tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良まほろばソムリエ 合格体験記(by Yさん)

2014年05月01日 | 奈良検定
 改訂新版 奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック
 網干善教監修
 山と溪谷社

今年(2014年)実施された第8回奈良まほろばソムリエ検定(奈良検定)で、最上級の「奈良まほろばソムリエ」に合格されたYさんが、Facebookに合格体験記(奈良ソムリエ検定への道)を連載された(4/15~22)。これからソムリエに挑戦される方にはとても参考になると思うので、以下、少し縮めて紹介する。Yさん、有益な連載を有難うございました!

■今年ようやく奈良まほろばソムリエに合格できました。ということで、ここに至るまでの道を記憶にある限り、記録に留めおこうと思います。この検定に興味のある方には参考になるかもしれません。

それは2006年に始まります。この年、2007年から京都に負けないように「奈良も奈良検定を開始するぞぉ」というお知らせがありました。ちょうど地方検定ブームが来ていた時です。まあ、奈良に生まれ奈良に育った私ですから、「じゃあ県民としてのパスポートをもらおうか」と志したことに始まります。

■公式テキストブック(山と渓谷社刊)から2級の場合9割が出る、と言われれば買わずにおれますまい。第1回(2007年)試験問題をやってみました。まあ6割ぐらいか、奈良に生まれ育った強みで正解をだせるのは。やはりテキストを一読して、知識を整理しないといけないようです。高校時代、先生からこんなことを言われました。「その本に書いてあることを身につけるには、13回読みなさい」と。13回の根拠は知らないけれどそれ以降、何ごとも覚える場合13回繰り返して読んできた私です。

しかしテキストを買ったのが10月、試験は2008年の1月、量的に無理なのは誰でもわかります。1回ですら危ない。なんせページ数351ページです。まあ、項目だけでも見ておこう。満点なんてねらう必要はない、70点でいいのです。2008年1月、試験に臨みました。一発で、すれすれ合格! 100点であれ70点であれ合格は合格です。無理して100点を狙うべからず。

2級はそんなにマニアックな問題はでません。しかし範囲は広い。地勢、歴史、史跡、神社、仏閣、御陵、古墳、伝統行事、お祭り、仏像、建築物、名物 等々。2級の「認定支援セミナー」もあるが、特に必要でないかも。ちなみに第2回(2008年)の2級は 1348名受験 合格471名 合格率34.9%。最高年齢83歳 最低22歳 最高点96点となっていた。さてこれから長い長い1級合格の道へ迷い込む。
 

[ P R ]
 奈良が分かる絶好の手引き書!

 奈良「地理・地名・地図」の謎
 NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」監修
 実業之日本社(じっぴコンパクト新書) 762円

■ここで2年間ブランクをおく。慌てず騒がず、じっくり作戦を練ろう。1級受験資格にはさらに、奈良商工会議所のトラップが仕掛けられていた。「体験学習プログラム」を受けないと1級は受験できないのである。いろいろある。奈良交通とタイアップしている。なんとか奈良にお金を落としてもらおうと奈良商工会議所も考えている。私はこれを受けた。「宮司と巡る境内 春日古地図の世界」。これはなかなかよかった。

今もこれがあるのかどうかわからないが、勉強になった。毎回これを体験しないといけないのかなと思っていたが、1回だけで良いようである。春日大社宮司の花山院さんとお近づきになれた。これは貴重である。春日大社の灯籠には「春日社」「春日大明神」ともう一つわすれたが、彫込んである。その「春日大明神」と彫られた灯籠を探すといいことがあるらしい。15本程しかないらしい。約3千基ある灯籠から探すのは至難の業である。宮司さんもすべて知らないらしい。まあ、こんなことは試験にはでませんが。

ちなみに1級を解いてみたが、難しい。これではとても通らないと思った、現地を見るのがやっぱり良いと思い、ここから奈良県内をめぐる旅が始まったのである。まず、神社を制覇しよう。手頃なところから片っ端から行って、体で感じた。神社はテキストに61か所載っている。今でも58か所で、全制覇はできていないが、それでも十分であろう。

2010年、1級に挑む 惨敗、64点。あと6点 おしい~。一度で合格できるとは思っていなかったが、ここでさらに闘志を燃やす。もっといろんな本を読まねば、テキストも隅から隅まで13回読まねば。この時の1級は 540人受験 183人合格 33.9% 最高年齢90歳 最低年齢27歳

■2008~2010年はひたすらテキストを読み、過去問を何回もやり、新聞に奈良ネタがでれば詳しく読み、本屋では奈良関係の本が出ればすぐ買い込み、読破するということを実践しました。そらあ私、世界史は勉強しましたが、日本史は勉強していないので、中学生レベルです。


