【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「国の死に方」片山杜秀

2019年08月05日 20時11分40秒 | 読書(昭和史/平成史)
「国の死に方」片山杜秀

3.11を契機に書かれた作品。
国家の自壊がテーマ。

P66
明治憲法は次のように説いているかのように見える。天皇は絶対神聖だ。国民は臣民として天皇にお仕えするのみだ。この憲法の教えを素直に受け取って、天皇の前に頭を垂れ、内閣や議会や軍がそれぞれの縄張りに籠もって出しゃばらない。

P85
スターリンというと、個人崇拝が思い出される。スターリンの次の指導者フルシチョフが個人崇拝を否定したことでスターリン主義も克服されたように考える向きもあるかもしれない。が、スターリンがソ連に作り出した最大の仕掛けは、徹底的な上意下達システムだろう。

米内光政海軍大臣と阿南惟幾陸軍大臣のやりとり、1945年8月10日、閣議
P201
「戦争は互角というが、科学戦として武力戦として明らかに負けている。サイパン、ルソン、レイテ、硫黄島、沖縄島皆然り、皆負けている」
「会戦では負けているが、戦争では負けていない。陸海軍間の感覚がちがう」
「(国家)の敗北とはいわぬが、(戦闘では)日本は負けている」
「負けているとは思わぬ」

P214
犠牲社会とは縁を切った国、どんな過酷な事態に至っても誰ひとりにも捨て身の対応を命じられない国、しかも世界に冠たる地震大国が、国中を原子力発電所だらけにしてしまった。そんなに国を死なせたいのか。

【ネット上の紹介】
そんなに国を死なせたいのか?歴史はやはり繰り返すのか?リーダー不在と官僚組織の弊害、出口の見えない不況、未曾有の震災と東北の苦境…鬱積する国民の不満を受けとめられない政治は、相次ぐ国難にも右往左往を繰り返すばかり。近年、この国の有り様は、あの戦争前後の混迷に驚くほど通底している。国家が自壊してゆくプロセスを精察し、暗雲漂う現代の「この国のかたち」を浮き彫りにする。
民族のトラウマ
権力は低きに流れる―猿の群れからファシズムまで
国家をわざと麻痺させる―ヒトラーの命がけの遊び
権力者の生まれえない構造―明治憲法という自爆装置
護憲思想栄えて国滅ぶ―勝手にがんばろう!日本
上意下達の徹底と崩壊―ロシア革命からソ連崩壊まで
「負け組」が怒り出す前に―国防のための保険数学
震災で、近代国家は一時的に死んだ―関東大震災と朝鮮人虐殺
いかなる非常時にも「社会公衆の安固」を―戦時特殊損害保険
舌先三寸と気分の衆愚選挙―普通選挙で国滅ぶ
衣食足りずして礼節を知らず―「土の怨念」が生んだテロ
東北が叩きのめされた―国内外で捻れる産業政策
政党が国民の信任を失う―世界大恐慌と農業恐慌
死に体政治に未曾有の国難が迫る―ゴジラが象徴した厄災
そんなに国を死なせたいのか―半身不随の「国体」