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「外道クライマー」宮城公博

2016年08月13日 20時32分43秒 | 読書(山関係)


「外道クライマー」宮城公博

沢をやる人は無謀な方が多い。
そういう印象を持っている。
沢の方が岩よりも、不確定要素が多いからかもしれない。
「無謀」という表現が悪ければ、冒険心に富んだ、と言い換えてもいい。
無謀と冒険は紙一重だから。
何%の確率で生還できたら冒険なのだろう?
その方の体力、技術力、精神力で変わってくる。
同じことをしても、個々人によって差がでる。
運も左右する。

パソコン、衛星電話、GPSの利用。
外部の気象専門家とのやりとり。
これらをどれだけ利用し、あるいは排除するのか?
現代において、冒険は条件をつけないと成立しにくい。
ある程度、こだわりが必要ということだ。
いくつか文章を紹介する。

私が笑った箇所、那智の滝を登って捕まって取り調べを受ける…P21
取り調べが終わると、指紋を採取される。大西はクライミングのしすぎで指がまっすぐに伸びないので、指紋採取で警官に無理やり手を押さえれて指を伸ばされると、
「いてっ、痛い、痛いって」
 と、悶絶していた。
(う~ん…これは痛い、当局による拷問だ!byたきやん)

P80-81
 意外に思うかもしれないが、沢登りでは脱水症状に陥りやすい。水に濡れて身体が冷えるので、水分摂取がおろそかになりがちなのだ。脱水症になると身体は水分を蓄える方向に働き、むくみはじめる。むくむと身体のキレが悪くなるし、その状態が続くと身体の不調に繋がることは明白だ。だから水分を意識的に多く取るのだが、どうしても夜に集中するので、夜中に起きて小便に行きたくなる。夜中に起きると寝不足に繋がってまたむくむという、なかなか断ち切れない悪循環に陥るのだ。私たちはこれを「小便地獄」と名付けた。

著者の感情が素直に表現されている。
自分の負の感情も、かっこ悪いところもさらけ出している。
なかなか出来ない事だ。
臨場感が伝わってくる文章だ。

さて、タイトルで「外道」と称している。
でも、私が本作を読んで感じた限りでは、
著者はクライミングの本質を突いた行動をしている、と思う。
世間がズレてしまっているのかもしれない。

【おまけ】
誤解を避けるために明記しておくが、私は神域を侵したり、法を守らなくてよい、と言ってる訳じゃない、心の持ちようの話である。

【誤植】
校正ミスを見つけた。
P131
(誤)いや、仕事を止める覚悟だと?
 ↓
(正)いや、仕事を辞める覚悟だと?

【目次】
逮捕!日本一の直瀑・那智の滝
タイのジャングル四六日間の沢登り
日本最後の地理的空白部と現代の冒険
台湾最強の渓谷チャーカンシー
二つの日本一への挑戦
沢ヤの祭典ゴルジュ感謝祭

【ネット上の紹介】
「最も野蛮で原始的な登山」と呼ばれる沢登り。那智の滝登攀による逮捕をきっかけに、日本や台湾、タイの未知の渓谷に挑む筆者と沢ヤたち。地球上に残された最後の秘境、ゴルジュに挑む壮絶なる冒険記。  

【著者略歴】
1983年愛知県春日井市生まれ。凸版印刷、福祉施設職員を経て、現在はライター、登山ガイド、NPO富士山測候所職員。ヒマラヤ、カラコルムでのアルパインクライミングから南国のジャングルでの沢登りにいたるまで初挑戦にこだわり続け、国内外で数々の初登攀記録をもっている。2009年、ヒマラヤ・キャジョリ峰北西壁への単独初挑戦。12年、那智の滝での逮捕によって七年間勤めた福祉施設を辞める。13年、立山称名滝冬期初登攀、台湾チャーカンシー初遡行、カラコルムK6西峰北西壁挑戦(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)