「江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記」中島要
面白いだろう、と思って読んで、やはり面白かった。
中島要作品はどれも質が高い。
それぞれに趣向が凝らされ、特色がある。
本作品は、落語テイストである。
貧乏長屋に住む人たちを描いている。
住人を個性豊かに描き、エピソードもユニーク。
しかも、『落ち』もしっかりある。
一番感心したのは、駕籠かきの話『嫁入り問答』。
大晦日、駕籠かきの2人が若い娘を乗せる。
上野山下の尼寺へ行ってくれ、と。
どうやら出家したいようだ。
大和屋さんとの縁談が気にくわないから出家する、と。
仲裁で登場するのが、貧乏長屋の飲んだくれの浪人。
「嫁入りを賭けて、弥太郎さんとお花に問答をさせるだって」
「へぇ、お嬢さんが大和屋への嫁入りを嫌がるのは、亭主になるお人より自分のほうがずっと賢いと思っていなさるからだ。だったら、春明寺の庵主様立会の下、問答をしてみりゃいいと思いやして。その結果、弥太郎さんが勝てばお花さんは嫁に行く。逆に、お花さんが勝てば髪を下ろして尼になる。これでどうです」
・・・さて、いったいどうなるか?
この『落ち』がすばらしい。感心した。
【ネット上の紹介】
貧乏長屋のお初と兄の太吉。両親は、騙されて浅草の小間物屋を失い、失意のうちに亡くなった。「必ず店を買い戻そう」と固く誓う太吉が、二十両の有り金をはたいて名品“井戸の茶碗”を入手。だがそれは、真っ赤な贋物だった。弱り果てた兄妹に声をかけたのは、隣に住む赤目勘兵衛。高値で売ってやるという、酒びたりの浪人にどんな策が!?新世代の人情時代小説!