「ジェノサイド」高野和明
人気の本を読んだ。
2011年「このミス」でも「文春ミステリ」でも1位。
昨年ダントツ人気、話題の作品。
読みごたえがあった。1位の値打ちがある。
さて、内容はSF+冒険+政治+医療+ミステリ要素の混在した作品。
人類の危機をリアルに描いている。
3部構成になっていて、第2部から面白さのレベルが上がってくる。
第1部は、伏線段階なので、少し辛抱が必要。
第2部で、一気に面白さ上昇。
第3部は、収斂部分、エンディングも見事。
これは読む価値がある大作、と思う。
文章を一部紹介する。
なぜか、私はストーリー本流部分とは異なる箇所に興味を持った。
P312
「(前略)韓国人と日本人で何か違うところはある?」
(中略)
「一つ挙げると」と言って、正勲の視線が研人に戻った。「僕たち韓国人だけが見つけた、特別な感情があるんだ。これはアメリカ人も、中国人も、日本人も知らない不思議な心の動きだよ。韓国語で“ジョン”っていうんだ」
「 “ジョン” ?」
「うん。漢字だと、情(なさけ)って書く」
「それなら日本人にもあるよ。情(じょう)だろう?」
「いやいや、日本語の情とは違うんだ。説明が難しいな」
研人は好奇心をそそられた。「そこを何とか説明できない?」
「無理に説明すると、人と人を結びつけてしまう強い力だよ。僕たちは、一度でも関わった相手とは、好き嫌いとは関係なく、 “ジョン” で結びついてしまうんだ」
「それは友好的とか博愛ってこと?」
「そんなに美しいものじゃない。 “ジョン” は厄介でもあるんだ。どんなに嫌な相手とも “ジョン” で繋がってしまうから。つまり僕たちは、他人を百パーセント拒絶することができないんだ。韓国映画とかテレビドラマは、ほとんど全部、この “ジョン” を描いているよ」
PS
上記の韓国人留学生・正勲が大活躍。
キャラクター好感度も高い。
主人公の1人である日本人・研人を食ってる感じ。(研人、少し影が薄いぞ!)
【参考リンク】
『週刊文春 傑作ミステリーベスト10』
『このミステリーがすごい!』
【ネット上の紹介】
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。