昨日(12/29)の毎日新聞朝刊に、こんな話が出ていた。河瀬直美監督が指導して、小学生が奈良を取材して3分間の映像を作るという。撮影日は1/12(火)。iPadを使い、2人1組で撮影。その後、iPadのアプリで編集し、1月末までに映像を完成させるのだ。記事全文を紹介すると、
※写真は、毎日新聞のサイトから拝借
奈良の「お宝」発見し映像に
「なら国際映画祭」のワークショップ 同志社国際学院初等部が挑戦
同志社国際学院初等部(京都府木津川市)の5年生が、奈良の街を歩いて映像制作するユニークなワークショップに取り組んでいます。指導するのは、映画監督の河瀬直美さんが理事長を務めるNPO法人「なら国際映画祭実行委員会」(奈良市)。河瀬さんは「たくさんの知らなかったことに気付き、その時の気持ちを映像や写真に込めてね」と話しています。【三野雅弘】
街歩き、身の回り探究
2010年、河瀬さんの呼びかけで始まった「なら国際映画祭」。2年に1度、国内外の若手監督を迎え、奈良を舞台にした映画製作などに取り組んでいます。子どもたちとの映像制作ワークショップもその一環。「国際的に活躍できる人材の育成を」と、11年から、奈良県内の小学校などと取り組んできました。
ワークショップ6回目にあたる今回、同志社国際学院初等部とは初のタイアップです。川畑加珠子副校長が河瀬さんと旧知だったことからこの話が実現しました。初等部では国際的な教育プログラム「国際バカロレア」を導入しており、自分の知識や体験を生かしながら身の回りのことを深く理解するための「探究」の授業として取り組んでいます。
参加するのは初等部5年生の60人です。舞台は近鉄奈良駅周辺の商店街やお寺など「奈良ならでは」の風景で、自分が興味を持ったことや「好きだな」と思ったことを、カメラを動かさず、大きく撮影し、3分程度の映像に編集するのがテーマ。「奈良駅周辺は映画祭の開催会場の近くで、世界遺産の宝庫です。墨とか奈良漬けなど奈良の文化もいっぱい。そういうものを見つける機会になれば」と河瀬さん。

ワークショップは12月2日にスタート。初日の授業で河瀬さんが講師となって撮影の狙いや方法を“伝授”。その後、子どもたちは7日に近鉄奈良駅周辺へロケハン(下見)に臨みました。奈良伝統文化を調べる「伝統組」と、お寺などで自然を調べる「ネーチャー組」の2班に分かれました。
「伝統組」は、駅南の商店街や昔ながらの街並みがある「奈良町」で、奈良漬け、筆、硯(すずり)などを売る店や能面教室、私設の「奈良町資料館」を回り、多くの人から話を聞きました。川口愛貴君(10)は「お面の話やお守り『身代わり申(さる)』の作り方を初めて知った」とうれしそう。奥田百々香さん(10)は「昔から受け継がれている伝統を撮ってみたい」と話していました。「ネーチャー組」は、興福寺や東大寺周辺でシカなどを見て回りました。
後日、学校で撮りたいことを話し合い、撮影を想定した絵コンテなどを作成しました。iPadを使った撮影本番は来年1月12日。2人1組になって撮影し、河瀬さんも同行します。その後、iPadのアプリで編集して1月末までに映像を完成させます。子どもたちが作る30本の映像にどんなメッセージが込められるのでしょうか。今から楽しみです。9月に開かれる「なら国際映画祭」でも上映する予定です。
◆「深い」を絵で表すと? 河瀬さん「自分の気持ち、画面に込めて」
河瀬直美さんが初日(12月2日)に同志社国際学院初等部5年生に行った授業を“再現”しました。
「映画だけじゃなく、全てのものにはメッセージがあります。よくメッセージが深いとか言うよね。じゃあ深いということを絵にすると?」河瀬さんはまず、そう問題提起。子どもたちは口々に「詳しいこと」「メッセージがいっぱい詰まっている感じ」「一つの円からだんだん広がっていく感じ」と発言しました。河瀬さんは「私、絵を描くのがへたくそなんだけど」と言いながら、前のホワイトボードに絵を描いていきます。地面を深く掘ったような絵、多くのボールが詰まっている箱の絵、円が何重にも重なった同心円の絵の三つが描かれました。
