tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

「DESIGN SETTA SANGO」(デザイン雪駄 三郷)と「カフェ・ファンチャーナ」の星田和彦 さん

2021年11月20日 | 奈良にこだわる
星田和彦さんをご存じだろうか。JR三郷駅前の人気店「カフェファンチャーナ」(生駒郡三郷町立野南1-24-5 ハビタブル三郷1F)を運営するとともに、株式会社DESIGN SETTA SANGOの代表を務める。ファンチャーナは私もお邪魔し、当ブログでも紹介させていただいた。
※トップ画像は、DESIGN SETTA SANGOの公式HPから拝借した

同社は、南都銀行が主催するビジネスプラン事業化支援プロジェクト「第7回<ナント>サクセスロード」で最優秀賞(賞金100万円)を獲得された。プラン名は〈三郷町の職人技がこもる雪駄「DESIGN SETTA SANGO」の海外展開〉だ。オリジナルの雪駄を作り、それで海外展開を図ろうという頼もしい企画である。そんな星田さんが南都銀行の行内誌「なんと No296」(2021夏・秋合併号) の巻頭言に登場した。以下に全文を紹介する。


写真はファンチャーナ前で、星田さんご夫婦と(写真はすべて2020.11.11に撮影)

株式会社DESIGN SETTA SANGO
代表取締役社長 星田和彦(ほしだ・かずひこ) さん
セッタを世界のスタンダードに


2009年、夫婦二人で三郷町に「カフェファンチャーナ」をオープンしました。来店してもらうため、陶芸家のイベント、音楽ライ
ブ、ワークショップなど、たくさんの仕掛け作りを行い、3年目になると予約で満席になる店になりました。2013年、お世話になった三郷町に恩返しするために地場産業の紹介をするイベントを企画し、そこで初めて三郷町の草履づくりについて知りました。

たまたまカフェの常連客で仲の良かった男性が、実は草履職人ということを知り、イベントの企画を持ちかけました。「カフェに来る若い女性の方がオシャレにはける三郷の雪駄をデザインする」イベント名はDESIGN SETTA SANGO(DSS) です。そこで、響きもかっこよく海外の方も言いやすいだろうという理由から草履でなく「セッタ」と呼ぶことにしました。

イベント開始1週間で用意したセッタは完売しました。一度きりと考えていたイベントでしたが、好評だったため翌年も開催し、2度目のイベントでも1週間ほどで完売。やがてこのセッタを求め長蛇の列ができ、カフェがセッタを販売するなどの新鮮さが話題となりメディアからも注目されることとなりました。



2 0 1 5 年、経済産業省主導Wonder500の受賞をきっかけに、ブランド化することを決意し、株式会社DESIGN SETTA SANGO を立ち上げました。法人化したのは、これからの展開に向けブランドの信用度を向上させることと、材料費を職人負担ではなく、法人で購入し仕上がった商品もすべて買い取る、その資金力を作ることが目的でした。

長く愛されるブランドになるため、商品力とともに職人たちが長く作ることができる環境づくりも大切であると思ったからです。昨年、目標であったオンラインストアでの47都道府県すべてのお客さまからの受注の目標を達成。次のステップであった奈良をフューチャー
したセッタの作成に着手しました。

奈良の誇るべき天平文様と奈良の伝統産業である履物職人が作ったセッタを海外の方に実際に使ってもらいたい。それが奈良ブランドを扱う私たちの使命であると感じたからです。セッタの主役は鼻緒です。大和高田市にある刺繍会社の精度の高い刺繍技術で鼻緒に天平文様の刺繍をしてもらえないかと持ち掛けたところ快く協力していただき、ここから商品開発への試行錯誤が始まりました。



もちろん最初から順調ではありませんでした。刺繍では何度もミシンの針が折れ、糸が切れました。鼻緒の仕立ての際には、ひねり等の生地の伸び具合で、うまく思った位置に刺繍ができず、刺繍の位置や生地の厚み、糊の具合を何度も調整しながら試作を繰り返し、2年かけて完成形となりました。

海外展開も視野に入れたこのセッタは、海外のさまざまな生活環境にも順応できる素材を使用し、強度と耐久性を向上させました。天(足を乗せる台部分)の素材には京都の織物会社に力を貸していただきました。歩きやすさと美しいフォルムが特徴のオリジナルソールは、御所市の職人による全国的にも希少な加工底とよばれる技術を採用しています。

こうしてたくさんの企業・職人が技術と思いを込めた奈良の誇るべきセッタが誕生しました。 最後に、私たちが掲げる海外展開のコンセプトは「セッタを世界のスタンダードに」です。現在セッタは英語でJapanese Sandal と訳されますが、この履物を見たときセッタ
と訳してもらえる、そして海外でもセッタを日常の履物として使っていただけるような世界を作りたいと思います。

星田 和彦 さん プロフィール
1976年生まれ。奈良県北葛城郡河合町出身。大学卒業後大手紙製品のメーカーに営業職で就職。8年間、クライアントのニーズに合わせてパッケージや印刷物をデザインし、さまざまな商品を作るなかで、ものづくりに対する興味が大きくなり、「自分自身でものづくりをし、それを直接目の前のお客さまにお渡しして喜んでいる顔を見たい」という思いから飲食の道に方向転換。

カフェ、パン屋、リーガロイヤルホテルで修業し、地元に対する思いから奈良でお店を開業することを決意。三郷町の現在の場所に惚れ込み、2009年、夫婦二人で「カフェ ファンチャーナ」をオープン。2013年、カフェの常連客であった草履職人と企画したイベントをきっかけにオリジナルセッタを開発。

2015年、株式会社DESIGN SETTA SANGO として法人化し、オリジナルセッタブランドとして始動。「セッタを世界のスタンダードに」をコンセプトに海外販売に向けて動き出す。2021年3月、第7回「〈ナント〉サクセスロード」最優秀賞を受賞。




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