にあるということ。「命」はめぐると教えてくれる。



 6年生相手のもう一冊は、講談絵本を選んだ。「那須与一 扇の的」である。中学入学を控えた子たちに、古典の世界へ誘うといった意味合いを持って紹介した。ただ、今まで取り上げた他の講談より言い回しの難しさを感じ、迷いがあった。チャレンジ精神と呟いてやり抜いた感じだ。絵の魅力が、後押ししてくれた。

 

 読み聞かせ後に「この絵を描いた人、何歳ぐらいだと思う?」と珍しく問いかけてみた。宇野亞喜良は今年90歳になるデザイナーだと教えると、さすがに驚きの表情を見せていた。そうなると私などまだヒヨッコだ…と比較の対象にするのもおこがましい。目や声の衰えを着実に実感しつつ何で補填すべきか考える。

今年初の読み聞かせは…

2024年01月18日 | 絵本
 今年初の読み聞かせは地区のこども園となった。選書はほとんど決めていたが、時間配分や内容などを考え、以下のようなラインナップにする。全部が今の時期にふさわしいかはともかく、最初の紙芝居は…。「今年は何年(干支)か知ってる?」「たつ年!」「じゃあ、辰は別の名前で言うと…」「りゅう!」とやりとりした後…


「りゅうの目のなみだ」…浜田廣介の原作をもとにした作品である。絵が外国的に描かれているので、一種のファンタジー要素を感じさせてくれる。人物の会話を中心に進む冒険物語のようにも感じるし、子どもたちを引きつけていた。年長児が相手なので「ななつのたんじょうび」という設定も、物語に同化しやすい。




 絵本一冊目は「しめしめ」という題名。十数名のうち1名が既読だった。「しめしめっていう言葉、わかるかな。どんな時使う?」と問いかけて始めた。展開は動物等が登場し重層的に「しめしめ」を繰り返していく形。最後のオチは驚きがあって楽しい。調べたら「しめ」は「しめた」の略でその畳語だ。納得した。




 最後は「ふゆのはなさいた」。これは実にいいストーリー。9分を超す話だが「もうすぐ1年生だから大丈夫だね」と少し圧(笑)をかけて読み始める。前半、二人ほど集中を欠いていたが、中盤から全員の目が惹きつけられていた。読みの工夫も必要だが、クライマックスの絵をどう見せるか、それがポイントになるだろう。




 まずはスタートを無難に乗り切った。この後同じ形で残り3つの園も語っていく予定。時間的には目一杯だが、語り前のやりとりは必要と感じる。意識するしないは別にして、「?」を頭に持ちながら聴くことは、能動的と言っていいだろう。今年も自分の好みと対象とのマッチング、つまり選書に悩む日々が続くかな。

今年の絵本読みは…

2023年12月30日 | 絵本
 今年一年で印象的な絵本を挙げてみるとすれば、まず昨年末に見つけたこの一冊は入る。「まっくろいたちのレストラン」…「恋の絵本」と題されたシリーズだ。展開そのものはありがちだが、冒頭の入り方から細かい点がよく練られている気がした。読んでいて心地よく、そして少し切なく心が動くところが良い。


 次は5月に読んだ「てんてんきょうだい」。内容としては、ひらがなの濁点の学習にぴたりと当てはまる。しかし、それ以上の兄弟のやりとりの台詞を、濁点を効果的に使うことで楽しい作品になった。一年生は、これはもう吸い付けられるような雰囲気で向かえてくれた。シンプルな図柄、最後のオチも決まっていた。


 『2ひきのカエル』は楽しく読めた。PPT化する時に、大判なものだから全文を書き写して調整した。何より写実的な絵が迫力満点だし、双方のカエルの個性が語り口で際立っている。英国製(笑)だけれど、まさに落語調。日本的なオチとはまた違った、納得の収め方をする。新美南吉の同名書と一緒に読みたかった。


 田島征三の『つかまえた』も印象深い。独特のタッチが子どもたちに与えるインパクトは強いと感じた。名作『なまえのないねこ』ネコを扱った数々の作品のなかでも読み応えがあった。「名づけ」について再び思いを巡らせることもできた。こども園でいくつか読んだロングセラー本はみんなそれなりの「力」があった。





 12月に見つけた『ふゆのはなさいた』。こども園には合うだろうと選び、練習中だ。なかなか魅力的だったので、同じ作者をたどっていったら『星につたえて』という一冊を見つけた。久々に「読みたい」気持ちが高まってきた。「ことば」…伝えるべきことは何か、伝える本質とは何か。シンプルな響きが心地よい。



初冬の絵本覚え書き

2023年12月07日 | 絵本
 先月はこども園だけの読み聞かせとなってしまった。
 いずれも良い本だったが、印象深い2冊をメモしておこう。


『おばあさんのすぷーん』

 この50年も昔に発刊された絵本を、平成最後の年に生まれた子たちもしっかり見いり、聴き入ってくれた。今の本にはあまりない独特の画風だし、リズミックな文体も子どもたちを引きつけると言ってよいだろう「でぶちん」や「やせっぽ」も今は使われない語だが、ニュアンスで理解できるので笑顔になっていく。



