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「相剋の森」熊谷達也

2014年06月11日 22時01分13秒 | 読書(小説/日本)


「相剋の森」熊谷達也

5月2日、「邂逅の森」を紹介した。→「邂逅の森」熊谷達也
本作品は、同じシリーズ、関連作品。
但し、時代は異なり、現代のマタギを描いている。
つまり、「森」シリーズ現代編、である。
「邂逅の森」の主人公の子孫が登場する。
これには驚いた。

編集者・美佐子、現代のマタギ・滝沢、写真家・吉本を中心に物語は展開する。
「山は半分殺してちょうどいい」、という言葉はどういう意味なのか?
この作品の中心テーマとなっている。
ここからネタバレ有りなのでご注意。
いくつか、文章を紹介する。

P197
「俺家でもそうだったのさ。鉄太郎というのが俺の祖父さんだったんだが、女房に貰ったやゑさん、つまり祖母ちゃんだな。実際にあの峰を越えて嫁に来たんだそうだ」
(中略)
「八久和――ですか」
「そう、大鳥より少し月山寄りの村なんだけどね、今はなくなってるな」
「なくなってる?」
「ダムの底に沈んだのさ。(後略)」

P262-265
P197もそうだけど、P262から始まる文章を読んで興奮した。
自分のルーツを探る箇所である。
おお、ってな感じ。
ホント、驚いた。
(もちろん、「邂逅の森」を先に読んでいないと、驚くことは出来ない)

P244
真夏の時期、たいていのクマは、湿った沢筋にセリ科の植物を採食していることが多い。それを知らない都会のキャンパーやハイカーたちは、夏のハイキングで好んで沢筋を歩いたりテントを張ったりするが、クマの巣に自分から踏みこんでいるようようなものだ。
(そういえば夏は、尾根道より涼しい沢筋を歩くことが多い)

P374
「癒やしを求めて自然に触れるといっても、彼らの多くは、ほんとうに自然に触れようとしてるわけじゃない。自分に都合のよい居心地のよさを求めているだけでしてね、最近のキャンプ場の様子を見てみれば一目瞭然だ。なんでキャンプ場にコンセントやシャワーが必要なんですかねえ。(後略)」
(最近のキャンプ場は電子レンジも使えるぞ!シャワーは、縦走は仕方ないが、クライミングの場合、ありがたい)

P455
列の最後尾から再び登攀を開始した。
樋口明雄さんも本作品の熊谷達也さんも、急登やきつい登りに『登攀』の言葉を使う傾向があるようだ。岩以外の登りで、この言葉を使うのに、私は違和感を感じる)

【ネット上の紹介】
直木賞受賞作に連なる「森」シリーズ現代編。編集者・美佐子は「山は半分殺してちょうどいい」というマタギの言葉に衝撃を受ける。人はなぜ他の生き物を殺すのか? 自然との共生とは? 著者渾身の「森」シリーズ現代編。(解説/赤坂憲雄)