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「日本の路地を旅する」上原善広

2013年08月10日 21時18分10秒 | 読書(ノンフィクション)

「日本の路地を旅する」上原善広

同和問題がテーマ、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品。
中上健次氏は、被差別を「路地」と呼んだ。
タイトル通り、著者は日本各地の「路地」を探訪する。
歴史を掘り起こしながらの紀行文。
声高に差別を糾弾する作品ではない。
静かに、学術的に、それも抒情を交えながら展開していく。

P119
ヒンドゥー教徒は牛を神聖視しているため、現在でもネパール人は牛肉を食べない。しかし江戸時代の日本と同じく、ネパールではサルキと呼ばれるアウトカーストの者たちと、一部の上位カーストの者たちだけは現在も食べている。地方のサルキは死牛馬が出たときに食べているが、上位カーストのエリート層たちは、出張で外国に出たときなどに食べている。昔から「支配層に法律なし」と云われるが、これは古今東西、同じだろう。

P129
路地はだいたい「解放運動が盛んな地域」、「寝た子を起こすなの地域」に大別されるが、近江の路地は全般的に寝た子を起こすなの傾向が強いと評される。
「地元の人がこっちではとかとは言わないでくれっていうから、では何て言うんですかと訊いたら、『指定地区と言うて欲しい』って言われて、ここまで隠すんやなあってびっくりした」

P134
例えば江戸時代に、若い男女が駆け落ちして心中し、一方が生き残ることがある。この生き残った者はに落とされ、路地に追放される。しかし、何年かたちと住み、の仕事を手伝うと、百姓や町民に戻ることが許された。

【ネット上の紹介】
中上健次はそこを「路地」と呼んだ。「路地」とは被差別のことである。自らの出身地である大阪・更池を出発点に、日本の「路地」を訪ね歩くその旅は、いつしか、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れていった実兄との幼き日の切ない思い出を確認する旅に。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。