青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

浦山秋桜

2018年10月22日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(秋桜の中を@下立口~浦山間)

内山で折り返した工臨のハンドル訓練列車。返しはどこで撮ろうかと考えるのも面倒臭く、さっきの浦山付近のストレートでお手軽に。運転のハンドルを握るのは先程内山でお見掛けした若手の運転士氏。大きな屋根の立派な農家がいかにも持ち家率ナンバー1の富山らしいですな。デキの通過風で、線路端の秋桜も揺れる。


秋の爽やかな風吹く黒部耕土を、大きなパンタグラフを掲げて気持ちよさそうにデキ+ホキ編成のクルージング。これから稲荷町のいつものねぐらまでゆっくりと帰って行くのでありましょう。追っ掛けようかなあとも思ったんだけど、全くダイヤが分からないのでひとまずはここで見送ることに。もうちょっと黒部線界隈で撮ってみたいのもあったしね。


朝は雲一つない秋晴れだった越中路も、昼を過ぎて山の方から雲が湧いてきた。露出が下がる前に雷鳥カラーの14760系を回収。さっき特急くろべで宇奈月へ上がって行った編成が戻って来ました。やはり前パン側が撮っててもワクワクしますね。ちなみに普通電車だと宇奈月温泉から電鉄富山までは1時間半の長旅になります。黒部宇奈月温泉で新幹線に乗り換えれば富山までは1駅13分ですが…(笑)。しかも宇奈月温泉→電鉄富山が1,660円なのに対して、新幹線に乗り換えても自由席利用なら宇奈月温泉→富山は2,010円と僅か350円の差でしかない。特急料金の110円を払うようであれば、なおのこと差が縮まります。


そうなると、直接の宇奈月温泉~富山間の輸送を強化するよりは県内の都市間輸送、そして新幹線からのフィーダー化という流れになるのは自明の理。何となく今の富山地鉄は富山~上市・富山~立山圏内と、新黒部を中心とした電鉄黒部~宇奈月圏内に分化しているような感じも。国鉄在来線並行区間の魚津~滑川付近は、長距離輸送を北陸本線が、地域輸送を地鉄が担って住み分けていたはずだったのですが、北陸本線の三セク化によってニーズがより競合しているのよね。


どこの地方もそうですけど、滑川・魚津市内ともに鉄道の走る駅周辺の旧市街が空洞化していて、地盤沈下しているのも一因。そんな古き良き工業都市・魚津の象徴の一つだった電鉄魚津ステーションデパートはぶっ壊されて、エレベーター付きのコンパクトな駅舎にリニューアル。富山の地元行政の公共交通の活性化に対するバックアップ態勢は素晴らしく、駅をバリアフリー化し、コミュニティバスを駅に直結させ、何とか高齢化社会にアジャストした形に変貌を遂げていました。
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古典継承

2018年10月21日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(凸型電機のキャブ周り@デキ12021型)

センターキャブのデキ12021。四方が開いていて明るいキャブの中に、大ぶりなマスコンが前後に設置されています。あーいうノコギリの歯のような電気機関車っぽいマスコンを握ってカチカチとノッチを入れてくのってすっごく憧れる作業ですよね。まあ機関士の真似事がやりたければ碓氷峠の鉄道文化むらとか行ってお金払えばやらせてもらえるんだろうけど(笑)。ちなみに地鉄で現役の電気機関車はデキ12021の1両だけのようですけど、これを動かせる人ってどれくらいいるのだろう。見た感じ機関士さんお若い感じの方だったけど、やっぱり後継者養成のためのハンドル訓練なのかな。

 

特急くろべをやり過ごした後、デキの機回しのためにベテランの乗務員氏が線路に降りて、手旗信号でデキの誘導を始めました。進行方向に向かって割り出していくスプリングポイントだから、ポイントの転換はいらないみたいですね。定期列車のダイヤに支障する訳にはいかないと見えて、駆け足での作業になります。

  

