高野秀行は酒飲みである。休肝日はまだない。…のだそうだ。そんな人間が酒の許されないイスラムの国々を訪問したらどうなるか。禁断症状でのた打ち回るのだろうか。
わざわざ火中に飛び込むところが著者(高野)の真骨頂である。本書に掲載された訪問先はカタール、パキスタン&アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、トルコ、シリア、ソマリランド、バングラデシュ。勿論それらの国々でも、外国人御用達のホテルやレストランへ行けば酒は飲めるケースが多い。だが著者が求めるのは、青空屋台であり新宿ゴールデン街であり、要は現地の人に混じって現地で造られた酒だという。これはハードルが高いことが容易に察せられる。
公式には禁じられているものを飲もうと言うのだから、入手からして困難である。想像してみよ、日本でご禁制の拳銃射撃をしたいと言ったり麻薬を吸いたいと言ったり、公の場では口にするのも憚られるのではないか。ではどうするか。ホテルのボーイにこっそり訊く、タクシーやリキシャの運ちゃんに尋ねる、等々。自分にとって本書の面白いところは、実際に飲んだ酒の種類や味ではなく、著者のこうした馬鹿馬鹿しく注力するその過程である。探検レポートなんて大体が、到達した場所のことよりそこに至るまでの艱難辛苦に重きが置かれるであろう。
ほぼ総ての人々にとっては馬鹿げた本書における著者の行為は、考えてみれば著者らしく見事な探検レポートなのであった。絶対に真似しようと思わないが。
2020年6月14日 自宅にて読了
わざわざ火中に飛び込むところが著者(高野)の真骨頂である。本書に掲載された訪問先はカタール、パキスタン&アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、トルコ、シリア、ソマリランド、バングラデシュ。勿論それらの国々でも、外国人御用達のホテルやレストランへ行けば酒は飲めるケースが多い。だが著者が求めるのは、青空屋台であり新宿ゴールデン街であり、要は現地の人に混じって現地で造られた酒だという。これはハードルが高いことが容易に察せられる。
公式には禁じられているものを飲もうと言うのだから、入手からして困難である。想像してみよ、日本でご禁制の拳銃射撃をしたいと言ったり麻薬を吸いたいと言ったり、公の場では口にするのも憚られるのではないか。ではどうするか。ホテルのボーイにこっそり訊く、タクシーやリキシャの運ちゃんに尋ねる、等々。自分にとって本書の面白いところは、実際に飲んだ酒の種類や味ではなく、著者のこうした馬鹿馬鹿しく注力するその過程である。探検レポートなんて大体が、到達した場所のことよりそこに至るまでの艱難辛苦に重きが置かれるであろう。
ほぼ総ての人々にとっては馬鹿げた本書における著者の行為は、考えてみれば著者らしく見事な探検レポートなのであった。絶対に真似しようと思わないが。
2020年6月14日 自宅にて読了