 ねずみたちがスプーンとともに遊びながら、持ち主のおばあさんの家へ飛び込んでいくストーリーは、禍転じて福となすという安定的な見方ができる。最終場面「カラスが見ている」ことに誰しも注目するが、その「部外者」をどう捉えるか。自分なりの解釈を考えてみるのも面白い。心理テストになるかもしれない。



『みんなのおすし』

  読み聞かせグループのお一人が絶賛していた。寿司屋のカウンターを舞台に展開するこの一冊は仕掛け絵本の良さを生かしている。食べる場面のインパクトをより強調される。登場してくるお客の順番は普通の会社員から始まり、実際と架空が入り混じり、聴き手のテンションはページをめくるごとに上がっていく




 そしておっと思わせる最終場面が面白い。職人がネコであり、最後の客がネズミたち。ネズミたちはネタを模した衣装をまとっている。さあ、どうなったか。それは最後の「返し」の部分の絵で想像できる。こども園相手であれば、ここは安心のオチでよかったと思う。「みんなのおすし」という平凡さは考えれば深いか。

宮西達也作品を読み解く(4)

2023年10月19日 | 絵本
 ティラノサウルスシリーズはウルトラマンシリーズ同様、人気が高い。裏表紙のコピーをみると、「愛情物語」「友情物語」という括り方で紹介されている。手元の『キラキラッとほしがかがやきました』『であえてほんとうによかった』の2冊を見て少しだけ深掘りしてみたい。いずれも、最初は「乱暴者」「嫌われ者」だ。





 それがある者との出会いによって変化していく。「キラキラッ~」は災難と裏切りによって苦境に立たされた時、「であえて~」も本当の出会いは、島に取り残された災難からと言ってよい。物語が動き出すのは非常時という点だ。そういう出来事によって、人物の本当の気持ちや頭の働かせ方(知恵)などに気づいていく。


 根本は「やさしさ」や「人を思う」意味に収斂されていくが、前段階で正直さを吐露する場面が描かれる。自分自身の心底をさらけ出してこそ、近づくことが出来る境地だ。それは自己否定、そして悲しい結末となる。どちらも象徴的に「赤い実」が登場する。食べると幸せになる、元気になる実は「血」と重なる。


 『おまえうまそうだな』から始まるシリーズには、題名の変化もある。もちろん重層的な意味を持つが、爬虫類的、強者の語から共感的な価値のある語がダイレクトに出るようになった。穿った見方をすれば手に取りやすいとも言える。しかしそれは、題名は表紙とともに一種の顔であり、メッセージとなるからだろう。


 最後にもう一冊。『きょうは なんて うんが いいんだろう』は、まさしくWINWIN(今は使わないか)の極致。誰(動物)も殺さないストーリーは安心感がある。幸せに満ちていればみんな殺生しないよ、そんな生き方もあるじゃないかと思わせてくれる。クマ騒動が激しい秋田県で、駆除された一方を考える。

宮西達也作品を読み解く(3)

2023年10月16日 | 絵本
 「道徳より一冊の絵本を…」なんて大声では言えないが、その可能性を秘めていることは確かだ。小さい子の場合は、絵本という形だからこそダイレクトに心に響く期待が大きい。『ニンジャ さるとびすすけ』は忍者というモチーフと作家独特に集団や多勢を描く絵柄が効果的で、楽しんで「生き方」を学べる一冊だ。




 猿飛佐助の孫という「すすけ」の最初の悩みは「ちちとははのおしえのまき」。勉強重視の母と遊び重視の父の助言に迷い、殿様に教えを乞う。次は「いじめ問題」。そして最後は「しんだあとは?のまき」と、レベルアップしていく。結論は言うなれば「マインドフルネス」の考え方になるわけで、なんとも今風である。


 これなら低学年にぴったりではないかと、今さら教師根性(笑)が出てきてしまった。それはさておき、次のこども園のメニューに加えようと決めたのが『ヘンテコリンおじさん』。系統としてはウルトラマンシリーズと同様だろう。設定が恐竜のいる時代になっていて、その点に、読み物としての面白さが感じられる。


 「ゆめはかなう」を皮切りに「あきらめない」「あきらめない2」「はやいとおそい」「しあわせだなぁ」「じぶんだって」「どうぞどうぞ」「なきむし」と強弱や硬軟を取り混ぜて、人間らしさを描いてゆく。シンプルに価値観を照らし合わせる。端的にはかなり大人に向けたメッセージといえるのが、宮西作品の特徴だ。


 最終章は「おじさんのねがい」。ここでプテラノドンにのったおじさんは「みんなのいえに マンモスのおにくをくばって」まわる。そして雪が降ってきたので赤い毛布をかぶった。「も もしかしたら おじさんは…」というエンディングがいい。おじさんの行動に込められた願いが拡がりますように…と余韻が残る。