「永遠の旅行者」橘玲
「二十億の資産を息子ではなく孫に相続させたい。ただし一円も納税せずに」
そんな事が可能なのか?
橘玲氏の小説を読むのは、これで3作目。
「マネーロンダリング」→「タックスヘイヴン」→「永遠の旅行者」
ハワイ、日本、ニューヨークを舞台に物語が展開する。
今回も楽しめた。
P80
アメリカのグリーンカードは労働許可証のついた期間無制限のビザ(永住権)であり、市民権とは異なる。市民権は国民の生得の権利であり、国家がそれを奪うことはできないが、永住権は国家が与えた権利なので、好きなときに取り上げることができる。
P83
居住者と見なされる滞在日数は、アメリカを含む多くの国が一年の内半年程度としている。したがって、理屈のうえではすくなくとも三つの国を順番に移動すれば、どの国の居住者にもならず、どの国にも合法的に税金を納めなくてもいい立場が手に入る。これが「永遠の旅行者(Pepetual Traveler)」で、その頭文字をとってPTと呼ばれる。
P39
1人100万円を超える現金および現金等価物を国外に持ち出す場合は出国時に税関での届け出が必要とされており、TCの場合も、ほとんどの金融機関は購入金額が100万円を超えると本人確認を要求する。(以前、120万円をTCにしたけど、特にトラブルはなかった…昔はよかった?ちなみにTCとは、トラベラーズチェックの事で、2014年3月31日で販売終了。私は、いまだにフランのTCを所持しているが、ユーロになった今は、換金不可…パリの中央銀行に行ったらOKかも?)
P15
ビザ免除でアメリカに入国する場合、滞在期間は90日以内と定められており、年間の総滞在日数も180日を超えることはできない。(ESTAのことを言っている。2001年の9.11同時多発テロを契機にできた制度で、ネット上から個人情報を入力し、14ドルを払って取得しておかないと米国に入国できない。一度の滞在期間は90日だけど、さらに滞在しようとすると、問題が出て来る。即ち183日ルールである…なぜこんなことにこだわるかと言うと、以前、商業ビザを取ろうとした事があるから。マレーシアやインドネシアのビザの段取りをしたことがあるので、アメリカも大丈夫だろう、と。ところが、テロの影響か、ハードルがあった。例えば、所在地USA企業との契約書が必要。その中で、日本の技術者を米国にある会社の社員の教育のために招聘すると言った文言を明記しておく必要がある。日本にある本社との契約だと、本社と米国の会社との因果関係を証明する文書が必要。また、給料は日本の会社から支払われる必要がある…まぁ、それ以外にも色々あって、断念。客先の了解を得て、ESTAで行ってもらった。アメリカは日本人に来て欲しくないのかと頭にきた。あーあ)
→出張者の所得税の基本 ~183日ルール アメリカの個人所得税|アメリカ
→グロスアップの基礎知識 6 (滞在日数)- 給与計算アウトソーシング・委
【重要】
文庫本の解説を書かれているのが牛島信という弁護士・作家、である。
この解説を読んではいけない。
重要なネタをバラしているから。
解説から先に読む読者を想定していないのだろうか?
最低である。
【と言いながら】
と言いながら、私も本作品に関わる重要な事を書くので、未読の方はここから読まないように。
読んでいて、「シェイクスピア物語」を思い出したのだ。
戯曲のシェイクスピア作品を読みやすく「物語」にしたものである。
これを上梓したのが、メアリー・ラムとチャールズ・ラムの姉弟。
メアリー・ラムは、精神を患っていた。
発作を起こして母親を殺している。
しかしその後、メアリーは弟と一緒に「シェイクスピア物語」を執筆する。
(私の記憶では、おもにメアリーが喜劇、チャールズが悲劇を担当したと思う)
こうして、子どもを含めて多くの人たちに喜びを与えたのだ。
(チャールズは結婚を断念して姉の面倒をずっと見たそうだ)
【ネット上の紹介】
元弁護士・真鍋に、見知らぬ老人麻生から手紙が届く。「二十億の資産を息子ではなく孫に相続させたい。ただし一円も納税せずに」重態の麻生は余命わずか、息子悠介は百五十億の負債で失踪中、十六歳の孫まゆは朽ちた家に引きこもり、不審人物が跋扈する。そのとき、かつてシベリア抑留者だった麻生に殺人疑惑が浮上した―。