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「音わざ吹き寄せ 稽古長屋」奥山景布子

2015年02月25日 23時04分49秒 | 読書(小説/日本)


「音わざ吹き寄せ 稽古長屋」奥山景布子

これは巧い。
江戸情緒あるれる短編集。
兄・音四郎は役者だったが、大けがを負って、妹・お久と『稽古屋』の看板を掲げて生計を立てている。
その日々の生活を、丁寧に描いていく。
まるで、江戸時代にいるかのような感覚で読み進んだ。
押さえた演出も好もしい。
派手なところはないが、印象に残る渋い作品だ。
プロの職人技を感じた。
次の9編が収録されている。

「大女」
「ならのかんぬし」
「いぬぼうざき」
「はで彦」
「宵は待ち」
「鷺娘」
「菊の露」
「丙午」
「にせ絵」

ところで、「いぬぼうざき」とは何か?
“調子っぱずれ”って意味。
なぜなら犬吠埼は銚子の外れにあるから。
粋な表現、である。(P88)

いずれ、他の作品も読んでみようと思う。 

【おまけ】
東映映画のオープニング、岩に波しぶきがかかるシーン。
あれが、犬吠埼とのこと。 

【ネット上の紹介】
元吉原の北隣、長谷川町。その南側にあるお稲荷さんに通じた細道に移り住んで稽古屋の看板を掲げた音四郎とその妹お久。兄はほんの二年前まで芝居小屋に出ていた役者あがり、足に大けがを負って舞台を去り、今では隠居のように妹と暮らしている。厳しい稽古に妹は評判を案じるのだが――。「大女」「ならのかんぬし」「いぬぼうさき」「はで彦」「宵は待ち」「鷺娘」「菊の露」「丙午」「にせ絵」。弦音ひびく江戸情緒あふれる9編を収録。