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「かたづの!」中島京子

2015年02月13日 23時09分18秒 | 読書(小説/日本)


「かたづの!」中島京子

とても面白かった。
中島京子さんの時代小説。
しかも、ファンタジー。
とは言え、控えめなファンタジーで、前面に出ている訳じゃない。
とても自然な感じて、物語は進んでいく。

東北の女大名、八戸南部氏・直政の妻・祢々の一代記。
叔父の南部藩主・利直の謀略により、次々に苦難が襲いかかる。
夫と嫡男を殺され、さらに無理難題を押しつけられる。
男たちは「もう戦しかない」と言い張るが・・・。

P38
「ねえ、片角。女の一生ってなんだと思う」
(中略)
「嫁ぐ。産む。嫁ぐ。産む。あとはせいぜい、出家する、自害する、くらいか。そうね、出家と自害だけは、女が自分の意志でできることかもかもしれない。もちろん、尼になれ、死ね、と言われて意志に反してすることもあるけど。おっと忘れていた。殺されるというのもあった。大きな選択だが、選ぶのはこれも本人ではない。おまえも字が読めたら『源氏物語』を読むべきよ。あの色惚けの光源氏に手を出されるとろくなことがない。最後はたいてい出家か変死だ。おっとりした平安朝ですらそうだったのだし、乱世では尚更。嫁ぐ。人によっては何度も何度も嫁ぐ。産む。何度も何度も産む。あっちで産み、こっちで産む。それが嫌なら、あるいはできなくなったら、出家する。(後略)

タイトル「かたづの」とは、「片角」のこと。
祢々は角が1本しかないカモシカと仲良くなる。
このカモシカが死んだ後も、祢々を守ってくれる。
さらに、河童も登場し、舞台も遠野に移動する。

中島京子作品は、今まで何冊も読んできたが、これが一番面白い。
「小さいおうち」よりよかった。
代表作のひとつになる、と思う。

【他の中島京子作品】

「のろのろ歩け」中島京子
「花桃実桃」中島京子
「小さいおうち」中島京子

【ネット上の紹介】
慶長五年(1600年)、角を一本しか持たない羚羊が、八戸南部氏20代当主である直政の妻・祢々と出会う。羚羊は彼女に惹かれ、両者は友情を育む。やがて羚羊は寿命で息を引き取ったものの意識は残り、祢々を手助けする一本の角―南部の秘宝・片角となる。平穏な生活を襲った、城主である夫と幼い嫡男の不審死。その影には、叔父である南部藩主・利直の謀略が絡んでいた―。次々と降りかかる困難に、彼女はいかにして立ち向かうのか。波瀾万丈の女大名一代記!