宇奈月側から富山側に上り本線を使って大きく機回し。発進ごとにデキの短笛が山にこだまします。内山駅構内での機回しは、踏切を制御する地上子を踏まないためか構内踏切が下がりませんでしたね。見てるの私含め三人だけだったけど、撮影に夢中になって安全を欠くことのないように気を付けなきゃいけません。デキ12021型は、突き出たボンネットとカニのような小さな尾灯が愛らしい機関車です。どことなく遠州鉄道にいたED28とか、伊豆箱根の駿豆線にいるEDなんかと同じ匂いがするね。

 

最後はホキの富山側に連結して機回し完了。よくよく見るとデキの足回り、台車が渋い。東武の古い車両が履いてるミンデンドイツ式の台車みたいのに、大きな砂箱がくっついている。ワールド工芸の世界から飛び出してきたような機関車と貨車の組み合わせが、ドコドコドコドコ…というコンプレッサーの音も心地良く折り返しの発車を待っています。


撮影していた我々に「出ますよ~」という声がかかる。構内踏切が鳴らないまま、内山の駅を逆線出発するシーンをワンカット。デキが宇奈月や立山に入る際は、どちらも末端部分は推進運転となるらしい。今日は作業自体がないようなので内山折り返しでしたが、推進運転のシーンも見てみたかったなあ。まあ、それでも貴重な機回しのシーンが見られたのだから、良しとするか。

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内山凸日和

2018年10月20日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(山峡の小駅にて@内山駅)

浦山で突如アタクシを背後から急襲したデキ12021の工臨。撮るものもとりあえず、ひとまずひっつかんだカメラで走り去る姿だけを抑えたのだが…さあどうする。おそらく旅客列車の通常ダイヤを縫って走るのなら交換なり退避なりをするだろうという事で、ひとまず宇奈月方面の最後の交換駅である内山まで先回りする事に。ホームに上がってカメラを構えて待っていると、ほどなく構内踏切がカンカンと鳴り始め、淡いサーモンピンクの古典電機が秋の陽射しの中をゆっくりと進入して来ました。


波打って草生すホームも味わい深い、黒部峡谷に続く山峡の駅。内山の駅は、トンガリ屋根の木造の古びた空色の駅舎が特徴。この駅には以前にも来たことがあるのですが、なかなかいい雰囲気の駅です。ゆっくりとポイントを分岐して駅舎側のホームに滑り込んだデキ工臨の何とも絵になる姿。鉄道模型好きな人にとってはたまらなさそうな、ローカル私鉄らしいモジュール感があります。


いかにも地方私鉄らしい凸型電機であるデキ12021型は、昭和33年東芝製の古豪。国鉄の黒部駅から黒部川第四発電所の建設のための資材運搬を主目的に製造された機関車で、製造当時は黒部ダムの施工主である関西電力のマークが付けられていたそうです。今ではこうやってたま~にホキを引っ張っての沿線のバラスト散布など、保線作業に駆り出されているのが主な仕事のご隠居さんですが、延べ一千万人の作業員を投入した昭和史に残る土木工事を、陰から支えた功労者でもあります。


そういう用途の機関車なので、最初はバラスト散布のための工臨なのかなと思ってたんですけど、どうも後ろのホキにはバラストどころか何も積まれていません。ほどなく乗務員氏が降りて来て、ブレーキ管を外してデキとホキを切り離してしまいました。バラしちゃうのか。どうやらこの駅で機回し(機関車の前後付け替え)を行うようです。


デキを追っ掛けて来た地元氏がいたので話を聞いてみると、「宇奈月温泉の駅の構造的に機回しが出来ないので、いずれにしろ宇奈月方面に行くには内山から後方にデキを付けて推進運転を行うのだが、今日はバラストも積んでないし宇奈月まで行くとは思えない」との話。最近はマニアの方々が有志を募ってこのデキ+ホキ編成を撮影用の列車(フォトラン)として走らせることもあるそうですが、今日はその一環なのかしら。


