青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

青い守護神現る

2018年01月26日 18時00分00秒 | 飯山線

(飯山色ぽつり@戸狩野沢温泉駅)

164Dに接続する120Dが出発し、164Dの車内外の清掃を行っていた乗務員氏が詰所に戻ると、戸狩野沢温泉の駅に静寂が戻ります。戸狩野沢温泉の駅は島式ホームの1面2線、駅舎側に機回し線が1本あるだけのシンプルな構造。ホームに発着する列車は単行~2連程度が大半ですが、朝には送り込みを兼ねた5連が運転されることもありまして2番線側だけがそこそこ長い。古くは上野から急行妙高81号に併結されて「快速戸狩スキー号」なんてのが入線していたこともありましたね。DD16が12系客車を牽いてここ戸狩まで運転されていたのだそうですが、チビロクと12系のコンビとか今走っちゃったら信濃平の農道に車の列がズラーっと並んじゃいそうだ(笑)。


飯山色が次に動く132Dは1時間半後。朝から寒い中を撮影してすっかり体も冷えてしまったので、空いた時間を使って野沢温泉へ行って来ます。戸狩の駅からクルマで10分、新田の駐車場に車を放り込んでそぞろ歩く平日の温泉街。人なんか少ないだろうななんて思ってたら海外勢のスキーヤーがかなり目立つねえ。GWに来た時にも思ったけど、志賀高原とか湯田中の地獄谷のサルとか外国人好きよね。野沢も雪質のいいゲレンデといかにも日本の湯の町文化の象徴のような温泉街がセットになってて、文化に対する意識高い系の外国人が好きそうなのは何となく分かる。


温泉街を麻釜のほうに歩いて行ってちょっと左の奥、あまり人通りのない路地裏にひっそりとある野沢温泉の外湯、真湯。湯小屋の前に立つ「天下名湯・眞湯」の文字が風格あります。野沢温泉には無料で入れる外湯がいろいろありますが、個人的にはここ真湯がナンバーワン。アタクシも東日本中心ですが500は下らない数の温泉に行きましたけど、最近は新規開拓はせずに自分の気に入ったところしか行かなくなりましたね。


幸いにして先客もおらず、名湯を独り占め出来るのも平日旅の良さでありましょうか。すりガラスの窓から漏れる薄明かりに、湯気がゆらゆらと漂う様には心が落ち着きます。ここんところ湯温が下がって入れなかったりと言う話も聞いてたんだけど、確かに以前は水で埋めないと入れないくらい熱くて、源泉も緑色っぽかった記憶がある。それでも消しゴムの消し屑のような灰色まだらの湯の華が漂うお湯は野沢の中でも一番濃いのではと思われるパンチの効いた硫黄の香りで、「野沢の名湯・真湯」の健在を強く印象付けてくれます。


すっかり温まって、硫黄の香りをプンプンさせながら戸狩の駅に戻って来ると…あれれ、機回し線に見慣れないゲストが。野沢温泉に行っている間に、いつの間にやら除雪用大型モーターカーENR-1000が戸狩の駅に入線していました。


確かにこの日は午後から雪予報でしたが、除雪するにはまだ早い。保線チームと思しき作業員の方々も何人か乗っていましたので、除雪作業の準備でも行うのかなあと言ったところ。見た目は最新型の除雪用機関車ですが、あくまで機関車ではなく作業用の機械であって車籍がありません。そのため、本線上を走行したり本線上で除雪作業を行うには営業用の列車とは明確に分離した運用(原則として作業区間の線路を両方向から赤にして、完全に線路を閉鎖した上での取り扱い)が必要です。ナンバーのないクルマが公道を走れないみたいなもんだね。


ここでは機回し線でおとなーしく前へ倣えの恰好をしていますが、出番となればガバッと前のウイングを開いて、豪快に雪を投げ飛ばすのでしょう。出来ればその姿を見てみたいものですが、こればっかりは気象条件と時の運。一昔前なら、真っ赤なラッセルヘッドを前後に付けたDD16がせっせと除雪作業に励んでいた飯山線沿線。今は赤に変わって青い車体の雪の守護神が、冬の鉄路を守ります。
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パズルを読み解け

2018年01月25日 18時00分00秒 | 飯山線

(戸狩へ急ぐ@上境~戸狩野沢温泉間)

千曲川の流れに沿って、等高線をなぞるように河岸段丘上を細かくカーブしながら続く飯山線の線路。飯山盆地に近付いて気温も少し上がって来たのか、線路際の雪や樹木の着雪も北信妻有国境に比べれば幾分少ないような気がします。越後川口から約2時間、日本有数の豪雪地帯を抜けて、164Dの終点である戸狩野沢温泉駅はもうすぐ。


