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女のいない男たち by 村上春樹

2014年05月04日 | ブック・レビュー
 女のいない男たち
 村上春樹
 文藝春秋

村上春樹の新作『女のいない男たち』(文藝春秋社刊)を読んだ。急いで読むのはもったいないので、6編の短編を1日1編ずつ、ドキドキしながら6日間かけて読んだ。
この新作は、どんな本か。ガジェット通信の「新刊レビュー 村上春樹著『女のいない男たち』 女性の謎めく“神秘”を感じる6つの短編」によると、

(書誌情報)村上春樹9年ぶりの短編集。「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」。表題作は書き下ろし。

(読みどころ)まず村上春樹さんに珍しく、“まえがき”があることに注目。それぞれ作品のテイストが違うので、好みも作品ごとに分かれると思う。個人的には「シェエラザード」「女のいない男たち」以外は、村上さんにしてはわかりやすく、読みやすい作品だった。

どれも村上さんらしい幻想的な世界観は、ふんだんに表現されている。言われてみれば、ありふれているような感情が、ありふれていない表現で表されているのが、いつもながらすごい。全体を通して、男たちを囚えて離さない女たちの姿に、女性の謎めく“神秘”を感じた。


作家の小野正嗣氏が「本よみうり堂」に寄せた書評が、私の感覚にピッタリくる。読後の印象を漢字1文字で表せば「容」だそうだ。

「容」自我という容れ物…小野正嗣さん
村上春樹は呼吸するように物語の魔法が使える。その物語の容量はとても大きい。個々の短篇(たんぺん)からは、車、店、家といったモチーフを通して、容(い)れ物としての自我という主題が浮かび上がる。登場人物たちは、うまく解決できない問いに苛(さいな)まれつつもそれを受容している。

どの自我にも傷やひびがあり暗い破局に脅かされている。欠損を修復し均衡を回復するにはどうすればいいのか? 肌を寄せる相手がいないときに? 容器に他者の物語を受け入れるのだ。言葉に満たされた自我は変容を遂げうる。一篇が「シェエラザード」なのは示唆的だ。本家『千夜一夜物語』で同名の王妃は生きるために語り続けるが、実は物語は耳を傾ける側にこそ生きる力を与える。


6つの作品はそれぞれ味わいが違うが、一貫するモチーフは「女のいない男たち」だ。村上自身の言葉を借りると《いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち》(本書「まえがき」より)。また村上は「まえがき」こんなことも書いている。

短編小説をまとめて書くときはいつもそうだが、僕にとってもっとも大きな喜びは、いろんな手法、いろんな文体、いろんなシチュエーションを短期間に次々に試していけることにある。ひとつのモチーフを様々な角度から立体的に眺め、追求し、検証し、いろんな人物を、いろんな人称をつかって書くことができる。そういう意味では、この本は音楽でいえば「コンセプト・アルバム」に対応するものになるかもしれない。

6つの短編それぞれのごく短い「あらすじ」が、Facebook「女のいない男たち」に紹介されている。

「ドライブ・マイ・カー」舞台俳優・家福は女性ドライバーみさきを雇う。死んだ妻はなぜあの男と関係しなくてはならなかったのか。彼は少しずつみさきに語りはじめるのだった。

「イエスタデイ」完璧な関西弁を使いこなす田園調布出身の同級生・木樽からもちかけられた、奇妙な「文化交流」とは。そして16年が過ぎた。

「独立器官」友人の独身主義者・渡会医師が命の犠牲とともに初めて得たものとは何だったのか。

「シェエラザード」陸の孤島である「ハウス」に閉じ込められた羽原は、「連絡係」の女が情事のあとに語る、世にも魅惑的な話に翻弄される。

「木野」妻に裏切られた木野は仕事を辞め、バーを始めた。そしてある時を境に、怪しい気配が店を包むのだった。

「女のいない男たち」ある夜半過ぎ、かつての恋人の夫から、悲報を告げる電話がかかってきた。

WALL STREET JOURNALは「村上春樹氏の新刊『女のいない男たち』にハルキスト殺到」と報じた。本書はすでに40万部が発行された。6つの短編に描き分けられた「コンセプト・アルバム」。この本で、ハルキワールドにどっぷり浸っていただきたい。

[ P R ]
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コメント (2)
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