青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

「街」のグランドデザインを考える。

2023年11月26日 10時00分00秒 | 宇都宮ライトレール

(秋の日の午後、鬼怒通り@峰電停)

ジャンボ餃子定食を美味しくいただいた親子二人、再びライトレールに乗って宇都宮の街へ。駅へ向かう地元民らしい高校生の姿。鉄道マニアだけでなく、こういう人たちが乗ってこその新設LRTである。この鬼怒通り、沿道のお店がLRTの開業に合わせて再開発されていて、新しいお店やマンションが多く活気がある。ライトレール沿線のゆいの杜地区と同様、再開発の進む駅東口地区に若い世代の流入が進めば、さらなる街の活性化に期待が持てます。宇都宮ライトレールの沿線のコア層は、ゆいの杜地区に居住するファミリー層や工業団地へ通う労働者層と、今まではあまりクローズアップされなかった宇都宮駅東側の住民たち。今まではクルマかバス以外の移動の選択肢がなかったところに、駅周辺の商業地域との回遊ルートを提供したことには大きな意味があります。

午後の宇都宮駅東口電停。暖かな陽だまりの中、駅前広場を回り込みながら、高根沢工業団地行きが発車していく。この駅前広場には「宮みらい」という名前が付けられた新しい商業施設が併設されているのだが、宮みらいの利用者とLRTの利用者で午後になっても賑わいは衰えず・・・駅前広場の階段で語らう人々と、ほんのり色付いた街路樹と、広場で開かれている小さなマルシェ。穏やかに過ぎる、宇都宮の秋ですね。

宇都宮ライトレールは、開業から82日で早くも乗客100万人を突破。8月24日からの開業3ヶ月でおよそ119万人の利用が見込まれていて、開業からの祝賀ムードが一段落しても、平日を中心にした定期券利用者が伸びて利用を下支えするなど、極めて順調な滑り出しを見せているようです(下野新聞より)。宇都宮のLRTについては、構想30年、総事業費も680億円余(うち宇都宮市が600億円)と、地方都市が抱える公共事業としては莫大な予算と時間を擁して作り上げられたものなので、関係者の皆様もほっと胸を撫で下ろしているのではないでしょうか。LRTによって宇都宮駅周辺の商業圏と、県のテクノポリス計画に基づいた工業団地群と、これに付随した新興住宅地域をうまく結節させたこと。けっこう地方の議員さんの中には、宇都宮の例を見て、すぐに「〇〇市にもLRTを導入すれば旧市街地は活性化する!」みたいな安易な「LRT万能論」みたいなイシューをぶち上げる人が多いのですが、順調な滑り出しに結びつけられたのも、LRTを導入する以前からの綿密な都市計画の賜物なのだなということが、実際に乗車してみると分かります。「そもそも」のその地域が持つポテンシャルだったり、下ごしらえが出来てなきゃ、やみくもにLRTを導入したって意味はないですよね。

ライトレールの好調さに、早くも「宇都宮駅西口方面への延伸を!」という前のめりな意見も多数あるそうです。東口から西口へはJR線と新幹線の間を越える非常に大きな跨線橋を作らねばならず、相応に費用と時間のかかりそうな話ではありますが、まずは東口から清原地区と芳賀・高根沢工業団地方面方面に軌道を敷設したのは大正解だったのでしょうね。JR駅~東武駅にある旧来の商圏にライトレールを持ち込んでも、東武電車とバスを利用していた層がLRTに遷移するだけで、新たな需要は生まれなかったかも。LRTは少子高齢化と過疎化による市街地の衰退化を食い止める特効薬ではないので・・・

それでも、理想とすべき「軌道事業の導入による新しい街のカタチ」が国内で具現化されていること、非常に頼もしく思いますよね。
LRTは、本気で街づくりを考えるためのツールの一つ。輝くも輝かないも、綿密な都市計画ありきなのだと思います。


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