クルーズ客船の乗客対応をしていると、本当に降りてくる外国人の多いことに驚かされる。1隻1回に2,000人以上、その8割か9割は外国のお客様と言う感じ。インバウンドと言う言葉が本当に身近に感じられる。だからと言うわけではないが、Covid-19渦も下火になり訪日客が回復基調というニュースを聞くたびに気になっていたテーマの本を読んだ。
観光公害と言う言葉が的を得ているか判らないが、ある土地・地域に観光客が押し寄せた結果、地元の人々の生活にさまざまな悪影響を及ぼす状況を指す。日本で言えば京都市内の寺社、大阪や金沢の市場、ニセコ町など。個々の状況についてここでは記さないが、すでに新聞等で何度も報道されている。
そうした悪影響は、日本に限らず世界中の著名な観光地で起きており、本書ではそれらの例と対策についても調査し述べられている。
住民の生活は守りたいが、自治体の収入は多くを観光客に由来するとなると「悪即斬」すなわち「観光客ノーサンキュー」と言えないから困る。場所ごとに条件が異なるため解は一つではなく、幾つものアイデアを組み合わせなければ効果は得られない。そういう状況なので、観光客誘致に向けたインフラ整備など、むしろ行わない方が抑制効果があると言うのも皮肉な話。
あちこち旅行している身としては若干耳が痛い部分もあったが、内容は一々頷けるものだった。
2023年11月5日 アルバイト帰りの電車にて読了