「パチンコ」(上・下)ミン・ジン・リー
これこそ小説の醍醐味。
早くも、ことしのベスト、と思う。
上下2冊、一気読みだ!
舞台は、日本の統治下・朝鮮、大阪(猪飼野)、横浜へと移動。
在日コリアン四世代、全三部作。
第一部、1910年から1933年
第二部、1939年から1962年
第三部、1962年から1989年
物語は、日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島から始まる。
オープニング、島でのソンジャの成長と恋が描かれる。
まるで神話のような描写が美しい。
大阪に舞台は移動・・・台詞は大阪弁となる
P75
「僕もそれで帰ってきてるんや。おかんによると、いつもとちょっと様子が違うらしいねん(後略)」(翻訳の大阪弁がいい感じだ。母=おかん、と翻訳家・池田真紀子さんが訳している。東京生まれなのに、えらい!)
P78
日本は、こちらがどんなに愛しても自分を愛してくれない継母に似ていた。
P212
1952年以降に日本で生まれたコリアンは、十四歳の誕生日に市区町村の役所に日本の在留許可を申請しなくてはならない。その後は日本を永久に離れないかぎり三年ごとに同じ手続きを繰り返す。
著者の言葉
P361
「私の夫は日本人とのハーフで、私の息子は民族的には四分の一が日本人だ。現代の日本人には、日本の過去については責任はない。私たちにできるのは、過去を知り、現在を誠実に生きることだけだ」
【気になること】
戦時中、日本人は、中国のことを支那、と呼んでいた。
中国人のことは支那人、と。
戦後、中国、中国人、と呼ぶようになったように思う。
本作品では、登場人物達は、そう呼んでいない。
そこがひっかかる。(重箱の隅をつついて申し訳ない)
【著者略歴】
著者はソウル生まれ、その後家族とニューヨークに移住。
イエール大学、ジョージタウン大学ロースクールを経て、弁護士となる。
その後、2007年から2011年にかけて東京に在住。
原作は、英文で書かれている。
【ネット上の紹介】
日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。下宿屋を営む夫婦の娘として生まれたキム・ソンジャが出会ったのは、日本との貿易を生業とするハンスという男だった。見知らぬ都会の匂いのするハンスと恋に落ち、やがて身ごもったソンジャは、ハンスには日本に妻子がいることを知らされる。許されぬ妊娠を恥じ、苦悩するソンジャに手を差し伸べたのは若き牧師イサク。彼はソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャとともに兄が住む大阪の鶴橋に渡ることになった…一九一〇年の朝鮮半島で幕を開け、大阪へ、そして横浜へ―。小説というものの圧倒的な力をあらためて悟らせてくれる壮大な物語。構想から三十年、世界中の読者を感動させ、アメリカ最大の文学賞・全米図書賞最終候補作となった韓国系アメリカ人作家の渾身の大作。