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「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」羽根田治

2019年08月28日 20時15分28秒 | 読書(山関係)
「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」羽根田治/飯田肇/金田正樹/山本正嘉

アミューズ社によるツアー登山。
2,009年7月13日~7月17日、4泊5日、料金152,000円。(食料持参、無人山小屋利用)
参加者15人、ガイド3人、合計18人。
そのうち、参加者7人+ガイド1人、合計8名死亡。
悪天候による低体温症が原因。
生存した10名のうち、5名が自力下山、5名がヘリで救出。
明暗を分けたのは何か?

P65
取材したかぎりでは参加者の装備にこれといった手落ちは見られなかった。防寒具にしろ雨具にしろ、誰もがしっかりしたものをひととおり持っていたようである。ただし、それを充分活用していたかどうかとなると話は別だ。

P166
疲労凍死という言葉は、低体温症に完全に置き換えるべきだと考えている。

P170
低体温症の症状は早期から脳障害を発症することがわかった。(中略)
「キャー、キャーという奇声」「意味不明な言語」「呂律の回らない言い方」「赤ちゃん言葉」などを発している。(中略)
この段階で的確な手当をしないと、以後、急激に症状は悪化するものと思われる。

P188
1989年10月8日、北アルプス・立山の真砂岳付近で中高年パーティーが悪天候(吹雪)に見舞われて、10命中8名が低体温症で死亡した。

同じ日程で、無事、東大雪荘に到着したパーティーもある。
P210
「自分たちの席の隣に、食べられることのない18人分の食事がありました」と――。

今後の対策、具体例が書かれている
P259
①ザックは最低12キロを余裕を持って歩けること
②1日に10時間程度は余裕を持って歩けること
③3日間連続で余裕を持って歩けること
という3つの能力を事前にトレーニングしてきて下さい。またこの条件を満たす自信のない方は、参加をご遠慮下さい。
(このような条件を示すべし、と。ツアー登山は、ガイドに依存しがちになる。このような明示により、多少とも意識が高まるのではないか、と)


【参考リンク】
トムラウシ山遭難事故 - Wikipedia

【ネット上の紹介】
2009年7月16日、大雪山系・トムラウシ山で18人のツアー登山者のうち8人が死亡するという夏山史上最悪の遭難事故が起きた。暴風雨に打たれ、力尽きて次々と倒れていく登山者、統制がとれず必死の下山を試みる登山者で、現場は衆らの様相を呈していた。1年の時を経て、同行ガイドの1人が初めて証言。真夏でも発症する低体温症の恐怖が明らかにされ、世間を騒然とさせたトムラウシ山遭難の真相に迫る。
第1章 大量遭難
第2章 証言
第3章 気象遭難
第4章 低体温症
第5章 運動生理学
第6章 ツアー登山