機回し作業の途中で、特急くろべと交換。うわー、このシーンは14760で撮りたかったぜ。しかし腑に落ちないのが、フォトランならフォトランらしく追っ掛けの撮影者でも居てもよさそうなものの、この光景を撮影していたのは私ともう一組の追っ掛けの方々のみ。その方々も、「さっき見たんで慌てて追っ掛けて来た」と言うばかりで、果たしてこれはフォトランでもなさそう…こんな三連休のど真ん中に、このようなハンドル訓練が施行されるものなのだろうか。

謎を残しつつ、内山の機回しは続くのであります。
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浦山邂逅

2018年10月19日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(棚田を横目に@栃屋~若栗間)

ゆるゆると黒部川の扇状地に広がる棚田を降りて来た16010系。実りの秋の風景。そう言えば最近新しい富山のお米がデビューしたなんて話をよく聞きますね。コシヒカリをベースに改良に改良を重ねた品種で、「富富富」と書いて「ふふふ」と読むのだとか…「米どころ」としてのネームバリューは隣県の新潟に叶わなくとも、耕地における水田の面積のパーセンテージは富山が日本一なんだってね。確かにあまり「富山の野菜」というのは聞いたことない。富山と言えば海産物とコメと銀嶺立山(日本酒)だよね。


前の日から含めておよそ一昼夜もの間、地鉄を中心に写真を撮り続けていると、さすがにちょっとくたびれ感も出て来ます。まあ宇奈月温泉まで撮り進めればとりあえずは一区切りだしな。宇奈月温泉で昼メシと温泉にでもしようかな。そんな事を考えながら、浦山のちょいと先で三脚を構える。別にどって事のない風景だったんだけど、架線柱のない側が順光で撮りやすいストレート。かぼちゃ京阪がこちらもまったりと宇奈月へ向けて坂を登って行きます。

さて、次の電車をどこで撮ろうかってんで三脚をしまおうとした時、少し先の踏切が鳴り出した。一応地鉄電車の時刻表を見ながら移動しているので、こんな時間に通過する電車なんかないはずなんだけどな。なんて宇奈月方に向けて目を凝らしていたら、後ろの方からいつもの電車とは違う音が…


!?!?


突然私の目の前に現れた、地鉄唯一の電気機関車であるデキ12021号機。2両のホキを連れて、悠然と目の前を過ぎ去って行った。稲荷町の車庫の端っこで日向ぼっこしている姿しか見た事なかったあの凸型デキが何でまたここに…?工臨、なのか?

どうする?

 ⇒追う
  追わない

追うしかないよね。
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新黒部思案

2018年10月17日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(新たな役割@新黒部駅)

北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅開業に伴って開設された新黒部駅に滑り込む14760系「特急くろべ」。エリア特急の名前の通り、電鉄黒部~宇奈月温泉間のショート運用。当然ながら新幹線を使って宇奈月温泉~黒部峡谷方面へアクセスする観光客を狙ったものです。東京8:55発のはくたか555号に接続するくろべ23号。三連休の中日でもあり、荷物を持った観光客が宇奈月温泉行きの特急を待っています。


北陸新幹線が開業したことで、黒部宇奈月温泉駅からは宇奈月温泉方面だけでなく黒部、魚津、滑川など富山湾沿岸部の工業都市へのアクセスも期待される地鉄本線。以前は富山から宇奈月温泉までは距離も長く運賃も高くで、いくら特急を走らせてもJRで魚津乗り換えのほうが圧倒的に早かったですからね。富山からの長距離輸送に力を入れるより、地鉄本線の黒部エリアは新幹線を中心としたフィーダー路線として生き残る道を選ぶのは自明の理と言ったところ。「特急くろべ」はその象徴とも言える存在です。


ただ、宇奈月温泉の大型旅館はマイクロバスで直接新幹線の駅までの送迎を行うところもあったりで、地鉄電車の利用者がどこまで増えるかは未知数。車でも15~20分くらいですからねえ。駅周辺には新幹線の利用者向けの広大なパークアンドライド用の駐車場もありますし。対抗策として地鉄も新黒部~宇奈月温泉の往復割引切符や「くろワンきっぷ」という黒部市内のワンコインフリー切符を地元と連携して利用促進を図ったりしていますが、その効果やいかに。
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