すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

ほぉおと思って締めくくる

2024年12月21日 | 絵本
 今週は3日間こども園に通い、今年最後の読み聞かせの締め括りをした。4つの絵本を取り上げた。前半は『めをさませ』『うえきばちです』。短い本で、テンポよく攻めてみる。これらは、まず「テッパン」と言っていいほどウケる。「うえきばち」はこども園では初めてだけれど、反応は小学校とほとんど同じ。


 もちろん、絵の面白さが抜群なわけだが、大人になっても楽しめるのは「同音異義語」を使う工夫があるからで、その空想と馬鹿馬鹿しさが本当に楽しい。さて、後半はクリスマスを意識した2冊。いくつかサンタクロースが登場する話も考えたが、結局選んだのは次の本だった。最初は「ちいさな もみの木」


 しみじみとした味わいがある。年に一度の機会に読んでみたくなる本だ。「ちいさなもみの木」が大きく育ち、この後、毎年続くクリスマスにつながるような終末が印象的な一冊だ。もう一つは「きょうりゅうがすわっていた」。「小さな」ものから「大きな」ものへの転換、そして6歳児を特に意識して取り上げた。



 最初見つけた時、「矢吹申彦」の名前におっと思った。ニューミュージックマガジン世代の一人には、ただただ懐かしかった。意外性のある展開に、独独の「ノイズ」が入っている画が続く。それが昔の映画のようなファンタジーを感じさせてくれる。子ども向けなのは確かだが、かえって大人の方が「ほぉお」と思う顔になった。

三年ぶりのお猫さまたち

2024年12月20日 | 絵本
 今年最後の小学校での読み聞かせは4年生。何を選ぼうかと多少迷った。時期的なクリスマスものは学年としてどうかと思い、困った時の猫頼み(笑)ということで、この2つをピックアップした。『ねこはるすばん』(町田尚子)『のら猫のかみさま』(くすのきしげのり)、どちらもいい本で、前に取り上げたことがある。


 調べてみたら、どちらもおよそ3年前。『ねこはるすばん』は楽しい妄想が軽快なテンポで語られる。絵本の楽しさがつまっているような一冊だ。ある学校のPTA時に親子で聴いてもらったことも印象深い。語りは、出だしはゆるく「なんだ?」と思わせておき、徐々に明るくしていくパターン。終末をアドリブで締める。




 『のら猫のかみさま』…これは物語として大好きな一つだ。かつて別ブログで紹介していた。その時に対象は年中児から大丈夫と考えていたが、やはり小学校中学年以上がいいだろう。時間も13分以上かかる。この作品では、かなり朗読的な意識が強くなる。ドラマ性を伝えたいとプレッシャーを少しかけてみた。


 PPT化した大型モニターにじいっと見入ってくれた。(ただしこのモニターは画面に5,6㎝の縦筋が入っていてワラエタ)。感想が言いやすいのは前者だと思うが、後者も含めてほぼ全員が何かしら言葉を述べてくれた。時間が過ぎたので付け足さなかったが、教えたかった語がある。「恩送り」である。まさに自分の心境(笑)。

冬に備える「ココロのヒカリ」

2024年12月03日 | 絵本
 三週続けて、こども園の読み聞かせに通った。今回は「紙芝居」を中心にしようと構想した。時期的にふさわしいと思い「てぶくろを買いに」は取り上げようと決めていた。原作とは少し異なり端折っている部分は惜しいが、初めて買い物にいく子ぎつねへ共感する子は多いだろうし、読み手としての安心感があった。




 もう一つは悩んだ。イソップや笑い話系統も考えたが、今回は久しぶりの宮沢賢治を選んでみた。「どんぐりとやまねこ」である。一種のファンタジー要素があるなかで、魅力的?個性的?な登場人物が惹き付けるのではないか。さらにどんぐりたちの諍いも面白い。園内での争い事を思い出す子もいたかもしれない。



 難しい言葉もあるが、子どもたちはじっと聞き入ってくれた。これも原作と違うとはいえ、賢治のもつ世界観のようなものが惹き付けているか。二作とも紙芝居装置のもつ「結界」の設定、演劇性に触れた気がする。長野ヒデ子氏は「体に響く」という表現をしているが、絵本より自分の声を自分で聴ける気がした。




