別冊新評(昭和50年4月)によると当時、北杜夫の人気上位3作品は写真に写っている『どくとるマンボウ青春期』『どくとるマンボウ航海記』そして『船乗りクプクプの冒険』だったという。おそらく現在でも変わらないだろう。
北杜夫のファンは、マンボウ派と「幽霊」派に分かれるが、このアンケートの結果から、マンボウ派の方が多いことがわかる。
私は「幽霊」派だ。あえて特に好きな作品を挙げると『幽霊』とその続編ともいえる『木精(こだま)』。 『木精』、これはいわゆる不倫の恋物語ではあるが、そういう表現から想起する一般的な小説とは趣を異にする純文学作品。
「人を恋することによって知る孤独」とでも表現したらよいのか、とにかく好きな作品で、いままでに何回か読んでいる。
『さびしい王様』この本には思い出がある。高校生の時、図書館にこの本を借りに行ったのだが、あいにく貸し出し中だった。「その本ならもっているから貸してやる、あとで職員室に来なさい」と、たまたま居合わせた英語担当のK先生。 借りはしたものの、汚損しては申し訳ないと思って結局読まずに返したように記憶している。いま手元にある本は高校を卒業してから買ったもの。
しばらく前、週刊誌で北杜夫と娘の斎藤由香との対談(マンボウ親子対談という企画)を読んだ。北杜夫の近影も載っていたが随分歳をとっていた。確か今年80歳だから無理もないが。
このところ氏の作品から遠ざかっていた。
この秋、『幽霊』と『木精』を再読してみたいと思う。