【ぼちぼちクライミング&読書】

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「ルワンダ中央銀行総裁日記」服部正也

2021年08月12日 08時17分56秒 | 読書(海外事情)


「ルワンダ中央銀行総裁日記」服部正也

著者は、1965年から1971年まで、中央銀行総裁として着任。
周りは素人ばかり。孤軍奮闘して経済改革を断行していく。
日本人も捨てたもんじゃないな、と思った。
なお、私は増補版で読んだ。94年ルワンダ動乱をめぐる一文も掲載されていたのでよかった。実際の報道との違い、著者の現場経験からの考察が書かれている。

着任早々・・・
P21
まずい飯を食べていたらチトーがやってきて、「旦那様がお望みなら、きれいな女をつれてきましょうか」とささやく。この野郎と思ってこわい顔をしたら退散した。

P44
通貨は空気みたいなものです。それがなくては人間は生きていられません。空気がよごれておれば人間は衰弱します。しかし空気をきれいにしても、人間の健康が回復するとはかぎりません。空気は人間に必要であっても、栄養ではなく、人間が生きるためにはさらに食物をとり水を飲むことが必要なのです。通貨改革をすることは空気をきれいにすることです。財政を均衡させることは生きていくに足る栄養をとることです。しかし健康を回復するためには、栄養の内容が重要になってきます。経済でいえば財政の均衡の内容とその基礎になっている経済条件が、国民の発展に合うようになっていなければならないのです。

P303
ルワンダと隣国ブルンディの人口はともに、長身のツチ族が人口の10パーセント強、フツ族が90パーセント弱、その他少数のツワ族から構成されている。(なんとなく清朝の漢民族支配を思い出した)

P319
緒方貞子国連難民高等弁務官が、「愛国戦線」首脳と会見後、「彼らは口では良いことを言っているが、自分は、本当にすべてが良いと納得するまでは、難民たちにルワンダに帰れと言うつもりはない」と言ったと伝えられている。(さすが慧眼だ)

P322
冷戦が終わったから軍縮だというのはおめでた過ぎるのではないだろうか。平和、平和と叫ぶよりは、戦争は必ず起こるものとして、その被害を局限するための自衛策をとり、また、小国の争いでは犠牲を限定するため、武器輸出禁止を大国間で合意すべきであろう。国際収支のため武器輸出をすることや、累積債務の支払いのため武器輸出で外貨を稼がざるを得ない状況に追い込むことは、資本主義の道義的破綻といわざるを得ない。

P336
平和といい、貿易といい、援助というものは、究極的には国民と国民との関係という、いわば人の問題である。

P337
途上国の発展を阻む最大の障害は人の問題であるが、その発展の最大の要素もまた人なのである。

【ネット上の紹介】
一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダの中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった―。本書は物理的条件の不利に屈せず、様々の驚きや発見の連続のなかで、あくまで民情に即した経済改革を遂行した日本人総裁の記録である。今回、九四年のルワンダ動乱をめぐる一文を増補し、著者の業績をその後のアフリカ経済の推移のなかに位置づける。
1 国際通貨基金からの誘い
2 ヨーロッパと隣国と
3 経済の応急措置
4 経済再建計画の答申
5 通貨改革実施の準備
6 通貨改革の実施とその成果
7 安定から発展へ
8 ルワンダを去る
増補1 ルワンダ動乱は正しく伝えられているか
増補2 「現場の人」の開発援助哲学


「自発的対米従属」猿田佐世

2021年08月09日 08時07分03秒 | 読書(現代事情)


「自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」猿田佐世

黒船の時代から、日本は「外圧」に弱い。
政治家、官僚、企業は、それを巧妙に利用してきた。
大量の資金を投入し、都合のよい情報のみ流れるようにする。
日米外交、ってそんな裏があったのね、と。

P70
アーミテージら知日派たちが、自分たちの声を日本メディアに載せようとして動いたというのではなく、彼らの声を日本で広めたい日本の議員やメディアが積極的に動いたのである。

P72
「ワシントン発」の知日派の声、特にアーミテージ氏のように著名な知日派の声は、大きく拡大されて日本に跳ね返り、政権が推進しようとしている政策の後押しをしてくれるのである。

P101
日本国内ではニュース性のないことでも、ワシントンで話せば、日本では「重大ニュース」になる。

P240
米海兵隊は、朝鮮戦争における仁川上陸作戦などで、その存在意義を見事に示したと言われているが、既に、現在ではその独自の能力を発揮して活躍する軍隊ではなくなっている。(廃止したくても、元海兵隊出身の議員や支援者が廃止を許さないそうだ。そんな軍隊なら、少なくとも沖縄には不要じゃないの?、と。海兵隊は、1年のうち8ヶ月は東南アジアを回っており、沖縄にいるのは、わずか4ヶ月ほど)