 最後に「おまけ」という形で、谷川俊太郎・作、元永定正・絵の『ココロのヒカリ』を読み聞かせた。あの名作絵本『もこ もこもこ』と同一コンビの作だがあまり知られてはいないようだ。単純明快なデザインの絵に、子どもたちが見入っている様子が伝わってきた。さすがと思わざるを得ない。絵本の力を感じた。

絵本で、幸せと自由と

2024年11月07日 | 絵本
 先月末からこども園で読み聞かせていたのは、今の時期に合わせ『りんごがドスーン』。これはやや幼少児向けであろうが、大きなリンゴがドスーンと落ちてきて、みんながそれを食べて幸せになる、そして雨宿りまでするという、単純明快な「幸せ」のストーリーこそ、繰り返し話して聞かせたい本だという気がする。



 何かモノを持ち込んで生かしてみたい思った。今回は、少し大きめのリンゴを用意していく。一個しかないので「食べたあい」という声には応えられないが、「これは触ると幸せになるリンゴだよ」と言って、最後に全員にタッチさせた。家で食べる時でもちょっとだけ思い出してくれれば、こちらとしてはそれが幸せ。


 もう一つの大型絵本は『ゆうたはともだち』。「ゆうたくんちのいばりいぬ」というシリーズの初作品で発刊は1988年だ。これはビックブックにすると、犬の「おこり顔」に迫力がでる。短い言葉で伝えていく形だが、なんといっても視点人物(話者)が犬なので、それがユニークで子どもたちも惹き込まれるようだ。



 年中児学級では、冒頭「オマエって言っちゃあダメなんだよ」と指摘される。もちろん笑顔でスルーし進める。親しみやぶつかり合いのある関係の呼称は自由になる時があるよ。でも、どこかの国の選挙運動のように罵倒しあわなければ決着がつかないのは「自由」というのか。人を傷つける「幸せ」は悲しいだけだ。

とぶことが、生命力

2024年10月29日 | 絵本
 先月末日に読み始め、今月5回つまり6回も取り上げた絵本がある。名作『とべ バッタ』(田島征三 偕成社)だ。秋の定番の一つと言っていいだろう。どこの教室でも、この本を出すと「知ってる」と声を上げる子がいた。しかしそう言った子も含めて、どこでもじいっと絵を見入り、聴き入ってくれる時間が続いた。



 4つのこども園では大型絵本を用いた。著者の絵の迫力を存分に伝えるにはふさわしい。改めてふりかえると、題名の「とべ」には2種類の意味が込められている。最初は、周囲の捕食動物たちの恐怖に負けず、思い切って「跳ぶ」。もう一つは、落下しながら羽根の存在に気づき、それを使って「飛ぶ」ということだ。



 「跳ぶ」は逃げるため、渾身の力を振り絞る。それに目的地はなく、ただ「たかく のぼりつめ」限界をむかえる。しかし、落ちる過程で知った自らの新たな能力の「飛ぶ」は、どんなにみっともなくとも「じぶんの ゆきたいほうへ」行けるのである。「あれちをこえて」着いた、はるか向こうにハッピーエンドがあった。


 シンプルな展開の中に強く伝わってくるのは、やはり「生命力」。これは田島作品に共通する。昨年から読んでいる『つかまえた』も同様だ。この星を征服したような気になっているヒトという種が、実は失いかけているその力は、やはり自然の動植物の中に溢れている。その輝き、煌めき、囁きにもっと目を向けたい。

怖さ?は心惹きつける

2024年09月05日 | 絵本
 「怖い」絵本をテーマに考えてのこども園読み聞かせ選書だったが、結局それなりになってしまった。子どもの怖がる対象は様々だろうし、まして個々の心もそれぞれだから…と諦めて、評判の高い本や名作を中心に選んでみた。切りだしは、以前語って面白かった仕掛け絵本。やはりこうした動きがあるのはウケる。



 近づいてくるおおかみを、ページめくりを利用して阻止しようとするが、なかなかしぶとい奴で、最後に直前まで迫られ…という展開。どこでも人気が高く、最後の園ではリクエストに応えてもう一度演じた。注意しなければいけないのは、スムーズにページをめくること。手の巧緻性が落ちてきたかなあとやや不安(笑)


