「韓国現地からの報告」伊東順子
昨年、「韓国社会の現在」(春木育美)を読んだ。
韓国ドラマの背景を知るためだ。
本書も、その流れで読んだ。
P36
32名もの犠牲者を出した事件の犯人チョ・スンヒ(23歳)は、8歳の時に一家で米国に移り住んだ韓国系移民だった。事件の詳細が伝わるや、韓国はパニック状態となった。
朴槿恵元大統領について(金鍾泌・キム・ジョンピル氏のコメント)
P78
「5000万人の韓国国民がデモしても、絶対に自ら辞めることはないだろう」
(中略)
「下野?死んでもしないよ。あの頑固さに勝てる人間などいない」「彼女は両親の性格の悪いところばかり受け継いだ」
P202
「反日教育」がつらくて帰国したという話はほとんど聞いたことがないが、韓国の受験教育を避けるため、子どもを連れて日本に戻った話はよく聞く。韓国人の配偶者もそれに同意するばかりか、配偶者が率先して提案する場合も少なくない。「この国の教育は終わっている。日本へ行け」と。
「教育移民」「キロギアッパ」(教育のために母子だけ海外に送り、父親だけ韓国に残る)という言葉がある国だ。
P219
韓国は日本とは違って、「推薦入学」の比率がものすごく高い。それは大学によってばらつきがあるが、平均して約7割が推薦枠。(中略)
大学別だとトップ3であるソウル大学、延世大学、高麗大学の定時枠(=日本のセンター試験に相当)は、それぞれ21.5%、29.5パーセント、15.8パーセントと、名門大学も例外ではない。(ちなみに、受験戦争を描いたドラマ「SKYキャッスル」のSKYとは、S=ソウル大学校、K=高麗(コリョ)大学校とY=延世(ヨンセ)大学校のこと・・・SKYキャッスル)
P220
今の韓国の受験生にとっては「随時」こそが第一の目標であり、「定時」はそこから漏れた人の敗者復活戦的意味合いになっている。(「随時」=「推薦入学」だ)
P230
私自身もそうだし、韓国で長く暮らす他の日本人の友人たちも、反日感情で嫌な思いをすることはあっても、あのタイプのデモを経験したことはない。韓国人のデモは「批判」や「要求」が中心であり、「憎悪」や「排除」ではない。したがって自分の存在そのものが脅かされるような恐怖を味わうことはないのだ。(そこが日本のヘイトスピーチ・デモと異なる)
【ネット上の紹介】
セウォル号事件、朴槿恵退陣を求める巨大デモ、悪化する日韓関係、文在寅政権下の分断…そのとき、韓国では何が起こっていたのか?人びとは何を思い、考えていたのか?二〇一四~二〇年はじめまでに起こった出来事のほか、過度の競争を強いる教育制度、軍隊生活や不動産階級社会の実際、日韓をつなぐ人や物など、さまざまな物事を現地から報告する。メディアにはあらわれない韓国の人々の本音、日々のつぶやきを聞き取り、思考するための一冊。
第1章 不信―セウォル号事件2014~15(船長や船員は何故さっさと逃げたのか
「まさに韓国的」なのか、「日本も同じ」なのか ほか)
第2章 政変―政治参加する人びと2016~17(朴大統領への巨大な怒り、しかし謎は残る
朴疑惑、メディアは前から知っていた? ほか)
第3章 歓喜から混乱へ―文政権のジレンマ2018~20(前政権を清算する新政権―「日韓慰安婦合意」の誠実な履行のために
なんと検察から!韓国の#Me Too―緊張する政界財界マスコミ業界 ほか)
第4章 韓国の教育現場から―日韓どちらが生きづらい?(韓国の学校で学ぶ、日本人の子供たち
教科書の中の「慰安婦問題」 ほか)
第5章 旅、友だち、それぞれの日韓(松山ではヘイトスピーチがありますか?―ある「親日派」の息子
韓流観光の教訓―「寒流」とキーセン観光 ほか)