「彼方此方の空に粗茶一服」松村栄子
シリーズ最新刊で、最終刊。
P168
それよりも、一見控えめなこの嫁が時折見せる大胆さには瞠目すべきものがると、公子はあらためて佐保の顔をまじまじと見た。
P192
「争いごとはよくないことですが、それでもひとには闘わなければならないときもあります。命がかかっているときと名誉がかかっているときです。命がかかっているときには手段を選ばず、どんなずるいことをしてでも勝っていき残らなければなりません」(中略)
「しかし、名誉がかかっている闘いは、フェアでなくては意味がありません。(後略)」
第六章「今出川家御息女の段」が特におもしろくて、即読み返した。
このシリーズは終了らしいが、スピンオフでまた描いてほしい。
今年もんくなしのベスト。
楽しめた。
【ネット上の紹介】
東京・本所の一角で、弓道、剣道、茶道を伝える〈坂東巴流〉。紆余曲折ののち、家元をつぐ決意をした長男・友衛遊馬の周りには、一癖も二癖もある面々があふれていて--。将来に不安を覚える遊馬の恋人・佐保が出会った呉服屋に隠された「秘密」、遊馬の一番弟子・伊織が直面したある事件、遊馬の京都時代の友人・翠と哲哉のなかなか進まない恋模様、留学した遊馬の弟子・珠樹のイギリス生活、友衛家の三代にわたる嫁姑関係、カンナと幸麿の娘・希の小学校サバイバル術、そして三十代になった遊馬の日々。巧みに織りなされる人間関係の機微と、茶の湯をはじめとする日本文化の奥深さに凛と姿勢が正される、読後感あたたかな7篇の人情譚。