図書館戦争シリーズ 2「図書館内乱」有川浩
シリーズ2巻目、本当に面白くなるのはここからだ!
1作目では、脇役として控えていた人々にスポットライトがあたった。
これで作品に奥行きと深みが出た。
私が好きなのは第二章。
毬江が登場して、小牧が中心に語られる章、である。
小牧と周囲の思惑、駆け引き、プライド、思い入れがぶつかる。
いつも笑い上戸で飄々と正論を語る小牧。
この時ばかりは、必死になった。
・・・毬江を護るために。
しかし、毬江はそれ以上に強かった。(以下P139-141)
「聾唖者って誰のことですか?」
毬江がすかさず切り込む。これだけはっきりと日本語を操る毬江は、少なくとも聾唖の定義に当てはまらない。
「いや、それは聾者と言い間違えて」
くぐもった声が毬江には聞き取れなかったらしい。付き添っていた柴崎が持っていた手帳にその台詞を書いて見せ、
「聾者って誰のことですか?」
読み終わるや毬江がまた突っ込む。
「みなさんは聾者と中途失聴者と難聴者の区別もついてないのに、どうして私がその障害者として差別されたと分かるんですか?」
(中略)
「障害を持っていたら物語の中でヒロインになる権利もないんですか?私みたいな女の子が恋愛小説の主役になったらおかしいんですか?私に難聴者が出てくる本を勧めるのが酷いなんて、すごい難癖。差別をわざわざ探してるみたい。そんなに差別が好きなの?」
ああ――何て強くなったんだろうね、君は。毬江の声を聴きながら小牧は目を閉じた。
小牧だけでなく、柴崎や手塚もスポットライトをあびて背景や心情が語られる。
柴崎が情報通だったが、その理由も語られる。
ああ、そうだったのか!、と納得。
情報に命を賭ける柴崎だけど、そのプライオリティを翻す瞬間があった。
私はそのシーンが好き。
朝比奈とのパイプを切って捨てる瞬間だ。(P363)
「謝っても取り返しはつきませんか?検閲のない社会を一緒に作れたらと思っていました」
「残念ながら、あんたたちあたしの逆鱗に触れたのよ」
周りを語ることによって、笠原にも深みが出てきた。
1作目では、堂上も笠原も体育会系ノリなので、心理描写になると、イマイチもの足りない。
(アクション・シーンは良いんだけど)
2巻目になって、内容濃くなった、ホント、よくなった。
【ネット上の紹介】
図書隊の中でも最も危険な任務を負う防衛隊員として、日々訓練に励む郁は、中澤毬江という耳の不自由な女の子と出会う。毬江は小さいころから面倒を見てもらっていた図書隊の教官・小牧に、密かな想いを寄せていた。そんな時、検閲機関である良化隊が、郁が勤務する図書館を襲撃、いわれのない罪で小牧を連行していく―かくして郁と図書隊の小牧奪還作戦が発動した!?書き下ろしも収録の本と恋のエンタテインメント第2弾。