検証 平城京の政変と内乱 (学研新書)
 遠山美都男著
 学研パブリッシング

そんな、長屋王から孝謙天皇までの政変や藤原家の陰謀なんてテストに出ても答えられませんもん。でもここがよく出るんですよ。で、買ったのが前に紹介した遠山美都男著『検証 平城京の政変と内乱』(学研新書)。これは良いと思いますよ。私が試験に臨むに役に立ったのが、中学生の時に覚えた 天皇の名の系譜です。今でも、神武、綏靖(すいぜい)…ってリズミカルにでてくるので、これはラッキーです。なんでも覚えておくもんですね。

さて2011年2回目 1級挑戦。おおおお、69点。ガク!!! これほど悔しい思いをしたことがありません。おまけに、終了近く迷っていた5問ほどを見直し、変更した結果、前の答えがあってたのが3問ほどあったという状況。この年の試験は過去問がたくさん出て合格率が高く、大量に合格者を出した年でした。そこでしくじるとはトホホホ、という感じです。心がくじけそう、来年も挑戦する意欲が残るのか、あきらめるのか、そらもう沈んでしまいましたわあ。

■ソムリエ検定には2級、1級、ソムリエに奈良商工会議所主催の「認定支援セミナー」が開催される。10月~12月頃に開催されるが、もう少し早くてもいいのではないかと思うのであるが、たぶん試験問題がまだ完成していないので、ヒントになるような支援セミナーができないのではないだろうか。

なぜなら、この支援セミナーから何問か関連問題が出るからである。テキスト以外から出題されるというのはこういうことであろうと、試験を受けた後わかるのである。私も1級の時は2回、ソムリエの時も2回講座を聞いている。

2011年、なんとかモチベーションを維持しつつ、試験に臨むに当たって。まず
1)過去問は分野別に整理した。
2)自分の知らないことが新聞に出れば、切抜き、整理した。
3)仏像なんかは現場でスケッチを描いて、配置位置を確認した。もう、ほとんど病気かも。
4)もちろん、奈良の書籍が出れば購入する。月刊『大和路 ならら』も愛読書となる。

とかなんとか言っても、思考はソムリエ合格に向かっており、この頃より活発に奈良の各地を訪れるようになった。(体感・イメージが大事と思っている。感動を採点者に伝えるタッチが必要でしょう、と勝手に思っているが)ウォーキングや山登り、聖蹟巡りも趣味なので、一石二鳥で楽しい時間を過ごせる時代の到来となった。

2012年3回目TRY、1級合格できました。88点ぐらいだったでしょうか。ここでやっと胸をなでおろしたのですが。この年は、357名受験 202名合格 56.6% 最高82歳 最低21歳です。合格率も上がってきましたね。受験者が収斂されてきたと思います。【さあ、続けてソムリエ挑戦だ。!】闘志がメラメラと燃えてきたのです。


 奈良時代一周~まほろばを歩く
 来村多加史著
 日本放送出版協会

■ソムリエの「認定支援セミナー」、結構人気である。定員は200名。応募開始の日に申し込まないと、受けられない可能性がある。というのも何問かはここで配布される資料の中から出題される。セミナーは阪南大学・来村(きたむら)多加史教授と関西大学・高橋誠一教授のお話の2部構成となっている。来村先生はテレビにもたまに出演される有名な先生で、今どきの先生という感じである。先生は論文の書き方の説明と、何やら試験対策資料を配布され、早口でそそくさと説明される。

この配布資料が曲者で、6~7項目、大きなジャンルでまとめられている。例えば、奈良の主なダムと川とか 各種遺産とか特別遺跡とか ソムリエの選択問題を見ればわかるが 必ずといっていいほど この資料から6~7項目出題される。つまりこの資料を手に入れれが、6~7問答えられる可能性が出てくるということだ。だから、このセミナーは誰もが真っ先に申し込む。

ダムと川なんて公式テキストブックに載っていない。必ず1問出ると確信した。やっぱり出た(2013年)。2013年11月頃のセミナーを受けた時も、前年の資料に少し加えた形で配布された。枕詞の一覧があった。これも出ると確信したが、予想通り出た(2014年)。ということで来村資料は重要なのである。

高橋先生はいつも25000分の1の地図を配布され、高橋節で語られる。味のある口調できっと学生のファンも多いであろうと思う。記述式の論文に出るかもしれない範囲を織り込みながら一言二言語られるのであるが、どこかはなかなかつかめない。ただ、配られる地図は、桜井、信貴山、大和郡山、吉野山、大和高田、奈良とかいった範囲である。「それって、奈良のほとんどやん」って思って聞いているのであるが、ところどころにキーワードが出るのを聞き逃してはならない。集中力のいるセミナーである。2012年と2013年二回聞いたのであるが、いつも同じ地図である。二回目は違うと思っていたが同じであってすこしガックリきたが。


