「柔らかな海峡 日本・韓国和解への道」金惠京(キム・ヘギョン)
親日家として知られる金惠京さんの最新コラム集。
以前、このブログでも「涙と花札」を紹介したことがある。→「涙と花札」金惠京
著者はソウルで育ち、日本に憧れて明大と早大で学究生活を送り、その後渡米、ローファーム Morrison & Foester本部 国際弁護士、現在、日本大学総合科学研究所准教授を経て、日本大学危機管理学部准教授。
安重根について・・・。
P32
私の専門は国際法で、テロに関して研究を進めている。その分野で知られた格言として「ある人にとってのテロリストは、他の人にとっての自由の戦士」というものがある。韓国で民族の英雄とされる安重根は、しばしばその代表例として語られてきた。
昨年、NHK『歴史秘話ヒストリア』で伊藤博文の妻・梅子が取り上げらえた。
その時、違和感を強く感じたのを覚えている。
どのように伊藤博文が亡くなったのか、一切触れなかったから。
暗殺されたのである、安重根によって。→「暗殺者たち」黒川創
NHKは日韓関係に配慮して、この個所を割愛したのであろう。
【参考リンクNHK】
2015/08/26 第227回放送 「やっぱり妻には かないません! ~初代総理大臣・伊藤博文の妻 梅子~」
慰安婦問題について
P97-98
アメリカ社会のこの問題の捉え方である。現在、少女像を挟んで日韓両国が見せている応酬は、アメリカ社会からの視点を加えると滑稽ですらある。なぜなら、一般のアメリカ市民の大半は韓国が日本の植民地であったことすら知らないためである。
集団的自衛権について
P178
韓国は1964年、集団的自衛権に基づき、アメリカが主導したベトナム戦争に参戦した。ベトナムとの直接の利害関係は国の根幹に関わるものではなかったが、急速な経済発展を目指す韓国のアメリカからの支援拡張、あるいは朝鮮戦争参戦への返礼という意味合いに基づき、参戦の判断が下されたのである。
当時最大で5万人の韓国人が参戦し、韓国人とベトナム人双方に数千人規模の犠牲が生じることとなった。その後、韓国は1972年に撤退したものの、ベトナムとの国交正常化までには20年を要し、韓国人兵士や、韓国人とベトナム人との間に生まれた子どもたちなどの当事者は、未だ多くの困難を抱えている。
P69-73
2015年6月5日放送「池上彰緊急スペシャル!知っているようで知らない韓国のナゾ」の問題点。まとめると…
①「冷静な日本に対して、感情的な韓国」という印象が強調されすぎている。実際そうなんだろうか、と…韓国では59.2%の人が日本に行きたいとアンケートに答えている。(逆に日本人が韓国に行きたいは、52.4%)相手国に行きたいというのは、敬意が高い証拠。
②池上彰氏が、タレントの感情的な反応に対して、冷静な側に引き戻すというリーダーの役を果たしていない。
③デリケートな時期にもかかわらず、日韓の専門家がゲストとして不在であった。
(この箇所は、実際読んでみて。私の説明では不十分だから)
【ネット上の紹介】
テレビ、ラジオで活躍する気鋭の論客が、「困難を極める日韓関係」と「テロの時代の世界」を、柔らかで明確な視線で読み解く。「不寛容な時代」を生きる私たちの必読書。
[目次]
第1章 対立を超えて(「いつもの光景」を超えて―竹島(独島)を相互理解の契機に
希望を忘れた関係に未来はない―韓国人サポーターの横断幕に思う
潘基文・国連事務総長の発言は誤りか? ほか)
第2章 世界はどこを目指す(熱烈な愛国心と恒常的な恐怖―失われたアメリカの自由
アルジェリア人質テロで見過ごされた三つの問い
シリアの査察受け入れは薔薇色のゴールではない ほか)
第3章 後退に抗する(誰が法と制度を運用するのか?―在留カードの穴から見えた現実
日韓の選挙が明らかにした両国の姿
法の成り立ちから集団的自衛権を考える ほか)