 続いて大型絵本で2冊を読む。『へんしんオバケ』『へんしんトンネル』。これは後者の方が評判はいいのだが、実は「オバケ」からの続きパターンになっている。だから2冊重ねて提示し、終わったらすぐ「トンネル」に移る箇所が、子どもたちには新鮮に思えたようだ。どの園でも、声が出て楽しい雰囲気になる。




 モニターを使って大きく紹介する絵本の一冊目は『おそろしいよる』。これは小学校低学年でも読んだときがあり、なかなか素敵だ。暗くなり、怖い者が近づいてくる場面では、声の調子で雰囲気を出せる。そして最後のオチも鮮やかである。「結局、一番こわいのはママだっていう話だよね」というまとめも定番になった。




 最後は『もりのおばけ』という、やや古典的な絵本。兄弟でかけっこ競争し、早く着いた兄が森の中でおばけに追われる。シンプルな筋、モノクロトーンの画と一見地味に思えるが、「この本が好き」と声を出してくれるこどもが結構いた。怖い気持ちかどうかは別に、心を惹きつける要素が盛り込まれているはずだ。



よし「想像の海へ」行こう

2024年08月04日 | 絵本

 小学校高学年で語った『海は広いね、おじいちゃん』を、やっぱりこども園でもやってみることにした。でも最初からそれでは唐突かなと思い、同じ五味太郎作の『うみのむこうは』を、その前に持ってくる構成を考えた。これは海辺でいろいろ想像するスタンダードなつくりで、今の時期にはふさわしいと思った。

 二つのこども園で語ったが、『海は広~』を小学生用にPPTを作ってあり『うみの~』もPPT化し続けてみた。モニターで行うメリットを考え、海辺の動画映像をちょっとだけ入れた。この流れはいいと思ったが、重くなったのか少し動かない時間があったりで…、残り二つの園はやはりアナログだけでやるかな。

 

 

 夏にふさわしい大型絵本を二つ持ち込んだ。一つは『ありとすいか』。これは大きい版だと実に迫力があって、楽しい一冊だ。すいかを食べる場面もそうだが、ありの巣全体の絵が二場面描かれていて、これがまた実に興味が惹かれる。最後に食べきったすいかを、ウォーターシュート(すべり台)にする発想にも夢がある。

 

 

 もう一つは夏の定番といってもいい『うみきりん』。これは小学校低学年で読んだ時もあり、もう何度か語っている。スケールが大きい話なので、いつも見入ってくれる。大雨の影響で、秋田の海は流木が多いそうだが、子どもたちはこの夏、海へ一回でも行っただろうか。必ずそんなことを訊きながら始めているが…。

 

 子どものうちは、毎年一度は海で「ヤバッチイ」(笑)経験をしてほしいと思っている。しかし家庭環境によってずいぶん違いがあるだろう。絵本爺としては、行けても行けなくても「想像の海」へ聴く子たちを誘わねば…。そのために読みの工夫はもちろんだが、他に何かないか…そうか、今思いついたぞ!!報告はいずれ。


盆地男、「海」を語る

2024年07月13日 | 絵本
 今月の学校読み聞かせは2校で、5年生そして高学年(5,6年)だった。期日も近いので同じラインナップにした。季節に合わせ、来週月曜は「海の日」ということでテーマは「海」。盆地に住んでいるので、「海の近くに住んでみたいなと思っている人はいないかな」と問いかけてみた。そしたら、意外にもほんの一握り。


 「どうして?」と訊くと「津波が怖い」という声が…。気持ちはわかるが、ちょっと複雑だ。軽く受け流し、さっそく一冊目を読む。これは「お誕生月おめでとう」と添えられている絵本シリーズであり、7月は『うみ』(文・中川ひろたか 絵・はたこうしろう)。「おかあさんの おなか」と切り出す詩的な文章である。



 「海」という漢字、フランス語で海と母は同じ言い方をすることなどが記されて、後半は少年が海へ入り、ぷわりと浮かんでお日様に話しかける場面で括る。実に雰囲気のある話だった。これは低学年から中学生まで、その段階に応じた受け止め方をしてくれるのではないかな。このお誕生月シリーズは、いい企画だな。



