「尼首二十万石」宮本昌孝
以前、「影十手活殺帖」「おねだり女房 影十手活殺帖」の2冊を読んだ。
本書「尼首二十万石」は、順番として最初の作品に当たる。
おそらく、本作の評判が良かったから、後に2冊書かれたのだと思う。
P17
街道を、こちらに駆け向かってくる女に眼をとめた。
髷はざんばら、小袖の胸元も裾も乱れるのもかまわず、汗まみれの必死の形相で、脛を送りだしている。履物をどこかで失くしたのだろう、土埃を舞い上げる素足が痛々しい。
〈心魂に徹し鎌倉まで裸足〉
東慶寺への駆込女の一風景をとらえた川柳だが、まさしくそのままではないか。
【ネット上の紹介】
尼寺の鎌倉・東慶寺御用宿につとめる和三郎は、駈込女を助けたことから幕府の陰謀と甲府十五万石の柳沢家の秘事にまきこまれる―表題作をはじめ、織田信長の子で武田家の人質となる源三郎勝長の生涯に迫る「最後の赤備え」など時代の渦に翻弄された者たちの数奇な運命を描く傑作六編を収めた時代小説集。