「倒産続きの彼女」新川帆立
彼女が転職するたび、その企業は必ず倒産する―いったいどうなってるの?
美馬玉子と剣持麗子、2人の弁護士がタッグを組み、調査を開始する。
想定以上の面白さ、キャラクターとそのモノローグがいい。
充分楽しめる、読んでソンはない。
P12
「そういうことでしょ。見た目が悪いから、男ウケしないって言いたいんでしょ」
「そうじゃなくて、私はただ、今のままだと美法の良さが男の人に伝わりにくいと思って」
早口のまま続ける。
「恋愛の、一般的な市場の話をしているの。恋愛市場では、稼ぐ男が偉くて、若くて可愛い女が偉いってことになっている。だから、今日の人たちは、私たちよりも恋愛市場では価値が高いってことでしょ。そこは素直に認めたほうがいいって話。それで、自分より上の人を倒すには自分を磨く努力をしないと。自分の側で努力してないのに相手をくさすのは違うと思うし」
P177
「醜いアヒルの子の定理(テーゼ)って、知っていますか?」
と訊いた。
「醜いアヒルの子、ですか?あの童話の?」
(中略)
「白鳥の子は、アヒルと見た目が異なっていたために虐められた。ですが、実は白鳥とアヒルの間に違いをN個見つけたとすると、アヒルAとアヒルBの間にも同じく違いをN個見つけられるのです。だから、似ているとか、違うとか、そういう概念はデタラメなんです。違いは同じだけある。人間の側で、どの違いを重視するかによって、同じグループにくくったり、区別したりしているんです」
P260
もともと、投資家と呼ばれる人たちは嫌いだ。事業をして、お金を生み出す事業家が一番偉いはずだ。それなのに、その事業家を競馬の馬のように見比べて、お金を賭け、勝った、負けたとわめいている連中が、投資家だ。
【ネット上の紹介】
『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作&シリーズ累計48万部突破、『元彼の遺言状』続編!彼女が転職するたび、その企業は必ず倒産する――婚活に励むぶりっ子弁護士・美馬玉子と、高飛車な弁護士・剣持麗子がタッグを組み、謎の連続殺「法人」事件に挑む!(あらすじ)山田川村・津々井法律事務所に勤める美馬玉子。事務所の一年先輩である剣持麗子に苦手意識をもちながらも、ボス弁護士・津々井の差配で麗子とコンビを組むことになってしまう。二人は、「会社を倒産に導く女」と内部通報されたゴーラム商会経理部・近藤まりあの身辺調査を行なうことになった。ブランド品に身を包み、身の丈にあわない生活をSNSに投稿している近藤は、会社の金を横領しているのではないか? しかしその手口とは? ところが調査を進める中、ゴーラム商会のリストラ勧告で使われてきた「首切り部屋」で、本当に死体を発見することになった彼女たちは、予想外の事件に巻き込まれて……。