「でもね」と河瀬さん。「これを他人が見たら何だと思うかな」と同心円を示しました。「弓矢の的!」「木の年輪!」「タマネギを切ったもの!」「バウムクーヘン!」「水滴の波紋!」と子どもたち。残念ながら「深い」という答えはありませんでした。イメージやメッセージを映像で表すということがいかに難しいかを再認識しました。
では、どうすればいいのでしょうか。「例えばギョーザがおいしそうとか食べたいとかいう気持ちを映像で伝えるには?」と河瀬さん。子どもたちは「お箸を横に置く」「ギョーザをだんだん近づける」「割って中身を見せる」などと答え、より効果的で具体的な撮り方を考えました。食べる人の目線で撮るということを学んだようでした。
最後に河瀬さんは、自分が若い時の体験を話しました。「18歳の時、私は初めて8ミリフィルムのカメラで撮影し編集する体験をして、世界はものすごく楽しいということに気づいたんです。花に止まったトンボとか。知らないままでいるということは世界に存在していないということと同じ。私はカメラを持つことで『次はどんなことがあるんだろう』というワクワク感を持つようになりました」
そして全員にこう訴えました。「時間は絶対止められないけれど、私にとって映画はそれを再現できるタイムマシンなの。みんなも、自分の気持ちという目に見えないものを映像の中に閉じ込めてください」
講師は河瀬直美監督
1969年奈良市生まれ。89年大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ専門学校)卒。97年に劇場映画デビュー作「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞。2007年、「殯(もがり)の森」で同祭のグランプリを受賞した。NPO法人「なら国際映画祭実行委員会」理事長。小5男児の母親でもある。
小学生がどのような視点で奈良を撮るのか、これは楽しみだ。小学生の遠足とか、小中学生の修学旅行を企画する際の参考になるかも知れない。9月の「なら国際映画祭」でも上映するそうなので、これはいちど拝見したいものである。皆さん、ぜひご注目を!
※写真は、毎日新聞のサイトから拝借
奈良の「お宝」発見し映像に
「なら国際映画祭」のワークショップ 同志社国際学院初等部が挑戦
同志社国際学院初等部(京都府木津川市)の5年生が、奈良の街を歩いて映像制作するユニークなワークショップに取り組んでいます。指導するのは、映画監督の河瀬直美さんが理事長を務めるNPO法人「なら国際映画祭実行委員会」(奈良市)。河瀬さんは「たくさんの知らなかったことに気付き、その時の気持ちを映像や写真に込めてね」と話しています。【三野雅弘】
街歩き、身の回り探究
2010年、河瀬さんの呼びかけで始まった「なら国際映画祭」。2年に1度、国内外の若手監督を迎え、奈良を舞台にした映画製作などに取り組んでいます。子どもたちとの映像制作ワークショップもその一環。「国際的に活躍できる人材の育成を」と、11年から、奈良県内の小学校などと取り組んできました。
ワークショップ6回目にあたる今回、同志社国際学院初等部とは初のタイアップです。川畑加珠子副校長が河瀬さんと旧知だったことからこの話が実現しました。初等部では国際的な教育プログラム「国際バカロレア」を導入しており、自分の知識や体験を生かしながら身の回りのことを深く理解するための「探究」の授業として取り組んでいます。
参加するのは初等部5年生の60人です。舞台は近鉄奈良駅周辺の商店街やお寺など「奈良ならでは」の風景で、自分が興味を持ったことや「好きだな」と思ったことを、カメラを動かさず、大きく撮影し、3分程度の映像に編集するのがテーマ。「奈良駅周辺は映画祭の開催会場の近くで、世界遺産の宝庫です。墨とか奈良漬けなど奈良の文化もいっぱい。そういうものを見つける機会になれば」と河瀬さん。

