「困ってるひと」大野更紗
2012年キノベス第4位に選ばれた人気作品。
難病を発症、その闘病生活、感じたことを書き綴ったエッセイ。
著者のブログProfile紹介欄を見ると、次のように紹介されている。
作家&大学院生 ●ビルマ(ミャンマー)のことをやってたものの、2008年から自己免疫疾患系の難病にかかり闘病中。皮膚筋炎、筋膜炎脂肪織炎症候群。シェーグレン、 SLE的病態もあり。絶賛生存中。
さて、具体的にどのような症状かというと、次のように書かれている。
P288
筋力はないし、独力では自由に外に出られないし、免疫力も体力もない。ジャムの瓶やペットボトルのふたを、自分で開けることもできない。紫外線を浴びられない。常に感染症や怪我に細心の注意をはらう。皮膚や身体の組織も弱っているので、洗剤などに直接触れられない。
・・・なんとも大変な状態。我々が普通にしている行動が出来ないのは辛い、と思う。
いくつか福祉や行政につての具体的な記述もあって興味深い。
P183
結果、自治体の対応やサービスの内容について、東京都内の23区、市によってかなりの較差があることがわかった。都道府県をまたげば、相当の、天と地のような較差がある。
東北の某所から来ている患者さんに聞いたところ、
「わたしは2級の手帳を持っているが、『タクシー券』など、聞いたこともない」
杉並区某所から来ている患者さんに聞いたところ、
「わたしは手帳なんて取れないけど、特定疾患(難病)でタクシー券もらってるよ」
群馬県某所から来ている患者さんに聞いたところ、
「3級の手帳持ってるけど、ETCの割引以外使えるものないけど」
神奈川県某所から来ている患者さんに聞いたところ、
「わたしはもう死にかけてるけど、ヘルパーさんどころか、窓口で『有料老人ホームに行ってください』、と言われたわよ」
某区から来ている患者さんに聞いたところ、
「もう2度と、区役所なんか行かない。わたしは死んでも国には頼りたくない」
インタビューする人によって言うことがまったく違う。いったい、どういうことなんだ。
以上、文章紹介おわり。
上智大学大学院在学中の発症。
それ故か、文章が少しエキセントリックだけど、それさえ気にしなければ、楽しめる。
死にそうになりながら、自分自身とその状況を笑い飛ばせるユーモアに脱帽。
【著者のブログ】
http://wsary.blogspot.com/
【ネット上の紹介】
ある日、原因不明の難病を発症した、大学院生女子の、冒険、恋、闘い―。知性とユーモアがほとばしる、命がけエッセイ。