この先のカーブを回れば、もう戸狩は指呼の間。飯山色のボディの向こうに見える連続トラスは、戸狩の街から国道117号へ出るための柏尾橋。戸狩野沢温泉駅とは申しますが、北陸新幹線の開業に伴い、野沢温泉へは飯山駅からアクセスするのが主流になりました。野沢温泉への路線バスも戸狩発から飯山発に変更になったらしく、駅名に「野沢温泉」を付けているのはちょっと看板に偽りありな感じ。ちなみに飯山鉄道時代は今の上境の駅が野沢温泉駅と言う名前で開業しています。確かに徒歩だけを考えたら一番近いよな。


戸狩野沢温泉から先、長野方面はすぐの接続の130Dにお乗り換え。これもキハ110一般色2連かあ。そして朝もはよから結構ハードな旅程で走って来たキハ110-233(飯山色)はここで一旦休憩し、約1時間半後の132Dのケツにぶら下がって長野へ行く運用となります。それにしてももう一台の飯山色はどこに行ったんだろうね。それとも出番がなくて長総でオネンネなのかな。


豪雪地帯を走って来た飯山色。運転士さんがフロントマスクにこびりついた氷の類を一生懸命ホウキではたいている。次の132Dを組成するのに、連結面と幌周りをキレイにしておきましょうという配慮なのでしょう。ちなみに132Dは、131Dで長野から来た2連を分割して戸狩止まりにする1両と、同じく単行で戸狩にやって来た164Dの車両をペアにして運行されます。乗客数の実情に合わせた弾力的な車両運用と言うところなのでしょうが、なまじっかでは覚え切れないこのパズルのようなフクザツな車両の取り回しを読み解くのも、ひとえに飯山線の楽しみの一つなのであります。
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深雪の里の足として

2018年01月24日 18時00分00秒 | 飯山線

(集落の足として@信濃白鳥駅)

千曲川沿いに開けた段丘上の耕地の中にある白鳥集落。雪深い集落の足として駅があり、細々とですが栄村に委託する形で乗車券の販売も行われているらしい。昭和58年に72人と記録されている乗降人員は現在は10人程度と減少著しいのですが、乗車券の販売とかいつまで続けるのだろうな。こっから乗る客で乗車券を必要とする人間なんか殆ど顔見知りなんだろうけど、こういう切符を集めるマニアもいるっちゃいるよね。


国道と集落を繋ぐ道の踏切を抜けて、乗客のいないホームに飯山色がやって来ます。沿線を歩いてみた感覚的なものですが、津南から桑名川あたりにかけてが一番雪が深かったですね。さすがに国から「特別豪雪地帯」として指定されるだけの事はある。


越後田中同様、墨色の世界に飯山色のカラーリングが映えます。駅前にある家の直角三角形をした片流れの屋根が、この地域の雪の多さを物語っているようです。駅の先で大きく木の全体に雪を纏って堂々と立っているのは桜の木なのだろうか。だとしたら桜の時期も来なきゃいけませんねえ。


雪の白鳥を後に。列車の後ろには火の見櫓が見えて、小さいながらも集落の安全を守っています。今でこそトタン屋根ですが、昔は茅葺き屋根とか多かっただろうからねえ。雪国特有の火事の原因として、不幸にも雪の重みで屋根が潰された時、屋根の下で暖を取るための囲炉裏の火が潰れた屋根に引火してしまい、大火事になる事が多かったそうで。


信濃白鳥から西大滝に向かって坂を下って行く136D。幌側の顔がイケメンだと思っているので、逆に新潟側ののっぺら顔は微妙に物足りない感あるよな。白鳥が標高330mほどで西大滝が標高305mくらいだから、およそ2kmで30m弱を下って行く事になる。この辺り千曲川に両岸の段丘部が迫ってくる隘路となっていて、鉄道はトンネルとスノーセットでこれを交わし、国道は白鳥大橋で川の対岸へ渡って行きます。白鳥大橋と言われると室蘭みたいだが、あちらは「はくちょう」大橋であってこちらは「しらとり」大橋なので念のため(笑)。

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越後妻有の美しき

2018年01月23日 18時00分00秒 | 飯山線

(美しき雪の妻有@津南~越後田中間)

