完成度が高い、見事。
人物造形も、心理描写も、秀逸。
実は、この著者の作品を読むの、初めて。
面白いかなぁ、と思って読み始めたけど、大当たり。
技術的にも素晴らしいけど、それ以上のものを感じた。
どこにでもいるような人物を描いているんだけど、紋切り型になっていない。
やはり描写力、演出の力か?
例えば、石橋佳乃、保険会社勤務。
計算高く、相手によって態度、演出を変える。
次のように表現している。
正直、この手の女は苦手だった。何かを待っているくせに、何も待っていないふりをして、待っているだけのように見せかけて、その実、様々なものを要求してくる。
保険の外交員をしながら小金を貯めて、休日にはブランドショップの鏡に映る自分を眺める。本当の自分は・・・・・・、本当の自分は・・・・・・、というのが口癖で、三年も働けば、思い描いていた本当の自分が、実は本当の自分なんかじゃなかったことにやっと気がつく。あとは自分の人生投げ出して、どうにか見つけ出した男に、それを丸投げ。丸投げされても男は困る。私の人生どうしてくれる?今度はそれが口癖になり、徐々につのる旦那への不満と反比例して、子どもへの期待だけが膨らんでいく。公園では他の母親と競い合い、いつしか仲良しグループを作っては、誰かの悪口。自分では気づいていないが、仲間だけで身を寄せ合って、気に入らない誰かの悪口を言っているその姿は、中学、高校、短大と、ずっと過ごしてきた自分の姿とまるで同じ。(P239)
どうでしょうか?
上記文章を読んで、最低な女、と思われるだろうが、ことさら特別な女性ではない。
このタイプ、日本全国津々浦々広範囲にわたって棲息している、と思われる。
さて、問題はここから、である。
そこに、より最低な男が登場する。
様々な人間が出会うことによって、どのような化学反応が起こるのか?
殺人事件が起こるが、不可抗力だったのか?
最後の逃避行の章なんて、全く展開が読めなかった。
いったいどうなるんだ?、と思って読んだ。
彼は本当に「悪人」なのか?
何が「悪」だったのか?
登場する全ての人たちを丁寧に描いていく。
被害者と加害者の家族、両面から描かれ、それが実に見事なリアリティ。
また、老人達の描かれ方が素晴らしい・・・特に、加害者の祖母・房枝。(P400-404)
さらに、被害者の両親・佳男と里子の描写。(P400)
そして、光代は・・・これからどう生きるのか?
後味が良い、悪い、のレベルを超えたエンディング、である。
【ネット上の紹介】
なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう――携帯サイトで知り合った女性を殺害した一人の男。再び彼は別の女性と共に逃避行に及ぶ。二人は互いの姿に何を見たのか? 残された家族や友人たちの思い、そして、揺れ動く二人の純愛劇。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。
(↑映画化もされた、文庫本にもなった、上下2冊)
【映像編】楽しんでもらえたでしょうか?
今日、少し画像を追加しました。
前編:24枚→34枚
後編:37枚→39枚
よかったら、見て下さい。
今日、少し画像を追加しました。
前編:24枚→34枚
後編:37枚→39枚
よかったら、見て下さい。