ワークショップは12月2日にスタート。初日の授業で河瀬さんが講師となって撮影の狙いや方法を“伝授”。その後、子どもたちは7日に近鉄奈良駅周辺へロケハン(下見)に臨みました。奈良伝統文化を調べる「伝統組」と、お寺などで自然を調べる「ネーチャー組」の2班に分かれました。
「伝統組」は、駅南の商店街や昔ながらの街並みがある「奈良町」で、奈良漬け、筆、硯(すずり)などを売る店や能面教室、私設の「奈良町資料館」を回り、多くの人から話を聞きました。川口愛貴君(10)は「お面の話やお守り『身代わり申(さる)』の作り方を初めて知った」とうれしそう。奥田百々香さん(10)は「昔から受け継がれている伝統を撮ってみたい」と話していました。「ネーチャー組」は、興福寺や東大寺周辺でシカなどを見て回りました。
後日、学校で撮りたいことを話し合い、撮影を想定した絵コンテなどを作成しました。iPadを使った撮影本番は来年1月12日。2人1組になって撮影し、河瀬さんも同行します。その後、iPadのアプリで編集して1月末までに映像を完成させます。子どもたちが作る30本の映像にどんなメッセージが込められるのでしょうか。今から楽しみです。9月に開かれる「なら国際映画祭」でも上映する予定です。
◆「深い」を絵で表すと? 河瀬さん「自分の気持ち、画面に込めて」
河瀬直美さんが初日(12月2日)に同志社国際学院初等部5年生に行った授業を“再現”しました。
「映画だけじゃなく、全てのものにはメッセージがあります。よくメッセージが深いとか言うよね。じゃあ深いということを絵にすると?」河瀬さんはまず、そう問題提起。子どもたちは口々に「詳しいこと」「メッセージがいっぱい詰まっている感じ」「一つの円からだんだん広がっていく感じ」と発言しました。河瀬さんは「私、絵を描くのがへたくそなんだけど」と言いながら、前のホワイトボードに絵を描いていきます。地面を深く掘ったような絵、多くのボールが詰まっている箱の絵、円が何重にも重なった同心円の絵の三つが描かれました。
「でもね」と河瀬さん。「これを他人が見たら何だと思うかな」と同心円を示しました。「弓矢の的!」「木の年輪!」「タマネギを切ったもの!」「バウムクーヘン!」「水滴の波紋!」と子どもたち。残念ながら「深い」という答えはありませんでした。イメージやメッセージを映像で表すということがいかに難しいかを再認識しました。
では、どうすればいいのでしょうか。「例えばギョーザがおいしそうとか食べたいとかいう気持ちを映像で伝えるには?」と河瀬さん。子どもたちは「お箸を横に置く」「ギョーザをだんだん近づける」「割って中身を見せる」などと答え、より効果的で具体的な撮り方を考えました。食べる人の目線で撮るということを学んだようでした。
最後に河瀬さんは、自分が若い時の体験を話しました。「18歳の時、私は初めて8ミリフィルムのカメラで撮影し編集する体験をして、世界はものすごく楽しいということに気づいたんです。花に止まったトンボとか。知らないままでいるということは世界に存在していないということと同じ。私はカメラを持つことで『次はどんなことがあるんだろう』というワクワク感を持つようになりました」
そして全員にこう訴えました。「時間は絶対止められないけれど、私にとって映画はそれを再現できるタイムマシンなの。みんなも、自分の気持ちという目に見えないものを映像の中に閉じ込めてください」
講師は河瀬直美監督
1969年奈良市生まれ。89年大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ専門学校)卒。97年に劇場映画デビュー作「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞。2007年、「殯(もがり)の森」で同祭のグランプリを受賞した。NPO法人「なら国際映画祭実行委員会」理事長。小5男児の母親でもある。
小学生がどのような視点で奈良を撮るのか、これは楽しみだ。小学生の遠足とか、小中学生の修学旅行を企画する際の参考になるかも知れない。9月の「なら国際映画祭」でも上映するそうなので、これはいちど拝見したいものである。皆さん、ぜひご注目を!