駅の近くに「田中温泉しなの荘」といういい温泉があるので、こっちの方に来る際には度々訪れている越後田中駅界隈。駅を見下ろす田中の集落のどん詰まりに除雪車が押し込んだ雪の小山があったので、それを足場代わりに雪を慎重に踏み固めながら三脚を並べます。越後田中駅の津南側は、森を抜けて来た飯山線が里山の縁をなぞりながらSカーブを描く線形で好きな構図なんですよねえ。春になると田んぼのあぜに菜の花とか芝桜が咲いたりしてまた良いのです。かように越後田中の周辺ってのは結構フォトジェニックな場所ですが、今は棚田も一面の雪に覆われ、春の訪れを静かに待っています。


鉛色の空の下、雪の上を渡って来る冷たい風の音の他は何も物音が聞こえない。まさに静謐という言葉がぴったりの田中の集落である。国道が信濃川を挟んで対岸を走っているので、余計に静けさが保たれているのかもしれない。列車の接近の時刻が迫っているので耳を澄ましてみるのだが、音が雪に吸収されてしまうのか列車のジョイント音が聞こえないのだ。遅れているのかな…?とヤキモキし始めたその時、雪の森から音もなく飯山色が姿を現しました。


「何となく」のアテが当たった事に満足しながら、メインカメラとサブカメラで二丁切り。この時間の津南のアメダスは氷点下4.4度、積雪深121cm。針葉樹にフワリと乗った新雪と、枝分かれした木々の樹氷が飴細工のようで素晴らしくきれいだ。足元から昇って来る寒さをしばし忘れて、氷点下で固定された美しき白い世界を楽しみます。


雪原にSカーブのシュプールを優しく描きながら、列車は越後田中の駅へ。モノトーンのキャンバスを明るく切り裂く飯山色のカラーリングが改めていいよなあ。そしてキハ110の幌付き長野側エンドは至高。元々この辺りの風景が昔からとても好きなのもあるんだけど、妻有の冬景色の中を走る飯山色の姿は何というか圧倒的に「ニッポンのタダシイ冬景色」だよなあ。ここで飯山色を撮りたいと考えていた構図でもあったんで、なんか大雪予報に億劫がらずに来て良かったよね。と妙にほっこりしてしまったよ(笑)。俺GJ。
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北信妻有冬景色

2018年01月22日 23時00分00秒 | 飯山線

(R353十二峠トンネル@南魚沼市上野)

関東地方でも大雪の予報に、気象庁からは「不要不急の外出は控えるように」とのお達しが出ていた月曜日。こんな事になるとはつゆ知らず有休を取っていたアタクシ。悪天候のトラブルを考えると出掛けようかどうしようか凄く迷ったんだけど、前々から「一日出掛けるからネ!」とヨメさん子供に根回しを行っていたのを天気のせいでホゴにするのは極めて勿体ない。元々クルマにはスタッドレス履かせているし、ヒサブリに雪道走りたかったと言う事もあるしってコトで北信方面にハンドルを向ける事にしました。塩沢石打ICから津南方面へ抜けるR353十二峠、度重なる雪崩のせいで樹木も疎らな峠道はいかにも雪国へのアプローチと言う感じがして気分が上がりますね。


もちろん今回わざわざ北信妻有まで来たのは、雪道をただ走るだけじゃなく、「去年のGWに追っかけ回した飯山線のキハ110飯山色を改めて雪景色で撮影してみたい」というかねてから温めていたミッションが本命です(笑)。この日のファーストショットは土市~十日町間の大黒沢跨線橋から123D十日町行き。十日町で40分のインターバルを取って改めて181Dとして越後川口に向かう列車なので、飯山色追っ掛けクラスタには飯山色が先頭で入るとかなりオイシイ列車なのですが…キハ110一般色2連ですか。今回は事前ネタがないのでまずは飯山色がどこに走っているのか探さなきゃならんのですけど、これで返しの182D→136Dに飯山色が入る流れが消えたね。


夜の間に降った新雪を軽くはたきながら163Dが小サミットを上がって来ます。これもキハ110一般色の単行。バックの針葉樹の雪付きも申し分なく、さすがに飯山線は冬の似合う路線でありますね。越後水沢~土市間の踏切で構えたんですが、足元から雪の冷たさが上がって来てもっそい寒い。線路際の雪壁が高くて構図の幅を広げるためには脚立はあったほうがよさげだねえ。

123Dでも163Dでも飯山色は現れず。これなら本数の多い長野側から攻めたほうが良かったんじゃないの~?と思われるのですが、飯山色2両のうちのおそらく1両は何となくアテがあるので、何となくのアテを信じて撮影場所のロケハンに向かう事に致します。
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