少し前に読み、旅先の徳島で偶然その記念館に立ち寄った故賀川豊彦氏の評伝。あまり人物伝は読まないのだけど、たまたま図書館で出会ったので借りてみた。
評伝を纏めるのは難しいと思うが、客観的な経歴、著書からの引用、作者の見解と3つの角度からの記述が良いバランスで収められているように感じた。
自分は賀川豊彦を、スラム街に飛び込んで内部から生活レベル底上げそして布教に尽力した人物としてしか捉えていなかったのだが、本書を読んでそこから次第に労働運動、農村運動へとシフトしてゆく経過と事情について知ることができた。変節と呼ぶのか不本意な翻意と見るのか、なかなか難しい。間違いなく言えるのは、氏の情熱と行動力は並ならぬものであり、余人の追随を許さなかったということ。ここは意見や主義主張の違いを超えて、誰もが脱帽せざるを得ないと思う。なるほど、海外で「カガワ、ガンジー、シュヴァイツァー」と称されただけのことはある。
2023年12月10日 自宅にて読了