 奈良県の歴史散歩〈上〉奈良北部
 奈良県高等学校教科等研究会歴史部会編
 山川出版社

■「ソムリエ」試験の特徴はガイド記述が1問と説明記述が2問あるということ。ガイドの組み立て方法をやはり勉強しないと、とっかかりがわからない。そこで、購入したのが 『奈良県の歴史散歩』(奈良北部と奈良南部)。この本は、奈良県のすべて、検定範囲のすべてを含んでいて申し分ありません。

どこをどのように回って観光するか、いろんなコースが組み立てられていて、すばらしい本である。公式テキスト本以外のポイントもあります。また、コラムと称するコーナーの記述は試験に出る内容がうまくまとまっているなあと思い、よく読みました。ここから試験問題が作られてるのでは?と思うほどです。

この本片手に2012~2013年はくまなく奈良県内を見て、聞いて、感動して肌で感じてきました。(2013年の試験は不合格でしたので。61点でした)。2013年12月までに本の紙のカバーは3回ぼろぼろになるほど使いこなしています。

 奈良県の歴史散歩〈下〉奈良南部
 奈良県高等学校教科等研究会歴史部会編
 山川出版社

合格に向けて取り組んだことをあげますと。
1.駅から歩いて駅に戻るというコースを作る。
2.ポイントとなる地区に着くと、駅からの分数や距離を記録する。万歩計必須。
3.区間~区間の記録も残す。区間~区間の間に見たもの聞いたもので特徴的なものも記録に残す。まあデジカメで記録する。
4.帰宅後、そのストーリーを記述しておく。

というような具合で、主要となるコースを奈良、郡山、天理、北葛、宇陀、吉野、御所・五條、桜井、明日香、柳生、橿原あたりをおさえておきます。これがベースとなります。私の場合は、公式テキストの掲載箇所・全制覇という目標をたてたので、車も電車も駆使しながら、めぐりました。(最終的には347か所中324か所ですが)

縦軸に神社、寺、古墳、陵墓、史跡、自然 とし、横軸に奈良、郡山、と地域を配し、マトリックスのエクセルを作成。そこへ、行った印をつけていきました。行くたびに達成度が%で上がる表です。このマトリックスが縦軸、横軸とも80%を超えた時合格の可能性はあるだろう、と自分に言い聞かせ各地を巡ったのです。(実は60%ぐらいの時に2013年の試験を受けたのですが、不合格でした)。そして90%超えた状態で2014年の試験に臨んだのです。

コースガイドで採点者に「あれ?」と思わすのには「人が気づかないポイント」を組み込み、コースを組み立てるのがいいです。誰でも書くような内容では面白味はないですからね。でも、普通に記述しても半分は取れるでしょうから。選択問題を80%ぐらい取れれば、合格ができると思います。70点でいいですからね。

そこで私は、各地を巡ってまとまってきた段階で、塚シリーズや変な地名シリーズ、廃寺跡シリーズ、瓦窯跡シリーズ、能発祥地シリーズ、環濠集落シリーズなんかをまとめていた時もあります。とにかく現場での体感、これが大切です。体感が文章ににじみ出ればOKです。少々字が汚くっても、字が間違っていても半分はとれます(実は私、字を間違って記述していました)。

 チャレンジ奈良検定 出題全問+必勝整理ノート
 毎日新聞奈良支局編
 毎日新聞社

■「ソムリエ」の試験は2014年から配点が変わった。2013年までは選択式1問2点で30問、記述問題が10点2問、ガイド文が1問20点であったのが、2014年は選択式1問2点で25問,記述説明問題が15点2問、ガイド文が1問20点となった。選択問題より記述問題にウェイトをおいた形に変わった。より正確な知識とガイドセンスが問われる。

といっても、ガイドセンスに点数を加点されるのかどうかは知らないが。本来はガイドの点数にはそういうセンス加点、企画加点があってもおかしくないと思うのである。選択問題は基本80%以上正解しないと合格は難しいと思う。記述問題で100%を目指すのは難しい。60%ぐらいとみておくのが無難。

記述式のポイント。過去問を整理すると、1回も過去問は出ていない。いつも新鮮な問題なのである。逆にそれは、まだ出ていない項目が出るということで、そこと事前セミナーとを深く考えれば何かが出てくる。5問中2問選択の記述式であるから2つさえ当たればOKである。

今回、事前セミナーでは、峠の話をす~っと話された。北から順番に水越峠まで流しただけであるが。これは、ポイントの一つである。次にキトラ古墳と高松塚古墳と天武・持統天皇陵が直線に並んでいるという話をされた。(たまたまでしょうが)。重要な古墳で大ものとしてはなぜか「キトラ古墳」は出ていない。