【なぜ「アメリカ」は日本に原発維持を求めるのか?】P118
「原子力産業のパートナー、核不拡散のパートナーを失うから」
「濃縮ウラン産業を主とする米企業の保護」
「日本原子力技術の衰退はアメリカの原子力産業に影響を与える」
「ロシア、中国、インドが原発を推進する際に、アメリカとそのパートナーである日本が撤退することに対してのリスク」
「ドイツが脱原発をするなか、日本までやめてしまったら、原発に対するイメージが著しく悪くなるからなのでは?」
(三菱、東芝といった原発関連企業も、CSISに毎年、数百万以上寄付している)

【著名な知日派】
●リチャード・アーミテージ
●ジョン・ハムレ
●マイケル・グリーン
●ジョセフ・ナイ
●カート・キャンベル

【日本のシンクタンク】
野村総合研究所
三菱総合研究所
キャノングローバル戦略研究所
日本国際問題研究所

【アメリカのシンクタンク】・・・いずれも日本からの資金提供あり
ブルッキングス研究所・・・政府系+トヨタ、全日空、日立、三菱、日経、野村、北米ホンダ、丸紅、三井住友、
CSIS・・・笹川平和財団、三菱、経団連、NTT、富士通、丸紅、キャノン、日立、ホンダ、伊藤忠、三井物産、住友商事、トヨタ

【安保を破棄して国防力を持てるのか?】・・・「令和を生きる」半藤一利/池上彰
半藤:いま国防予算は5、6兆円ですよね。(中略)
もし仮に日米安保を破棄して日本が自主防衛するために独自の国防力をもつとなったら、どのぐらい金がかかると思います?防衛大学校の教授二人がその場合のシミュレーションをやった。それによると23兆円もの金がかかるんだそうですよ。これは核兵器をもたない場合の予算です。いわんや核兵器なんかをもつなんて言ったらとんでもないことになる。核兵器をもつとなると、核拡散防止条約から外されて、たちまち経済封鎖。経済封鎖を食らったら日本の国はもうお手上げです。
(中略)
池上:日本が核ミサイルを持つならば、ディーゼル型の潜水艦は長期間潜っていられませんからイギリスとおなじように原子力潜水艦をつくる必要が出てくる。経済制裁でウランが入って来なかったら原子力潜水艦の原子炉の燃料をどうします?
半藤:原子力潜水艦がなければ抑止力にならないんです。要するに、北朝鮮が何もアメリカにできないのは、原子力潜水艦がないからです。
池上:ええ。しかもその運用ということになると、つねに日本海溝なり日本海に潜ませておくためには一隻ではダメ。最低、三隻必要なんです。原子力潜水艦三隻を運用して、初めて最低限の核抑止力が完成する。さあ、日本はそれができますか、ということでしょうね。(中略)
半藤:借金大国の日本がね、それだけの予算をほんとうに投入できるんですか、ということなんです。

【ネット上の紹介】
これまでの日米外交は、アメリカの少人数の「知日派」と日本の政治家やマスコミが互いに利用しあい政策を実現するという「みせかけの対米従属」によって動いてきた。トランプ大統領が出現し、いま日本は何をなすべきか。ワシントンでロビー活動に長年携わった著者による緊急提言
第1章 外交は劇である
第2章 自発的対米従属
第3章 トランプ・ショックと知日派の動向
第4章 今後の日米関係の展望
第5章 外交・安全保障における市民の声の具体化のために
第6章 今、日本の私たちがなすべきこと

フスマ(7月の続き)

2021年08月07日 10時44分13秒 | 身辺雑記

7月に和室のフスマを張り替えたが、その続き。(リフォームの一環)
手前のフスマは、部屋の入口にあたり、新規で購入した。(残り2枚は、張替のみ)

全部で63,800円。


「消えたママ友」野原広子

2021年08月04日 07時52分20秒 | 読書(マンガ/アニメ)


「消えたママ友」野原広子



子どもが仲良しってだけで 親もわかり合えるとかありえない

みんなそれぞれの生活  それぞれの人生 
ぜんぶ知ってるわけじゃないし ぜんぶ話せるわけじゃない

【ネット上の紹介】
ある日、仲良しのママ友有紀ちゃんが姿を消した。有紀ちゃんとは仲良しだったはずなのに、何も知らなかった春香、ヨリコ、友子。しかし、みんなそれぞれ思い当たることがあった…。雑誌『レタスクラブ』連載で大反響を呼んだ話題作、描き下ろしを加えついに単行本化!!
1章 消えたママ友
2章 有紀ちゃんをさがせ
3章 本当のことなんて話したりしない
4章 ママ友がいない
5章 つないだ手
6章 本当の有紀ちゃん
7章 あの日


「近代中国史」岡本隆司

2021年08月02日 07時15分24秒 | 読書(台湾/中国)


