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「人生オークション」原田ひ香

2012年02月07日 21時43分58秒 | 読書(小説/日本)

 
「人生オークション」原田ひ香

読みやすい作品、あっとゆうまに読了。
中編が2作収録されている。

●「人生オークション」
●「あめよび」

最初の作品はタイトルにもなっている。
犯罪者一歩手前の叔母と姪の交流が描かれる。
叔母は、かつて不倫の果てに刃傷沙汰に及んで、夫から離縁される。
アパートにひとり暮らしだけど、そこに姪が訪ねてくるところから物語りが始まる。
この姪も就職が決まらず、アルバイト状態。
二人揃ってモラトリアムだけど、明るい未来が見えない。
部屋の中には、かつて叔母が夫に買ってもらった大量のブランド品があった。
それをネットオークションにかけていくことで、自分を取り戻していく、って話。
(だから「人生オークション」とタイトルになっている) 

もうひとつは、ちょっと風変わりな恋愛小説で若いカップルの顛末が描かれる。
「諱」を扱っているのが興味深い。
一部文章を紹介する。

P164
「いみな?」権堂は顔を上げて聞き返した。
「ええ、諱。本名以外の本当の名前という意味なんですって。他人には教えちゃいけない、秘密の名前らしいんですけど、そういう風習が残っている場所があるらしいんですよ」
P169
「あとね、私、ゴリちゃんの話を聞いて、思い出したことがあったの。昔読んだ童話なんだけど」美子は輝男の顔をうかがった。

勘がいい人は、もう分かったと思うけど、その「童話」とは、「グリム」の「ルンペルシュティルツヒェン(Rumpelstilzchen)」のこと。読んでいて、私も思わず「グリムやんけ!」と(心の中で)叫んだ。
「諱」と「グリム」のカップリングには、唸らざるを得ない。
故に、中編2編とも楽しめたけど、後の方が私の好みである。

【参考リンク】
原田ひ香『人生オークション』 (01/29)

【ネット上の紹介】
不倫の果てに刃傷沙汰に及んでしまい、謹慎中のりり子叔母さん。就職が決まらずアルバイトをする私は、気分転換にと、一人暮らしを始めた叔母の様子を見に行くことに。そこで目にしたのは、トラック一台分はある、大量のダンボール。処分に困った二人はそんな「お荷物な過去」をせっせとオークションにかけてゆくが…。“欲しいもの”を手放していく叔母と、“欲しいものが欲しい”私。世代も生き方も異なる二人を鮮やかに描く、ちょっとしたご縁のハナシ。

【関連リンク】
ルンペルシュティルツヒェン (Rumpelstilzchen)
・・・ちなみに、上記ウィキペディアの【関連項目】に「西の善き魔女」があがっている。(さすがウィキペディア、すばらしい!)
 

 
私は、「西の善き魔女」をハードカバーで読んだけど、文庫版も出ている。

(中公文庫版)