それと伝統行事は何かしら出るときがある。去年は「お水取り」が出題された。これはズバリ当たった。そこで、まだ出ていない伝統行事で出そうなのが「題目立(だいもくたて)」とみて的を絞って説明文を頭に叩き込んだ。峠1問とキトラ古墳、題目立は準備しておいた。それと、出ていない地域として御所、五條 歴史としては天誅組にフォーカスした。

2014年、目を疑った。峠は 竹内峠(問題はガイドの方に竹内街道として)、キトラ古墳、題目立がものの見事に出題された。我ながらしてやったりである。キトラ古墳と題目立を記述した。ガイド文はどこが出題されても、いろんなものをつなぎ合わせて、その主要ポイントを織り込みながら記述する自信はあった。問題は特異性、企画性である。

ガイドは5問からの1問選択となる。「甘樫丘」が出題されていたので、これを選択。明日香である。10回ぐらい通っている。通常ガイドをするなら 飛鳥駅か岡寺駅からであろうが、ここで企画性を出すため、近鉄畝傍御陵前から案内を開始し、最終「甘樫の丘」に到着するコースを組みたてた。実際にそのコースを歩いたので、情景を浮かばせながら記述するだけである。

コースは 本薬師寺跡~紀寺跡~大官大寺跡~豊浦寺跡~甘樫の丘という「廃寺跡を辿る明日香」をガイドした(実際はさらに定林寺跡、坂田寺跡、川原寺跡と歩いたのであるが)。途中、上飛騨町に触れ、大官大寺跡からみる天香具山の秀麗な眺めに触れ、その思いをこめた。これがどのように点数が取れたかはわからないが、なんせ字は汚いし、漢字は間違ったので印象は悪い、採点者に読む気を起こさせない。 こういう結果を是非、フィードバックしてほしいものだ。

■いよいよ最終章。たどった道を締めくくりましょう。ここまで辛抱強く読んでいただいた読者の方はおられるのでしょうか。もし、おられたら大変ありがたいことです。感謝!感謝!です。まあ、奈良まほろばソムリエにこれから挑戦しようという方には、ちょっとは参考になればよかったかなと思いますし、興味のないかたもこれで少しでも興味を持っていただけたなら、うれしい限りです。

まあ、でも検定試験はいつまで続くかわかりませんが、年々受験者が減少してますから。そらそうですよねぇ、最初に興味を持ってる考古学ファン、歴史好き、奈良ファンがどんどんソムリエに到達してますから、新しい方々が増えない限り減りますよね。ここらに、この検定の課題があって、何か仕掛けをしないといけないでしょう。

2008年から奈良検定挑戦し、試験は6回受けて、ようやくソムリエに辿り着いたのですが、次の目標がいりますね。奈良にどっぷり貢献していきましょう!


うーん、これはすごい。私の場合は、ソムリエに合格した後で、たくさん本を読んだり現地を訪ねたりした。受験前にこれだけの準備をされるというのは、心底大変なことだったろう。Yさんは別のところで「苦節6年、よくぞ気力を維持できました。『奈良検定 ソムリエ級』合格いたしました ああああ。超うれしい」とお書きだった。

Yさんの推薦図書は「奈良まほろばソムリエ合格者の推薦図書」というブログ記事に書いたので、あわせて参考にしていただきたい。私はいろんな図書を中心に勉強し、その要点をサブノートにまとめて覚えた(図書1冊につきサブノート1冊)。

よく「最近はめっきり記憶力が落ちてきて…」と嘆く方がいるが、私は「若い頃の記憶力が、相当良かった人なのだなぁ」と思ってしまう。私は若い頃から暗記物が苦手だったので、今もさほど変化はない(記憶力の悪いまま)。だから昔も今も「要点をノートにまとめる」、つまり「手を使って覚える」という原始的な方法に頼っているが、やはりこれが一番確実であるし、記述式の良い訓練になる。

結局、奈良まほろばソムリエの受験対策は人さまざまだろうが、
1.『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』および『奈良県の歴史散歩』(上・下)を読みこなす
2.可能な限り(時間の許す限り)、現地に足を運ぶ
3.奈良商工会議所の「認定支援セミナー」を必ず受講する

という点は、ほとんどの合格者に共通しているのではないだろうか。

奈良まほろばソムリエ合格者は、過去6回の試験でちょうど360人となった。NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の会員も、この調子だとまもなく260~280人程度になりそうだ。ソムリエに挑戦される皆さん、ぜひこの合格体験記を参考にされ、来年の合格をめざしてください!
コメント (4)
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