「近代中国史」岡本隆司

このところ、中国ドラマを観ていて、その社会背景が気になったので読んだ。
これで、「瓔珞」「月に咲く花の如く」「明蘭」の理解が深まる・・・かも。
人口と経済からみた近代中国史。
目から鱗の良書、ぜひ読んでみて。

P30
そもそも中国史・東洋史とは、遊牧世界と農耕世界の共生・相克がその大部分をしめており、経済史もその例にもれない。

P64
清朝の時代には、しばしば課税の減免があった。とりわけ18世紀の好景気で、税制に余裕があった乾隆帝の時代に多い。(中略)
その善政は決して、一般の庶民にまでとどいていない。(「瓔珞」「如懿伝」は、乾隆帝の時代)

P142
ヌルハチは1583年に挙兵し、およそ30年かかってジュシェン全体を統一した。ジュシェンは以後、自らマンジュ(満州人)と改称し、のちの清朝政権が成立する。
以上のような経緯から、この政権は、多種族からなる武装貿易集団の性格が濃厚である。(中略)清朝ははじめから、満州人を中核として、漢人・モンゴル人を包含する多種族の混成政権を志向していた。
このような清朝政権は、商業を忌避し、交通を遮断し、「外夷」と「中華」・外国と中国・異種族と漢人とを分断しようという明朝の志向とは、全く相反する存在である。(中略)
したがって、明と清は対立を深めざるをえなかった。1億と50万、高度な農工業と狩猟・遊牧。人口や生産力をみるかぎり、彼我の優劣は、火を見るより明らかである。明・清の王朝交代は、史上の一大奇跡といってよい。
清朝は実際、いかにしても自力で長城を突破して、明朝を打倒することはできなかった。明朝が1644年、内乱で自滅したために、北京に入って中国に君臨できたのである。

P154
ドル貨は円形なので「圓」、あるいは同音で画数が少ない「元」と称する。

P167
「17世紀の危機」という歴史用語がある。もともとはヨーロッパ史の概念であり、1630年代から40年代にわたって、異常気象と飢饉がおこり、また新大陸の銀輸出が激減したために、社会的・経済的な混乱をきたしたことに始まる経済下降局面を指していう。(中略)同じ時代・明末清初期の中国も、例外ではなかったからである。

P148
1644年、清朝が北京に入って以後の中国支配は、前代明朝の制度・慣行を尊重して、在地在来の秩序になるべく手をふれないことを原則とした。目につきやすいところでは、皇帝独裁・官僚制・科挙の踏襲・全面的な漢人の登用などをあげることができる。

P268
「貧しきを患(うれ)えず」、均しからざるを患う」という理想が有効なかぎりは、それでも通用した。文化大革命までの時代である。「貧しさを患え」たところから「改革開放」がはじまった。その結果は貧富の懸隔・沿海と内陸の乖離という、「均しからざるを患う」現状になっている。経済発展をとるのか、中国の一体化をとるのか。もはや二者択一できない。両立せねばならないところに、現代中国のジレンマがある。

【疑問】
とても面白かったのだけど、疑問が残った。
少数民族の満州人が、圧倒的多数の漢民族をどう支配したのか? 具体的なところがよくわからなかった。また、弁髪はどの程度、漢民族に浸透したのだろう?
宮廷ドラマでは、満洲民族の風習として、左右の耳に3つずつ、合計6つイヤリングを付けている。庶民の女性も、そうしたのだろうか??・・・そのところを知りたい。

【蛇足のファンタジー】
シンデレラの足は小さかった・・・纏足していただろうか?(ガラスの靴をはいて、外反母趾にならなかったのだろうか? そもそも纏足していて踊れたのか?) 満州人の少女がシルクロードを使ってヨーロッパにやってきてシンデレラになったのだろうか?・・・ファンタジーだ。本書を読んでそんなことを考えた。(もともと中国にあった話がヨーロッパに伝わった、とみたほうが自然かもね)

【ネット上の紹介】
中国とは何か。その原理を理解するための鍵は、近代史に隠されている。この時代に、「幇」とよばれる中国団体をはじめ、貨幣システム・財政制度・市場秩序など、中国固有の構造がつくられたからだ。本書は経済史の視座から一六世紀以降の中国を俯瞰し、その見取り図を明快に描く。かつて世界に先んじた中華帝国は、なぜ近代化に遅れたのか。現代中国の矛盾はどこに由来するのか。グローバル経済の奔流が渦巻きはじめた時代から、激動の歴史を構造的にとらえなおす。
プロローグ―中国経済と近代中国史
1 ステージ―環境と経済
2 アクター―社会の編成
3 パファーマンス―明清時代と伝統経済
4 モダニゼーション―国民経済へ向かって
エピローグ―中国革命とは何だったのか