tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良交通・古事記をめぐるバスツアー「畝傍コース」、やじうま同乗記

2012年09月16日 | 奈良検定
いよいよ昨日(9月15日)から、「まほろばソムリエと行く!『古事記』をめぐるバスツアー」(旅行企画・実施=奈良交通、協力=奈良まほろばソムリエ友の会)がスタートした。全6コース(各コース2回実施)で、コース内容は、

パートⅠ(パンフレットはこちら、HPはこちら
(1)畝傍・香久山山麓に伝わる愛と絆の物語をたどる(@5,800円)
■平成24年9月15日(土)、23日(日)

(2)古事記成立の立役者!太安萬侶と稗田阿礼ゆかりの地をゆく(@5,800円)
 ■平成24年10月14日(日)、28日(日)
(3)葛城山麓に鎮座する神々と出会う(@6,000円)
 ■平成24年11月4日(日)、10日(土)



橿原神宮(後方は畝傍山。写真はすべて9/15に撮影)

パートⅡ
(4)神武東征の軌跡をたどる(@5,800円)
 ■平成24年12月1日(土)、16日(日)
(5)御所・葛城に黎明期の大和を訪ねる(@5,800円)
 ■平成25年3月10日(日)、17日(日)
(6)悲劇の英雄・ヤマトタケルの生涯に迫る(@5,800円)
 ■平成25年3月24日(日)、30日(土)


橿原神宮参道で

すべてのコースに昼食がつき、奈良交通の添乗員さん(1名)と奈良まほろばソムリエ(2名)が同行する。「これはぜひ訪ねなければ」と、9月15日の「(1)畝傍・香久山山麓に伝わる愛と絆の物語をたどる」コースに参加した。橿原市内をめぐるコースである。現地ガイドは、奈良まほろばソムリエの亀田幸英さん(午前の部)と前田昌善さん(午後の部)。どちらも橿原市在住のジモティである。

当日は最高気温が32℃という真夏日になったが、ご参加者全員、楽しく橿原市内の古事記ゆかりの地をめぐってきた。「まほろばソムリエと行く!」というキャッチコピーが効いたのか、「奈良まほろばソムリエ合格をめざしています」という方も、結構いらっしゃった。以下、当日の配布資料に基づき、ツアーの様子を紹介する。


向かって右端が亀田幸英さん、その左が前田昌善さん。できたばかりの制帽をかぶっている

1.橿原神宮(橿原市久米町)
 祭神:神武天皇、皇后媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ、日本書紀)。
神武天皇は、天孫・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)より4代目にあたり、第1代天皇の位につき、神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと、古事記)、神日本磐余彦火火出見天皇(かむやまといわれひこほほでみのすめらみこと、日本書紀)、ともいわれる。皇后の媛蹈鞴五十鈴媛は、比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ、古事記)ともいわれ、「古事記」では大物主命、「日本書紀」では事代主命の姫神である。
<神武東征の物語と丹塗り矢型神婚説話がある>
由緒:明治23年(1890)3月、橿原神宮と名付けられ、官幣大社。明治天皇より京都御所の賢所(現在本殿)と神嘉殿(旧神楽殿、現在の神楽殿は平成8年再建)を賜る。昭和15年、紀元2600年記念大祭斎行。境域約16万坪の整備拡張事業には全国から延べ約121万人が勤労奉仕。約8万本の樹木が献木された。
最も重要な祭典:2月11日の紀元祭。



2.神武天皇陵(橿原市大久保町)
陵名:畝火山の北の方の白檮尾上(カシノヲノヘ 古事記)、畝傍山東北陵(うねびやまうしとらのみささぎ、日本書紀)
形式:円丘。周囲100m、高さ5.5m
領域:東西500m、南北400m
文久年間(1861~64)の修復時にきわめて大がかりな工事が施され、その後昭和15年の皇紀2600年に至るまで何度か整備工事実施。


神武天皇陵

神武陵は古事記、日本書紀、延喜式の文献に明確に記録されている。夫々の時期に神武陵とされていた場所が存在していた。江戸時代の探索においても以下の3か所の有力候補地があった。
①現在第2代綏靖天皇陵の「塚山」。
②現在の神武陵の領域内の「丸山」も丘陵上に位置することから「古事記」にある「白檮尾上」の記述と一致するとして候補になったこともある。
③最終的に「神武田」と呼ばれていた現在地にあった小丘に決定され今日のように整備された。



綏靖天皇陵。右端の制帽は、小北さん(「奈良まほろばソムリエ友の会」会長)

3.綏靖天皇陵(橿原市四条町)
陵名:衝田崗(つきたのをか、古事記)、桃花鳥田丘上陵(つきだのおかのえのみささぎ、日本書紀)
御名:神沼河耳命(かむぬなかわみみのみこと、古事記)、神淳名川耳尊(かむぬなかわみみのみこと、日本書紀)
<夫を裏切ってでも子を思う母親の気持ちが伝わる物語がある>

※注:綏靖(すいぜい)天皇は、第2代天皇。桃花鳥(つき)とは、特別天然記念物のトキ(朱鷺)のことである。翼や尾羽が淡紅色なので「桃花鳥」という名がついた。


ほうらんやの里山弁当(1,050円)

このあと、かしはら万葉ホール5階の「奈良の里山料理 ほうらんや」でランチタイムとなった。同店は県の「眺望のいいレストラン」に選ばれている。写真はこの日いただいた里山弁当(1,050円)。同店のHPによると《当店名物【里山弁当】揚げたて天婦羅やこだわり野菜の炊合せなど、季節ごとの味覚を楽しんでいただける数量限定、当店の名物ランチ。季節のお料理を楽しんでいただくため毎月、献立が変わります》とある。


