「ナオミとカナコ」奥田英朗
直美と加奈子は大学時代からの親友。
直美は老舗百貨店の外商部、加奈子は専業主婦。
直美は、加奈子が夫からDVを受けているのを知る。
二人は夫を殺す為の完全犯罪を計画するが…。
奥田英朗さんは巧い。
現在の日本作家の中でもトップクラスの筆力と思う。
これほどはらはらして読んだのは久しぶり。
知らず知らずの内に、二人を応援している。
逃げろ、逃げろ、と。
結末は読んでのお楽しみ。
直美がDVを知るシーン
P28
「お願い。教えてよ。何があったの」
直美が肩を揺すると、それがスイッチだったかのように、加奈子が嗚咽を漏らした。
大粒の涙がスカートに落ちる。
親友のただならぬ事態に激しく動揺した。
上海から来た李朱美さんと直美の会話
P129
打ち明けついでに、仲のいい友人が夫から暴力被害を受けていて、悩んでいることを話した。
このときは朱美が表情を険しくし、「殺しなさい」と言い放った。
「そんな男に生きている価値はないのことですね。殺されても文句は言えません」
【おまけ】
この李朱美の造形が生き生きとしてすばらしい。
ところで、読んでいて「いつか陽のあたる場所で」を思い出した。
これに登場する綾香がDVを受けて、ついにキレてしまい、夫を殺し服役、という過去の持ち主。
「いつか陽のあたる場所で」乃南アサ
「すれ違う背中を」乃南アサ
「いちばん長い夜に」乃南アサ
【ネット上の紹介】
望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美は、あるとき、親友の加奈子が夫・達郎から酷い暴力を受けていることを知った。その顔にドス黒い痣を見た直美は義憤に駆られ、達郎を排除する完全犯罪を夢想し始める。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」。やがて計画は現実味を帯び、入念な準備とリハーサルの後、ついに決行の夜を迎えるが…。