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「タックスヘイヴン」橘玲

2017年05月03日 10時39分31秒 | 読書(小説/日本)


「タックスヘイヴン」橘玲

先日読んだ「マネーロンダリング」が良かったので、
引き続き、本作も読んだが、前作に劣らず、面白かった。
「マネーロンダリング」では、香港を舞台に進行したが、
今回は、シンガポールを中心に韓国、タイ、ミャンマーと展開する。
シンガポールのホテルで、日本人が墜落死する。
その妻・紫帆が現地に駆けつけると、夫には現地妻と子どもがいたことが判明する。
物語の中心となるのは4人=紫帆と高校時代の友人・牧島とコバ、シンガポールの女刑事・アイリスだが、他にも個性的な脇役多数登場し、最後まで飽きさせない。
私は、前回と同等か、それ以上に楽しめた。

P48
日本の税法では、贈与を受けた側が税金を支払う。一方、アメリカの税法では税金を払うのは贈与した側だ。親が日本で子どもがアメリカにいると、日米いずれも納税義務を負う人間が非居住者になるので、結果的に、何百億贈与しても合法的に税金を一円も支払わずにすむのだ。日本法人のプライベートバンキング部門はこの“脱税指南”だけでとてつもない利益をあげ、日本人トップは巨額の報酬を得た

P223
日本国の税法は属地主義なので、原則として、日本国内に居住していなければ日本に税金を納める必要はない。だがこれではかんたんに贈与税・相続税を回避できてしまうので、2004年の租税特別措置法改正で、贈与者・授与者がともに5年以上海外に居住していなければ課税対象になることになった。(これに関しては先日読んだノンフィクション参照→「プライベートバンカー」清武英利

P67
「こちらの方がもっとわかりやすいかもしれませんね」
 それはスイスSG銀行のホームページに掲載された役員一覧で、上から三番目にエドワードが顔写真付きで紹介されていた。(この使い方は、少し違和感を感じる。日本では、ホームページとウエブサイトが、ほぼ同じ意味で用いられるが、実際は異なる。本来、ホームページはウエブサイトの表紙にあたる最初のページを指す)

P270
「そうなんや。でもなんか不安やなあ。晴美はしばらく黙ったままだった。「まあ、ええわ。わたしがいくら考えてもしゃあないし、花梨に訊いてみるわ。牧島さん、いつまで大阪におるん」(見事に大阪弁を駆使されているので感心した。ただ、ちょっと違和感を感じるのは晴美が「わたし」と言っている点。ここは、「うち」と言わせて欲しかった。実際、この後のページでは、晴美に「うち」と言わせている。ついでに言うと、最近の子どもは、アニメの影響か、標準語を話しアクセントも関東風になっている場合がある…残念なことだ)

【おまけ】
タックスヘイヴン:
「租税回避地」のこと。 外国資本&外貨獲得の為に、税金を優遇して、企業や富裕層の資産を誘致している国や地域。
tax は「税金」、 haven は「避難所」、すなわち「租税回避地」。
関連用語として「オフショア」がある。offshore「沖合」という意味。
本国以外での取引がオフショア取引。
オフショア取引が行われるのが、タックスヘイヴンというとこになる。(税金が高く、規制の多い場所で取引しても仕方ない)
…以上、本作品でにわか勉強。


【ネット上の紹介】
東南アジア最大のタックスヘイヴン、シンガポールのスイス系プライベートバンクから1000億円が消えた。日本人ファンドマネージャーは転落死、バンカーは失踪!マネーロンダリング、ODAマネー、原発輸出計画、北朝鮮の核開発、仕手株集団、暗躍する政治家とヤクザ…。名門銀行が絶対に知られてはならない秘密とは?そして、すべてを操る男は誰だ?