鷺栖神社

4.鷺栖神社(さぎすじんじゃ、橿原市四分町)
祭神:(右殿)天児屋根命(中臣氏の祖神)春日神(中殿)誉田別命(15代応神天皇・品陀和気命)八幡神 (左殿)天照皇太神
社格:旧郷社
由緒:境内の由緒略記によると第11代垂仁天皇の皇子の本牟智和気王(ほむちわけのみこ)が出雲大社にご参拝の折、ここに立ち寄られたことになっているが、古事記ではお供の曙立王(あけたつのみこ)の話として語られている。
<垂仁天皇の父親としての愛情が伝わってくる物語がある>
藤原京以前の旧社。中古より鷺栖八幡と称せられていたとのこと。
社殿:本殿流れ造り、拝殿土蔵、社務所。万葉歌碑あり。



畝尾都多本神社の拝殿。「下見に行ったら蚊が多かった」という事前情報により、
奈良交通さんは虫よけスプレーを用意されていた。おかげで刺されなかった


畝尾都多本神社のご神体は、この井戸である(これ以上は近づけない)

5.畝尾都多本神社(うねおつたもとじんじゃ、橿原市木之本町)
祭神:啼沢女命(なきさわめのみこと)
社格:旧村社
由緒:創建年代不詳、古事記上巻に「坐香山之畝尾木本、名泣澤女神」、万葉集より持統10年(696年)には存在していたと思われる。
社殿:本殿はなく、井戸をご神体とする。祝詞舎,拝殿、絵馬殿、社務所。
境内社:八幡神社、厳島神社、稲荷神社。古来この神社の境内全体を「泣沢の森」といい、「埴安の池畔」にあって水神だった。万葉歌碑あり。
<イザナキノミコトの妻を失った夫の悲しみが伝わる物語がある>

※注:啼沢女の神は、イザナミの死を悲しんで泣いたイザナキの涙から生まれた神さまである。


天岩戸神社拝殿


天岩戸神社では、巨石がお祀りされている

6.天岩戸神社(あまのいわとじんじゃ、橿原市南浦町)
祭神:天照皇大神
由緒:記紀にみられるアマテラスオオミカミの岩戸隠れされた所と称し、今も巨石4個があってオオミカミの幽居した所と伝える岩穴をご神体とし、神殿はなく、拝所のみという古代人の原始的なお祀りの形を残す。
<天の岩屋戸の物語がある>





天香山神社拝殿


天香山神社本殿

7.天香山神社(あまのかぐやまじんじゃ、橿原市南浦町)
祭神:櫛真神(くしまのかみ)
社格:旧村社
由緒:神武天皇紀に「天香山社」
社殿:本殿春日造、拝殿、神饌所、手水舎、社務所。
境内社:春日神社、八幡神社
日本書紀の「神武東征」物語に出てくる天香具山の「赤埴(あかはに)聖地」の碑あり。また、古代の占いに使われたという「波波迦の木(ははかのき)」もある。本殿裏に磐座と考えられている岩がある。万葉歌碑あり。



本殿裏にある磐座(いわくら)


天香山神社境内の万葉歌碑。「久方の天の香具山この夕べ 霞たなびく春立つらしも」(柿本人麻呂)。
末永雅雄氏の揮毫。「下見に来たら泥まみれだったので、文字のところを洗っておきました」(前田さん)

8.国見の丘(香具山中腹)
34代舒明天皇が国見をした所。大和の国見の歌碑や、「白埴聖地」の碑もある。佐佐木信綱の歌碑もある。展望は抜群。


国見の丘で(トップ写真とも。眺望がよく耳成山も見渡せる)

それにしても、行き届いたガイドであった。座って話が聞ける場所をあらかじめ用意されたり、古地図や花の写真など具体的に目に見えるツールを準備されたり、虫除けスプレーをの必要性を指摘されたり、泥だらけの石碑を洗っておかれたり…。ジモティ(地元住民)ならではの繊細な気配りの感じられるガイドぶりだった。


香具山の麓では、ホテイアオイが咲いていた

私は「(3)葛城山麓に鎮座する神々と出会う」「(5)御所・葛城に黎明期の大和を訪ねる」「(6)悲劇の英雄・ヤマトタケルの生涯に迫る」の3コースをガイドするのだが、こんなに上手にガイドできるか、心配になってきた。もう一度下見に行かなければ…。

このバスツアー、「(1)畝傍・香久山山麓に伝わる愛と絆の物語をたどる」の9/23実施分はすでに満席、「(2)古事記成立の立役者!太安萬侶と稗田阿礼ゆかりの地をゆく」の10/14実施分と「(3)葛城山麓に鎮座する神々と出会う」の11/4実施分は残席わずかだが、他はまだ余裕があるので今からでも十分申し込める。お申し込み・お問い合わせは、奈良交通総合予約センターへお電話いただきたい。土・日・祝も受付されている(10/14と11/4ご希望の方は、ぜひお早めに)。こんなに充実したツアーなのに昼食つきで@5,800円~6,000円とは、激安である。
℡ 0742-22-5110

ここへ来て県下でも『古事記』に関する様々なイベントが行われ、いよいよ「古事記ブーム」の様相を呈してきた。皆さん、この機会にぜひ「まほろばソムリエと行く!『古事記』をめぐるバスツアー」に参加され、ご自分の目でゆかりの地をシッカリと見てきていただきたい。



コメント (4)
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