 二冊目は『海は広いね、おじいちゃん』(五味太郎)。これは絵本ナビで見つけて、思わず中古本を買ってしまった。結局到着が間に合わないと察して、隣市図書館から借りてきたが…。五味らしいユーモアにあふれている。こども園でも読めそうな一冊だが、ちょっとした仕掛けもあり、その点を触れると反応もよかった。




 最後は『海のおっちゃんになったぼく』。これは一昨年に読んだお気に入りの一冊だ。これは一種のファンタジーで、内容からすると、やはり高学年に合っていたようだ。関西弁の語りは自己流だが、これも一つのハードルだろう。「海」であれ「関西弁」であれ、どちらからも遠く離れた盆地男には、良き負荷になる。


梅雨時の絵本読み

2024年07月03日 | 絵本
 2月末に書いてから「絵本」そのものを取り上げたメモはなかった。しかし、読み聞かせはこども園、小学校で5月当初から始めていて、記録を残す余裕がなく新規の取り上げが少なかったことが原因だろう。同じ本を選んでも今の様子を残しておくことは大切なので、随時記しておき見直していく。


 こども園は自分なりのクールを決めていて、今日が最初の終了日。今回四か所で続けたのは、次のラインナップだ。大型絵本の『ドアがあいて…』『にゃーご』、そしてPPT化した本は『こどもかいぎ』『カ、どこいった?』。内容、ジャンルともまちまちで、子によって好みが違う。歓声は『カ、どこ~』が多く、鉄板だ。


 

 幼い子向けのようだが『ドアがあいて…』は良くできている絵本だと思う。舞台が固定されている。病院の待合室に一人ずつ入っていくという、一種の不安を暗い色遣いの場面で表しつつ、「患者」が出てくるときのユーモラスな表現では安堵感を漂わせる。最後にどうなるか、声でじっくり惹きつける技も要求される。


 

 『こどもかいぎ』…最初に「会議って、知ってる」と問いかける。年長だと「話すること」程度は言える子がいる。この会議が「おこられた時はどうするか」という「お題」なのが子どもに寄り添っているし、登場する子どもの反応から親の様子も描かれていて楽しい。こんな形で、ふだんの生活を考えることも大切だ。


 こども園読み聞かせも三年目。今年は図書館事業という形でなく、完全にボランティアだが、コナレテきているかなと感じる。まだ「館長さん」と呼んでくれる子もいて、「いや、私は…」と否定しつつも、何か別の名称(愛称?!)が必要かと思ってはいるが、絵本爺さんではあまりに昭和な気(笑)がして…決めかねる日々。

絵本、ひとまずの振り返り

2024年02月29日 | 絵本
 こども園の読み聞かせは昨日で2月分を無事終了した。まだ様々な感染が出ているなかで、やや心配な面もありつつ実施できている。残すは来月4回、楽しみである。小学校の方は先週で終わったこととなる。この後、春休みがどうなるかわからないので、ひとまず今年度の振り返りをしてみたいとリストを開いた。



 5月から2月までほぼ月2回ペースの訪問である。11月が自己都合と学校側の事情で中止になった。新規に一つ入れてもらったので実施は計16回。取り上げた絵本は29冊であった。訪問校が違っても同学年、近似学年だと同じ本を取り上げることも多い。集団によって違う反応を見せるときもあり、そこも面白い。


 今振り返って印象的な何冊かを挙げてみよう。低学年では『てんてんきょうだい』のアイデアが抜群だった。『ダンデライオン』という古い本も読みがいのある一冊で初夏にちょうどよかった。一度しか機会がなかったが『2ひきのカエル』は洋風落語のようで、勝手にキャラクタータイプと決めている自分にはあった。


 その意味では明らかにナレータータイプが読むにふさわしい『星に伝えて』を読み切ったのは、いい収穫の一つかもしれない。練習の回数も含めて今年度に最も読み応えがあったのはこの一冊か。こども園で扱った同作者の『ふゆのはなさいた』も、読み手として「力」のいる本だった。文章に込もる思いが伝わる。


 もう一冊、印象的なのは『つかまえた』。中学年を中心に三度読んだが、独特の絵に短く端的な言葉が重なって、迫力ある展開が子どもたちの目を惹きつけたことを覚えている。作者の絵本は他にも多いが、集団への読み聞かせとして伝えにくく感じる面もありためらうことが多かった。他にもっとないか探してみたい。